第22話 悪魔神、シルフィーを虐めていた大貴族を死の無限ループに陥れる

今日の夕方からはサークルの紹介があるらしく、皆楽しみにしていた。


かくいう俺は、サークルとやらが分からないので、なんでこんなにも盛り上がっているのかよく分からない。


ルヴェールに聞いてみたところ、入る入らないは自由らしいので俺は入らない方向だ。


それを皆に伝えたのだが……。


「話を聞くだけでも行ってみようよ〜どんなのがあるか楽しみじゃん! それに、ヘルク君と一緒がいーな! 」


「良いのが……あるかは別としても……るなはへるくと、どんなサークルがあるのかまわってみたい……だめ? 」


「けど全員で同じところにしないと、これから集合しずらくなるんじゃない〜? まっ、あーしはツムギとダーリンと同じならなんだっていいよ〜」


「自分も入れてくれたのは嬉しいけど、それは他の皆に悪いからなぁ……うーん。自分も迷惑でなければアナタと同じサークルにするつもりでしたけど♡ 」


「わたしは本が読めればなんでもいいので……あ、けど……ヘルクさんと一緒がいい」


サークルには興味があるけど、俺と一緒がいいらしい。

俺が入るかは置いておいて、こいつらのためにどんなのがあるかだけでも見ておくか。


じゃあ行くか。

出発しようとしたが、ふと思い出した。


「あいつを回収してくる。皆は待っていてくれ」


そう言い残して、【転移】で2年生教室が連なる階に移動し、シルフィーを探す。


ええと、あいつは何クラスつってたっけな。

教室を外から一つ一つ探す。


大貴族がなんたらとか言っていたから、同じ教室と仮定するとSランク教室だろうかと思い、歩いていく。


がつんっ……!!


廊下を歩いていると、教室から人影が吹き飛ばされ壁に激突した。それに少し遅れて、教室から二人の男が現れた。


そして、吹き飛ばされて頭を抑えてうずくまっている少女の髪を掴んで、持ち上げ、男のうちの一人が拳を振り下ろす。


しかし、その少女に男の拳が触れることはない。


「よっ、シルフィー」


「へる……ヘルク様ぁぁぁ……ほんとに助けに来てくれたあああ……うわぁぁぁぁぁぁん」


俺の顔を見ると、泣き出してしまった。

どうやら俺がシルフィーの危険を察知して、やってきたと勘違いしているようだ。


「お前に泣いてる顔は似合わんから泣くな……つっても、壁に身体打ち付けられたらそりゃ泣くほど痛いよな。【回復魔法】ほら、これで少しは痛み引いたか? 」


「ううん……ずっとやられてきたことだから身体はもう慣れっこ。わたくしめが泣いてるのは、ヘルク様が約束通り助けに来てくれたことです……約束を、わたくしめとの約束を守ってくれたのはヘルク様が初めてです」


言えない。ただ皆でサークル選びで回るからシルフィーも誘いに来たら偶然お前がやられていたなんて言えない。


動揺を抑えながら言う。


「ふん、この俺の女なんだからなお前は」


「奴隷ですわ♡ 」


「ふっ、その方がお前らしい。もう一緒俺の前で泣くな」


「では泣かせないでくださいよ♡♡♡♡ あっ♡ けど嫁になる時は泣いちゃうかもですううう♡♡ 」


元気になったシルフィーを庇うようにして、俺は前にたつ。


「この俺様の【遊び】を邪魔するとはいい度胸だなぁ、ボクくんぅ? 」


「コミクス様、こいつ見ない顔ですね。新入生でしょう」


「おいおいボクくんっ? 正義のヒーローごっこですかぁ? そこの女は俺様たちの道具……奴隷なんだよぉ。分かったらそこどけ」


赤い髪にイカつい顔をした男がコミクスで、隣が……下っ端?


「残念だったな、シルフィーは俺の奴隷だ。お前らこそそこをどけ。……いや、こいつに謝れ」


「ブヒャヒャヒャ! ……おい。この俺様が奴隷ったら奴隷なんだよ。それに俺様の方が先にこいつをーーーぷきゃっ! 」


「ごほっ……! 」


こいつらがシルフィーにしたのと同じように、髪を掴んで壁に叩きつけてやった。


顔が壁にめり込み、壁がパラパラと崩れる。

血がダラダラと垂れていく中、ピクリとも動かない。


シルフィーが口を抑えながら、それを見ていた。


赤髪の方の腹を蹴り上げると、厨に浮かび、血を吐き出しながら地面に転がる。


「てぇぇぇぇぇめぇぇぇぇぇぇ」


「ほう、まだやる気か」


こいつの身体を掴み、窓から放り投げる。

高所から地面に落下すると、ぐちゃりと嫌な音がして大きな血溜まりが出来ていた。


俺はぱちんっと指を鳴らす。

すると、外の血溜まりと肉塊が消え失せる。


廊下に、倒れふした赤髪の男、ええと……ゴミクズか。

ゴミクズが居た。


俺が蹴り上げて、廊下に横たわった時と全く同じ。そう、【時間魔法】でこいつの時だけを戻したのだ。


「はぁはぁ……俺様は死んだんじゃ……ごはっ!? 」


「それ、もう1回だ」


「ぐわあああああああああああ」


そんな叫び声と共にまたもや、何かが砕け散る音が下から聞こえる。


また、指を鳴らす。ゴミクズが廊下に現れる。

掴みあげ、落下させる。

また、指を鳴らす。ゴミクズが廊下に現れる。

掴みあげ、落下させる。

また、指を鳴らす。ゴミクズが廊下に現れる。

掴みあげ、落下させる。

また、指を鳴らす。ゴミクズが廊下に現れる。

掴みあげ、落下させる。

また、指を鳴らす。ゴミクズが廊下に現れる。

掴みあげ、落下させる。

また、指を鳴らす。ゴミクズが廊下に現れる。

掴みあげ、落下させる。

また、指を鳴らす。ゴミクズが廊下に現れる。

掴みあげ、落下させる。

また、指を鳴らす。ゴミクズが廊下に現れる。

掴みあげ、落下させる。

また、指を鳴らす。ゴミクズが廊下に現れる。

掴みあげ、落下させる。



何回繰り返しただろう。

あれだけうるさかったあの男が、やがて何も言わなくなった。


否、何回か、このループに耐えきれず気絶していたが、魔法で無理やり意識を戻させ、また繰り返した。


涙も枯れ果て、虚ろな表情をしているゴミクズは、居を見つめていた。


もう一人の男はたった数回で、うんともすんとも言わない置物と化したので放置している。


「シルフィーが受けた苦しみはこんなものではない。こんなのすら耐えきれないお前らが、良くシルフィーをいじめたな」


「ああああああああああ……」


「どうせ、他の奴らがシルフィーを無視したり強く当たるのはお前らの差し金だろう? すぐに全員に辞めるように伝えるんだ、いいな? 大貴族(笑)なんだろう? 今日中に2年共全員に伝えろ。もし、明日シルフィーが嫌な目にあったら……分かってるよな? 」


「はい……分かり……ました」


もう、興味は無くなった。


「やれやれ、思ったより時間がかかってしまった。ほらシルフィー、行くぞ」


「何処にですか? 」


「……そういえばお前には言ってなかったな。今日はサークルとやらの紹介があるらしいんだ。だから2年生のお前も着いてきて欲しいんだが、頼めるか? 」


「もちろんですぅ♡♡ 大好きなヘルク様ぁ♡♡♡♡♡♡ 」


こうして、【転移】で皆の所へと戻った。


今日の一件以降今まで以上にシルフィーからのスキンシップが激しくなるのだった……。




「あああああああ……おのれぇ……ヘルクぅぅ……名前は覚えたからな。絶対に許さねぇ……」

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