Day10「散った」

「げっそりした顔の今里さん見かけたんですけど、村雨先輩何かしました? 寧ろ何もしてなさすぎっすか?」


 鳥生君の問いかけに、こっちがげっそりした。荒唐無稽な質問のせいで、思いついていたアイディアが霧散したのだが。


 戻ってくるだろうか、これ。


「あのですね、先日雨に濡れた彼女を心配したばかりですよ。少なくとも『してなさすぎ』はないです」

「何と。イベント発生済みだったとは。それは失礼しました」


 謝罪してほしいのは、そこではない。


 しかし、あの今里さんがげっそり状態とは。何か問題があったのか。

 黙り込んでいると、鳥生君が珍しく悪そうな笑みを浮かべた。


「心配なら見に行かれては?」

「いやいい」


 どうせ、あちらから来るさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る