第4話

 あえて言おう。

 

 土地がねえ!

 

 第7支部は一応一部の支部よりも若干大きな土地を有しているが、それでも足りないものは足りないのだ。

 だからすべての仕事がかつかつになっていて、効率が悪くなってしまっている。

 生活区画を削る訳にもいかないし、彼等の食事を用意するのにも一苦労。

 産業事業を興す事も出来ないし、踏んだり蹴ったりだ。

 第7支部よりも少ない土地で回っている筈の他の支部がどうなっているのか、試しに違うマリアに尋ねてみたところ、

 

「人類の数をコントロールするのが一番手っ取り早い」

 

 みたいな答えが返ってきた。

 それ、将来的には人類はこの世界に不要です的な考えに至る奴じゃん……

 ディストピアのAIに有りがちな思想じゃん……

 当然人数減らし(物理)なんて出来る筈もないので、違う手段を講じる必要がある。

 

 土地がないから何も出来ない。

 

 問題はその一点に尽きる。

 しばらくそうしてこの限られたエリア内でどのような運営をしていくか考えていた私だったが、しかしすぐに無理である事を察する。

 こりゃあ、ダメだ。

 いずれこの支部は滅ぶわ。

 相変わらずほとんどの資産はカントーエリア総括のある第0地区が独占しているし、それを譲ってもらう事はほぼ不可能。

 他の支部に関しても譲り合いの精神なんてない連中しかいない。

 例え滅んだところで特に感傷に浸る事もないだろう。

 

 だとしたら、自分達で何とかするしかないのは間違いないのだが、やはり土地の問題がどこまでもつき纏ってくる。

 ……一応、解決策はあるにはある。

 それは、自分で開拓する事。

 第7支部はちょうど『何もない』エリアと隣接しているため、そこを自分達の使用する土地として拓く事が出来ればかなり沢山の事が出来るようになる。

 一応、そうやって新たな土地を拓いた場合はその支部のモノとして良いようになっている。

 なにその墾田永年私財法?

 ただその『何もない』エリアは当然のように環境が汚染されている。

 その為まずはそこを清める為に莫大な資金が必要になって来るし、そこから施設を作る為のお金も必要になって来る。

 将来の投資の為に、借金するか?

 イヤでもここで博打に出るのもなぁ……

 

「うーん……」

 

 試しに、ちょっと偵察隊を組んでみるか?

 無人ロボットも高いし、ここは人間にちょっくら頑張って貰うのが一番出費が少なくて済む。

 それになんだかんだ言って、無人ロボットは言葉を発しないし、違和感を報告してくれる事もない。

 だから人間の方がいろいろと都合が良くはあるのだ。

 ただ、やはり危険だ。

 どのような環境が広がっているのか分かったもんじゃないし、人命が減るのは絶対に避けたい私としてはそこに突っ込ませるような事はしたくない。

 だとしたら――うーん、やっぱり私が出張るのが一番か?

 私は例によって睡眠学習によって多数の知識が頭の中に入っている。

 その中に戦闘技法も入っているため、ぶっちゃけこの体でも結構戦えるのだ。

 とはいえそれは『人間としては』である。

 もし仮に外の世界に化け物みたいな奴が跋扈していたとしたら、それはもう私の手には負えない。

 ホールドアップ、お手上げである。

 

 だが、それでもこれしか道はなさそうでもある。

 土地がないという現実を何とかしない限り人々は決して「幸せ」にはならない。

 ならばここは、いっちょ覚悟を決めて頑張る時なのでは?

 

 まずは偵察隊の結成。 

 健康状態などを参考にした上で、相応しい人物をリストアップする。

 そこから私が「これ」と思った人物達に対して勧告を行う。

 勧告というか、招集だ。

 それから説明を行い、偵察隊として活動をするために訓練を行う。

 当然、拒否するのならばそれで良い。

 危ないから、イヤだと思う人はいるだろうからね。

 だから相応の報酬は出すつもりだし、それで合意を受けた者だけを連れて、外の世界へと赴く。

 

 すべてはこの支部がより「幸せ」になる為に。

 

 一丸になって頑張って貰おう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る