第15話 覚悟
カリスと仲介屋が握手を交わすときその奥でレヴは黙ってそれを聞いていた。
カリスが休憩のためにほかの部屋へと出ていくのを見図り、レヴは装備をかき集めて仲介屋の前に差し出した。
仲介屋はそれを黙って受け取り手入れを始める。
レヴはその銃を眺めながら仲介屋へ話しかけた。
「すまんな。どうも精神年齢が肉体に引っ張られる。」
「そうか。」
「果たしてカリスはその選択が正解になるのかね。過去にその選択をして後悔したものもたくさんいるぞ。中には俺を呪って死んでった奴もいる。」
たった今カリスが去って行った方向を見ながらレヴはため息をついた。
「俺にも分らんさ。だができる限り後悔はさせないさ、お前もそうだったのだろ?」
「どうだったのかな俺は……」
世界を守るという立場にあった俺はあまりにも背負うものが大きすぎたような気がする。中途半端に勧誘したやつもいたし、その才覚を見込んで半ば無理やり連れてきたような人間もいただろう。
世界を守るためには必要不可欠な選択だったとはいえ俺は人間というものを見ていなかった。今この世界で初心に戻っている感じだ。
「……不躾な問いだったな。俺とお前ではあまりにも時代が違った。」
「そうだな。だが、いつまでも過去を背負っていては何も起きん。」
「何を起こすかも決まってないような奴が言うなよ。」
「ハハッ。」
俺の乾いた笑いが終わると仲介屋は装備をこちらに返した。
「妥当な判断だ。肉体的にも散弾銃と高精度の拳銃で問題ないだろう。」
「まぁな。」
「だが散弾銃を持つのに近接戦闘用のナイフを持つ理由はなんだ?サバイバル用ならばわかなくもないだろうが。」
「弾切れ以外に使い道はないさ。お守りだよ」
「お前の技量ならばもう少し長めの剣を持った方が効率が良くないか?」
「そうでもない。極めて限定的ではあるが銃よりナイフの方が有利になる場面もある。」
「まぁ、お前が納得するならいいが」
渡された装備を眺めながらレヴが聞いた。
「そういえばお前はどういったポジションで戦うんだ?俺は今のところ前衛しかやっていないから適正は分かっていないが。」
「どちらかといえば俺もお前に近い。だが中距離や遠距離もある程度はこなせるぞ。」
「そもそもここじゃ銃のスペックが違うしな。」
「案外中住地区から落ちてきた低住住民もいるぞ。」
「そうなのか?」
「代表的なのは情報屋だな、ほかには大きな店の職人なんかも元中住住民が多い。」
「なんで下ってきたんだ?」
「たいていは勢力争いに負けてだな。めったにない理由だと隠居先に低住地区を選ぶ金持ちの爺さん婆さんもいるぞ。」
「あったことは?」
「一度だけ。一瞬で正体を看破されてからは一回も行っていない。」
「なるほどな。」
ちょうどカリスが戻ってきたのでその話は打ち切りとなり、夜が来るまで三人はダラダラと時間を潰していた。
日が沈むと仲介屋が車庫から車を出し、それに乗って3人はレヴの家へと向かっていった。
二日開けただけなのだが辺りの地形が若干変わっており、ここでも大規模な争いが行われていたことがうかがえた。
「家は?」
「辛うじて問題なかったようだ。」
カリスを見張りにおいて仲介屋と二人家の中へと入っていく。
「狭いな。」
「子供用だ。」
中に入るとこれまでレヴが積み重ねてきた戦利品が二人を歓迎する。
「ゴミ山にこれだけのものがあったのか……。」
「6年間の中で保存しておくべきだと昔の俺が判断したものだけが残っている。だが多くは俺ではなく爺が残してくれたものだよ。」
「爺?」
「俺の育て親だった人であり、伝説的なゴミ漁りだ。」
「ゴミ漁りに伝説もクソもあるか?」
「あるゴミ漁りの大規模組織を一人で潰したことがある。」
「なるほど伝説だ。」
「変わり身が速いな!?」
拠点の中でも特に重要な物だけを出して中にあるキッチンなどの生活用品は持ち出さなかった。
疑問に思った仲介屋が聞くがレヴには何か考えがあるらしい。
すべての荷物を運び終えた後にレヴは誰かに電話をかけた。
(先輩どうかしましたか?)
(ちょいとしばらくゴミ漁りから離れる。俺の拠点は好きに使っていいぞ。)
(良いんすか?)
(使わないからな、生活に必要な物は残してある。)
(ありがとうございます!)
(じゃ、また)
(また)
電話を切るとレヴはそのままで車へと乗りこむ。
「ゴミ漁りの仲間だ。」
「年は?」
「11。だが奴には師匠と呼べる存在がいるから問題ない。」
「なるほどな。」
奴の師匠はそれなりに出来る人らしい。この体になってから直接あったわけではないから断言はできないが。
車を走らせて仲介屋の店へと帰ると、時刻はすでに12時を回っていた。
「さっさと寝ろよ。」
「分かっている。」
心は大人でも体は成長途中だ。
今日はゆっくりと休ませていただこう。
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