ポットク鉱山①(下) ポットク鉱山入山/ 胡麻団子
俺達はケルトンに連れられ、森を進んでいった。
すると、そこには小さい子供が登れるくらいの小山の斜面に、大きな木の板が貼り付けてあった。
「おお〜い!開けとくれ〜!!」
とケルトンが言うと
ガラガラガラ…
何と貼り付けてあると思われた木の板が城の城壁の門のようにガラガラと開き、中から下へと続く階段が現れたのだ!!
…これは流石の俺達も度肝を抜かれた。
「こ、ここが鉱山の入り口なんですか?」
ニファはケルトンに尋ねる。
「そうだ。昔は《大きな山》》だったんだがな今では山の金銀を掘り尽くして、地下へと掘り進めるようになったわけだ…
外からも人がたくさん訪れる場所だったんだが、今ではお主らのように場所さえ忘れてる奴も少なくない。時の流れとはいえ、さみしいのう…」
そう語るケルトンの顔は、どこか物悲しそうな雰囲気を受けた。
俺たちは中へと続く階段を降りていき、階段を降り切ったところで衝撃を受ける。
「でっけーーー!!!」
中はドーム状の空間で、俺たちが立っている中央部は、木の橋を中心の柱で支えていた。
ふと辺りを見渡すと、ドームの側面には中心の大橋から続く通路と、通路が膨らんだところに家が立っており、それが上から下までびっしりと続いている。
最下層を見てみると、ドワーフらしき人物が側面の通路に続いているレールのトロッコに、せっせと道具を運んでいるのが見えた。
まさかポットク鉱山がここまで大きく、発展した場所だったとは…
…ドワーフの技術…恐るべしだな。
「圧巻ですね……」
俺はあまりの大きさに感嘆の言葉を漏らす。
「まぁ…そう固くならんでくれ。さぁ…街を案内しよう」
————————
その後、ケルトンは街のいろいろな場所を紹介してくれた。炭鉱などの他に、住宅地、討伐のギルド、更にはカジノなど。他の町にある物が軒並み揃っていて、どれも魅力的だった。
街の人たちは最初は…そこそこ警戒していたようだが、トールマンを倒した事をケルトンから聞くと人が変わったように歓迎してくれた。
これには俺も、内心ホッとした。
「ここが、ポットク鉱山最大の市場であるポットク市場だ。
ポットク市場にはここでしか食べれん食べ物や日用品が売ってあるぞ!!地上と同じ通貨 で買えるから、好きに買ってくれ!!」
俺たちは珍しいものに目を輝かせながら歩いていると…
「ねぇ…!あれって何かしら?」
興奮するニファが俺にそう言い、その指さす方向を見ると…
『ゴマ団子』と書かれた屋台が一つあった。
「ほほぉ…アレに目をつけるとは、いい目をしとる。
あそこのの胡麻団子は格別でのう!!ワシもギデサルムの各地で胡麻団子を食べたことがあるのだが、やっぱりここのが一番で。もし良かったらわしが奢ってやろうか〜?」
ケルトンはまるで、自分の孫を甘やかすかのように言う。
「いいですよぉ…そんな、奢ってもらうなんて…!」
ニファが不安そうにケルトンに聞く。
「ええからええから…恩人たちに対してこれくらいは普通だろうに」
ニファはそれからも少し戸惑っていた。
俺はそんなニファに対し、こう言った。
「そーゆー時は奢られるのが筋ってもんなのよ。お嬢さん」
「う、うん」
————————
「ほれ、出来たてほやほやの胡麻団子じゃよ…!」
ケルトンは近くの椅子に座っていた俺たちに一つづつ袋を渡した。
「さて、いただきます!!」
ソロンは胡麻団子を口に含み、俺もそれに続き一口頬張った。
「うんまぁ、これ!!」
外はカリッと、中にはしつこくないくらい甘いのあんこが熱々に入っている。
思わず手を止める暇すらも失ほどだ。
この食べ物が一体、勇者のお嬢さんの口にどのくらい合うのかが…
俺はニファの方を振り向いた。
「うんまぁい…」
ニファは泣いていた。涙で顔がグショグショになりながら…
…一生懸命胡麻団子を頬張っていた。
「マジかよ…」
胡麻団子、うまいけど泣くほどとはな…と俺は思った。
「そ、そんなに美味かったんなら
もっとやるぞ…と、その前にコレで涙を拭きなさい」
ケルトンはゆっくりとハンカチを差し出した。
「ウン…」
ニファはまたしても、勇者としての威厳を忘れそうになった。
それにしても、貴族が泣く程美味しい胡麻団子、恐るべしだな
その時だった。一人の女性が俺にぶつかってきたのだ。
そのまま女性は尻餅をつく。
「痛…!!もー…どこ見てんのよ!!」
それはこっちのセリフだと言いたいと思っていたその時だった。
「ノーサ。お前ノーサか?」
ケルトンが震えた声を上げる。
「爺ちゃん…!?」
ノーサと呼ばれた女性は作業服を着ており、まるでポットク鉱山の鍛治師を思わせる身なりだった。
「今までどこに行ってたんだ!!」
ケルトンは怒鳴り声をあげ、人混みをかき分けながら
その人の元に行こうとする。
「うるさい…!何をしようが私の勝手でしょ!?」
そう言ってノーサと呼ばれる女性は、人混みの中に消えていってしまった。
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