第16話 発覚
「それよりも先に、黎様が先程おっしゃっていた持論についてですが、まさにおっしゃっていた通りです。」
八代が服を着ながら話を始める。
「そして今まさにそれに気づいた黎様にこのことを打ち明けようかと思い、黎様をこちらにお招きしました。ワタクシはずっと南グループの『裏の頭』と呼ばれる一方で、特定の上級、同級舎弟から陰で暴行を受けております。」
そして八代が黎の方に振り返る。
「ワタクシは特に気にはとめておりませんが、他の非戦闘員が戦闘員から精神的、物理的ないじめなど…」
「わかりました…。」
黎が八代の言葉を遮り、八代のもとへ歩みよる。
その瞬間、
「…え?黎様…?」
黎が八代を抱きしめた。
一方その頃お嬢の部屋では…
「…ううん…黎?」
差し込む日差しに眩しそうにお嬢が眠たそうな声で黎を呼びかける。
そしてお嬢が目を覚まして広間に出た。
テーブルの上に置かれた八代のノートパソコン以外は何もなく、何故か壊れたはずの壁や玄関が前よりも綺麗な状態で直っていることにお嬢は不思議がっていた。
「黎〜!どこにいるの〜!?どうしてお屋敷の壁と玄関が綺麗になってるのかしら〜!?」
お嬢が叫ぶ。
お嬢の叫び声が八代の部屋まで届く。
「八代、すみません。俺がずっといながら今まで気づかずに…。」
黎は八代に対しても無力感を感じていた。
八代はそれよりもお嬢が黎を呼びかける声が気になった。
「黎様…大変です…この事がお嬢様に知られたら…」
八代が小声で黎に囁いた。
「お嬢が、どうかしたのですか?」
「黎〜!!ちょっとどこにいるの〜!!返事しなさい〜!!まさかまた私を置いて勝手にどこか行ったの〜!?」
部屋の外からお嬢の叫び声が聞こえたため黎が八代をゆっくり放して部屋から出ようとすると、
「黎様…!ワタクシの部屋から出てきてしまったところをお嬢様に見つかってしまったら大変ですよ…!」
八代が黎にだけ聞こえる声のトーンで囁く。
「 どうしてですか?」
「まだわからないのですか…!お嬢様は黎様の事が…」
「黎!!黎ってば…!!私を1人にしないでって言ってるのに…!!」
なんだかお嬢から今にも泣き出しそうな声が聞こえてくる。
「 お嬢様!?どうされましたか!?」
菱沼の声が聞こえてきた。
「あ、晶ちゃん…黎がまた何処かにいなくなっちゃったの…。」
「そうなのですね!?私も一緒に探しますから!!あれ?でもいつもお嬢様は黎様と一緒に寝られてるのではないのですか?」
「それが起きたらいなくなってたのよ…。」
お嬢はいつになく悲しそうだった。
普段なら黎が先に起きて活動してることなのは日常的にあるのに今日はいつもとは様子が違う。
「わかりました!!とりあえず屋敷の中を…ってあれ!?」
菱沼が屋敷の広間を見渡すと、
「壁と玄関がもとに戻ってますね!?というか前よりも綺麗になってます!?」
するとお嬢が思い出したかのように、
「そうなのよ!!黎ならきっと知ってるはずだわ!!それか…」
お嬢が八代の書斎の扉に目を向けて、
「花梨ちゃんならきっとなんでもわかるわよね!!」
するとお嬢が八代の部屋の方に向かって行く。
「花梨ちゃん〜、今大丈夫〜?」
扉越しにお嬢の声が聞こえてくる。
「あ、え〜っと〜、ワタクシただいまちょっと取込み中でございまして…。」
八代がたどたどしく答える。
「八代、お嬢に嘘をつくのは良くないですよ。」
「え?黎?黎がそこにいるの??ちょっと!?花梨ちゃん!?どういうこと!?」
「いえ!あの!ただいまお嬢様御用達の黎様の音声をシンセサイザーで再現した音声をAIプログラムであらゆるお嬢様の発言に対して受け答えするシステムを開発中でございまして…」
そうこう八代が弁解しているうちに黎が部屋の鍵を開けてお嬢の前に姿を現す。
「そんな…どうして…??花梨ちゃん…自分の書斎に人なんて呼ばないのにどうして黎がここにいるのよ…。」
お嬢はとても動揺していた。
「お嬢、大変ですよ、今南グループでは…」
「パチンッ!!」
お嬢が左手で黎の顔に平手打ちをした。
そしてお嬢は自分の部屋に泣きながら駆け込み、部屋の鍵を閉めて布団に閉じこもってしまった。
「黎のバカ…黎なんて…嫌い…。」
次回 第17話 対立
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