第28話 悪魔神、時を止める (※ちょい胸糞あり。ちょいラブコメあり)

しかし、数十分探し回っても中々見つからない。

それにエニナも未だ会えていない。


少し不安が募ってきた。

学園のほとんどが集まっているとはいえ、ここまで見つからないものか……?


何か問題事や事件に巻き込まれていないかと不安になる。


体育倉庫裏にちらっと桃色の髪の子が男たちに連れ込まれているのが見えた気がした。


まさか、エニナ……!?

凄まじいスピードでそこに行く。


そこにはエニナと、男三人が居た。

そいつらを見て、俺はため息をつく。


「おいバカカス……お前、俺の女に何をしている? 」


「げっ……どうして気づいたんだよおおおおおおお」


「ヘルク君……! 私はいいからっ……! ルナちゃんを助けてあげて!!! 」


は……? ルナ……?


「おやあああああああああ。さすがにそちらまでは気づいてない様子ですかあああああああああああ。まぁ、教えませんけどねぇぇぇぇ。……おまえはぁぁぁ、余計な事を言うなああああああああ」


エニナは二人のあの取り巻きによって両腕を掴まれており、身動きが取れない。そこにバカカスが顔に殴りを入れようとする。


もう、こいつらは許さない。


「【時間停止】」


その名の通り時を止める魔法を使う。

空間だけではなく、この世界自体が止まる。音も何もかもない。


ゆっくりとバカカスに歩み寄る。

もう、こいつは〇してもいいだろう。こいつはこの世において許されない大罪を犯そうとした。


この俺が、悪魔神が。無能な神に変わって大罪人を地獄に落とす。


こんなことをすれば、【時の神】……いや、神の連中は黙っていないだろう。全ての神を敵に回す行為だ。


だが、どうでもいい。

エニナを泣かせた。怖がらせた。恐怖に貶めた。


俺がどうなろうが、知ったことでは無い。

こいつらを葬りされるなら、エニナが笑顔でいてくれるなら。


俺の許可もなく、勝手にエニナの身体にまとわりついている害虫共を蹴り飛ばす。


時が止まっていてもなお、エニナは美しい。

頭を撫でる。


そこでメリアの先程の言葉を思い出す。伝えてきた【ソレ】はキス。


待っているはずだから、してあげてと伝えられた。それに、二人が早くしてくれないと、あーし達も出来ないんだから……と。多分後者が大きな理由だと思うが、それはつっこまない。


シルフィーを虐めていた大貴族(笑)は蘇生してやってるから、なんら問題はないが、今回は蘇生するつもりは一切ない。


塵一つ残さず……。

そんなことをすれば俺はエニナの傍には、いや誰の傍にも入れないだろう。


だが、こんなやつ生かしておく通りはないんだ。

エニナが幸せに生きるためには。


そのために喜んで俺は、エニナの前から姿を消そう。


もう会うこともないであろうエニナの唇にそっと口を重ねる。


じゃあ、さようなら。

エニナから離れて、バカカスに向き直る。


お前もさようならだな。

俺は右手を向ける。今までの比じゃないくらいの膨大な魔力を消費し、魔法名を口にする。


「そくしまーーー」


「だめっっっっっっ!!!!! 」


言い終える前に、何者かによって口を抑えられた。


「だめだよっ……こんなやつのために……ヘルク君が居なくなっちゃうなんて……いやだよ……」


後ろから抱きしめられた。


なんで動ける、なんで止める……そんな言葉が出そうになるが止める。


「私はヘルク君の右隣じゃん……何があっても守るって言ってくれたじゃん……私もヘルク君を守るって約束したじゃん……行かないでよ…………私の傍から離れないで……いなくならないで…………大好きなんだからあああああ!!!!!! 」


……どうやら、大罪を犯しそうになったのは俺だったみたいだ。大切な人を自分の手で泣かせてしまった。


俺は……。



しばらく時が止まった世界で、お互い抱きしめあった。


「少しは落ち着いたか」


「うん……ごめんね、服よごしちゃって」


「そんなこと気にするな。……俺のほうこそすまない。エニナが襲われそうになって、理性が保てなかった。止めてくれなかったら俺はあいつを〇してただろう」


「びっくりしたんだからね? 私を取り押さえていたはずの二人は吹き飛んでいるし、ヘルク君は目の前で、魔力を貯め続けているし……なにより!!!! 」


「なにより? 」


「ヘルク君!! キスしたでしょ!!!! 私、あれで目覚めたんだよ。てかね、ファーストキスだったのに……」


「俺じゃ嫌だったよな……」


「ちがうっ!! そんなわけないじゃん。ヘルク君がっ!! 私にキスしてくれる瞬間を見れなかったのが悲しいのっっ!!!! 」


「じゃあもう1回な? 」


俺はエニナの後頭部に頭をやって、唇をつける。

今度はさっきよりも長く。


最初はびっくりしていたが、すぐ受け入れてくれて、幸せそうな顔をしていた。


「ぷはっ……もうっ! ヘルク君、急すぎだよ……」


「嫌か? 」


「んーん。幸せ…♡ 」


「じゃあ、時戻すぞ」


「あ、そういえば時止まってるんだったね。……大好きっ♡ 」


もっかいされた。

そして、時はまた流れ出す。


「ぐはぁぁぁぁ!! 」


「ごはっ!! 」


どこおおおおん……!

蹴り飛ばした害虫共が吹き飛んで行った。


「お、お前らああああ!? お前えええ……何やったあああ」


「何って……時を止めただけだ」


「エニナに免じて1回だけで済ましてやる。感謝するんだな」


「はあああ? なにを……ぶべっ」


ぐちゃり。

バカカスの身体が何かによって虫みたいに潰され、大量の血が吹き散る。そして五体満足なバカカスが、その血溜まりにぼとんと落ちる。


「な、なにがあったああああああ!?!?!? う、うえっ……」


記憶、そして身体はしっかりと今あったことを覚えているようだ。とてつもない不快感に襲われていることだろう。


頭を踏みつけながら聞く。


「おい、ルナはどこにやった」


「あの大人しいチビおんなかああああああああ……ぐぎゃっ! 言う! 言うううううううう」


この状況でもなお、ルナを侮辱できるその精神だけは褒めるしかない。


「すぐそこのおおおお、体育倉庫の中に縛り付けてるよおおおおおおおおおお。……だけどねぇ、怖い先輩たちに協力を仰いだからねえええええええ。今頃ボコボコに殴られて、死にかけてるんじゃないかなあああああ!!! ああ、いい気味だよおおおお 」


本当にこいつはゲスだ。

〇せないのが腹立つ。


取り巻きの害虫共が横たわっている場所にバカカスを蹴り上げて、俺たちは倉庫に向かった。


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【あとがき】 「続きが気になる!」「面白い!」「ハーレム要因だヨシ!」「次回、最終決戦……! 」と少しでも思って頂けましたら、 広告下からフォローと星を入れていただけますと、幸いです。皆様の応援が、執筆の原動力となります!よろしくお願い致します! ――――――――――――――――――

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