メアリー・スーの右脚

木月陽

1話


「もしもはーちゃん(筆者のあだ名)がこの界隈に詳しくなかったら、なんの話?って感じだと思うしマジでごめんなんだけど」


 そんな前置きをしてから友人のKはスマホの画面を点け、私の方に差し出しました。



――――――――――――――――


設定


小鳥遊 (名前)


年齢……14歳

身長……153センチ

体重……にじゅ((殴

バスト……Gカップ

顔……美少女だけど本人は無自覚 可愛い:きれい=4:6


金色と青のオッドアイ

髪は暗いシルバーに白と金色のメッシュ、長さは腰くらいまである

ミナヅキ班の新入りで武器は双剣 戦闘センスは選抜試験を1位で通過するくらい抜群

青崎にも引けを取らない天才 だけど時々ドジっ子な一面を見せることも

垣内(弟)とは広島にいた頃からの幼なじみ

固有能力【再生の祈り歌オラトリオ】……歌声が届く範囲の負傷者の傷を癒し、精神を回復させる


まだみぎあしがありません


――――――――――――――――



「いわゆる夢小説って言って、最初のところにあるこの部分に名前を入力したら、『(名前)』の部分に入る主人公の名前が入れた名前になりますよー、みたいなサイトなのね」


 困惑する私の目線に促されるように、Kはぽつぽつと説明を始めました。



   * * *



 彼女が私に見せてくれたのは、とある小説投稿サイトのスクリーンショットでした。小中学生でも簡単に登録し、作品を投稿することができるそのサイトの大きな特徴は、「主人公の名前を読み手が自由に設定できる」というものです。


 漫画やアニメ、ゲームのキャラクターと肩を並べて大活躍し、ロマンス劇を繰り広げるオリジナルヒロインの名前を自分の名前に置き換えて、自分自身が創作の中に入り込んだような気分に胸をときめかせる。そんな世界を当時中学生だったKに教えたのは、彼女と仲が良かった同級生の女の子――仮にIさんとします――でした。


 未知の世界にみるみる魅了されていった彼女が自分の手で作品を生み出す側に回りたいと思うようになるまで、そう時間はかからなかったといいます。



「このサイト、何人かで同じ小説を一緒に書くこともできてさ。その友達が『書いてみたくなったけど一人じゃうまく書ける自信ないから』って、うちのこと誘ってくれたの」



 当時お互いに熱を上げていたバトル漫画を題材に、何度も読み返したお気に入りの夢小説をいくつか参考にしながらヒロインの設定を練り上げて。今回はK、次はIさん……と交代しながら更新していった夢小説は気づけばそれなりの長さになり、途中でアイデアが収まりきらなくなって別のシリーズを連載したりしつつ、二人は丸一年以上もこの遊びを続けていたそうです。


 とはいえ試験やイベントに追われる中学生の興味関心はあちこちに向きやすく、更新頻度はいつしか3日に1回から1週間に1回、2週間に1回、月に1回までずるずると落ちていき、最終的には高校受験が迫ってきたのをきっかけとして実質的に更新は停止し、それぞれが高校に入学する頃になると小説の話はすっかり過去のものになっていました。


 それからさらに年月が経った現在、KとIさんは極端な疎遠になることもなく、かと言って大学のサークルやバイト仲間ほど密な付き合いをすることもなく、ただ時々インスタに流れてくる写真から相手の近況を知って、年に一度あるかないかの頻度で会って遊ぶような距離感を保っていました。そのため急にIさんからLINEが来た時も、Kは少し驚きつつそこまで深刻には捉えていなかったそうです。


 しかし彼女から届いたメッセージは、Kをかなり困惑させるものでした。



〈ねえ中学の時2人で書いてたさ〉


〈〇〇(漫画の愛称)のユメショあったじゃん〉


〈あれ最近編集した?〉



 十年も前に出入りしなくなったwebサイトにありがちな話ですが、Kもその投稿サイトにはもうずっと接続していないどころか、ログインに使っていたアドレスやパスワードすら忘れてしまっていました。


 だから当然あの頃のユメショ――夢小説に手を加えられるわけがなく、Iさんが何の話をしようとしているのかいまいち分からないままKはメッセージを返したそうです。



〈してないwww〉


〈あんなんもう触れないって、黒歴史すぎて〉


〈なんで急に〉



 Iさんのメッセージが届いてから何時間も後の返信でしたが、待ち構えていたような早さで既読がつきました。それから何の説明もなく彼女から送られてきたのが、最初に私が見せられたスクリーンショットだったそうです。



――――――――――――――――


年齢……14歳

身長……153センチ

体重……にじゅ((殴

バスト……Gカップ

顔……美少女だけど本人は無自覚 可愛い:きれい=4:6


――――――――――――――――



 十代の頃は確かに胸をときめかせていたはずの、今見ると少々の面映さを超えて痛みを感じるヒロインの描写。それは確かにおぼろげな記憶の中にある、2人で考えた「主人公」のプロフィールでした。


 寄ってたかって書き足していった設定は、今となってはどちらのアイデアだったかも思い出せないものが大半だったそうです。


 しかし最後に添えられていた一行だけは、どんなに過去の自分が突飛な設定を愛していたとしても、到底書き加えることはないと断言できるものでした。



――――――――――――――――


まだみぎあしがありません


――――――――――――――――




〈なにこれ〉


〈いや知らないよwwwこんなん書かん〉


〈Iちゃんこういうドッキリやるタイプじゃなかったよね?〉



 Kはこの時、怖いとか気味が悪いと思うよりも先に、趣味の悪い冗談に巻き込まれているような居心地の悪さを覚えていたそうです。ただ、記憶の中にある限り、Iさんがこうして人をからかうような真似をしたことは一度もありませんでした。



〈私も知らない〉


〈Twitterでユメショあるあるがバズってて、気になって見にいったらあった〉


〈もうパスワードとか忘れたし ここ何年も触ってなかった〉



 Iさんの方にも心当たりはないらしく、ハッキングやパスワードの漏出も疑いましたが、思い出せもしないようなパスワードなら他の大事なサイトに流用している訳でもないだろうし、ただ変な話だと確かめ合うだけでその時のやり取りは終わったそうです。



「ただ今思えば、あの時のIちゃんすごく焦ってたなって」



 不思議な体験談を話の通じる相手に共有したいという目的だけでは説明がつかないような切実さを、Kはぼんやりと感じ取ったといいます。



「なんだろ。めっちゃ汚れがついた手を早く綺麗にしたいのに、近くに水道も、布とかティッシュもなかった時みたいな」



 そのやり取りがあった日の夜、Kはかつて彼女たちが使っていた投稿サイトにアクセスし、自分たちの作品名で検索をかけました。あっさりと一番上に表示されたタイトルを、少しの躊躇と共にタップして。目次から【設定】と書かれたページを選択すると、送られてきたスクリーンショットの通りの文字列が並んでいました。


 それから彼女は小説を一通り読み、他に不自然な改変がないかを確認したそうです。


 未熟な語彙や当時の夢小説文化に倣った文体(「おはこんばんちわ!駄作者の〇〇です←おい」)に直面し続けるのは、せっかく自然に剥がれかけていたかさぶたにわざわざ爪を立てるようなストレスを伴う行為でしたが、彼女はなんとかやり遂げました。


 結果として、それ以外のページに変わった点は見つかりませんでした。しかし小一時間をかけて作品に目を通し、改めて問題の設定ページに戻った時、「えっ」と思わずKは声を上げたそうです。


 作者であるKもIさんも、もう編集画面にアクセスする術を持たない夢小説。そこに書き足されていた不可解な文章が、変化を見せていたのです。



――――――――――――――――


みぎあしがありませんでした


――――――――――――――――

 


 Kは急いで検索エンジンを立ち上げて思いつくままに単語を入力し、片っ端から検索をかけていきました。


『△△(サイト名) バグ』

『夢小説 改変 みぎあし』

『夢主 まだみぎあしがありません』

『夢主 みぎあしがありませんでした』

『まだ ありません』

『夢小説 ありませんでした』

『夢主 設定 おかしい』


 意図したものではない検索結果が大量に引っかかる中、ふとKはある可能性に思い至りました。


 今も頻繁に更新している小説なら、異変が起きたらすぐに作者や読者が気づいてしまうはず。何かが起きているとしたら、自分たちの作品のように、もう長い事放置されている作品なのではないかと。


 彼女とIさんが当時熱狂していた漫画は数年前に完結し、アニメの放送もずっと前に終わっていました。そのため夢小説をはじめとした二次創作も「全盛期」は通り過ぎ、かなりの作品が完結し、あるいは連載中のまま放置されて、サイトの中でほぼ読み返されることもなく漂流していたといいます。


 Kは投稿サイトに戻ると検索欄に漫画のタイトルを入力し、検索結果の古い方へと遡りながら、数年にわたって更新が停止されているものを確認していきました。


 徒労に終わるか、仮に何か見つかるとしても途方もない探し物になると思っていた彼女でしたが、思ったよりもぼろぼろと目当てのものは見つかったそうです。



――――――――――――――――


PROFILE


石動 (名前)


17歳女


〈ゼロ班〉所属


固有能力なし


努力家でトレーニングは1日5時間


謙虚で礼儀正しく誰にでも好かれる


料理は下手


実は可愛いものが好き


幼い頃に両親を喪い、石動聡一に育てられた


天海の許嫁だった事がある


みぎみみがありませんでした


――――――――――――――――



――――――――――――――――


⭐︎設定⭐︎


八奈見 (名前) 15歳


⭐︎性格・イメージ⭐︎

おっとりふわふわ系

でもたまに毒舌

髪色は白〜水色のグラデーション

腰まであるウェーブヘアで、普段は二つ結びにしてる


⭐︎映像記憶能力を持っていて、一度見たものは忘れない


⭐︎好きなもの⭐︎

うさぎ、プリンアラモード、家族や友だち


⭐︎嫌いなもの⭐︎

ホラー映画、わさび、大事な人を傷つける存在


⭐︎二つ名…ミナヅキの白兎


まだひだりめがありません


――――――――――――――――



「夢主」と呼ばれる夢小説の主人公たちは、華やかな容姿や派手な設定を与えられていることが少なくありません。


 平凡を自称するには鮮やかすぎる髪色や瞳、じっと見つめればどんな堅物も魅了する整った目鼻立ち、作中における上澄みの域に簡単に至れるような天性の才能、誰もが羨む超能力、都合よく海外に行き、あるいは早世している両親、一般家庭の出にも関わらず何故かいる許嫁、生まれた時から一緒の幼なじみ。


 彼女たちは作中人物の注目を一身に浴び、どんなに鋭く毒づいても許されて、大体のわがままは受け入れられるか、あるいは日頃彼女が見せる献身への対価として歓迎されます。どんなトラブルも彼女が挑めば向こうから道を譲るかのように解決し、そしてより一層周りから愛されることになるのです。


 名前をはめ込み、夢を見せるための器として作られた、異端なようでどこかワンパターンのうつくしい少女たち。


 彼女たちのプロフィールに刻まれた、現在形あるいは過去形の不自然な欠損。


 何十、何百もの「主人公」を眺め続けるうち、Kは奇妙な感覚に囚われていきました。




 まだみぎあしがありません。



 

 みぎみみが。




 ひだりてが。




 顔のない、ぐねぐねと波打ちながら変化し続ける、愛される資格があることだけは確かな、無名の「少女」が。




 くびが。




 はなが。




 みぎうでが。




 ――ひだりめを。




 定まった肉体を羨んで、画面の奥からねっとりと、自分に視線を注いでいるような。



――――――――――――――――


設定:香月 (名前)


年齢:13歳

身長:169cm

体重:(閲覧不可)

血液型:O型Rh(-)

瞳:ロードクロサイト

髪:アイボリーブラック


幼馴染の斗真を追って、男装して旭野学園に入学した

普段の一人称は「俺」、素の一人称は「あたし」

触れた相手の固有能力をコピーする事ができる(継続時間は触れてから1時間)


しんぞうがありませんでした


――――――――――――――――



 きん、というLINEの着信音が、Kを現実に引き戻しました。



〈さっきはごめん〉


〈ちょっと混乱してた〉


〈ユメショの件は解決したからもう平気〉


〈きっかけはアレだけど、いい機会だしひさしぶりに会わない?〉


〈ちょうど明日日曜だし〉



 通知センターに映るIさんから届いたLINEを、Kは無視しようとしたそうです。


 しかし、「夢小説の件は解決した」という文字が心に引っかかり、翌朝彼女は〈いいよ〉とIさんに返信しました。


 何かしら安心できる答えを得られたのなら、自分にも教えてほしい。そんな藁にもすがるような考えが、頭の奥にありました。






「――それで結局こっちからフッたんだけど、後で聞いたらもう三ヶ月も前から浮気してたんだってそいつ」


 チェーンの喫茶店の角席で、Iさんはアイスラテの入ったグラスを左手で弄びながら、落ち着いた色のリップで彩った唇をぐにりと歪めました。


「サイテーだよね。これ絶対私悪くないでしょ」

「あー、うん、ね」


 普段は大人しい彼女がふとした時にスイッチが入ったように饒舌になるのは昔からのことで、Kはそういう時ひたすら聞き手に回るのが常でした。


 Iさんは一時間近く、サークルでの人間関係や就職活動の厄介さ、教授との折り合いなどについて話し続けました。ただ今回は再会のきっかけがきっかけという事もあり、頑なに昨日の話題を出さないIさんの様子がKの目には奇妙に映ったといいます。


「あとそう、夏インターンに応募した時の話なんだけどさ」


 それでも淀みなく言葉を吐き出し続ける彼女の顔を見ながら、Kは徐々に「自分もあの件に関してはもう気にしなくていいのかもしれない」と思えてきたそうです。


 恐らくIさんもKと同じような不安に駆られ、廃墟を恐る恐る探索するような気持ちでサイトのログを遡ったのだろうけれど。


 結局気に病むに値しないという結論を出す事ができたから、気を紛らわして安心材料を積み重ねるために、こうしてくだらない話を続けているのだろうと。


 ならば自分もそれに便乗して、一緒に安心すればいいのではないかと。


 そう思いながら、風で飛んでしまった紙ナプキンを拾おうと何気なく背を屈めた時――Kは気づいてしまいました。


「職種によって応募期間が違うとか、もっと目立つように書いておいてほしいよね」


 IさんはプリントTシャツに黒のロングスカートという、比較的ラフな出で立ちだったのですが。


「というかもっとさ、企業理念とか長々と語るより実際の業務を採用ページに載せといてほしい」


 くるぶしまであるそのスカートを、彼女は太ももの辺りまでたくし上げていました。


「Kのところはやっぱり理系だし、研究室の推薦が充実してるのかな。いいなぁ」


 いえ、たくし上げていたというのは少し違ったかもしれません。


「でも論文とか学会発表とかしんどい? 『素人質問で恐縮ですが』とか言われるの本当に」


 テーブルの下に伸ばした右手で、スカートを持ち上げて。



 彼女は、右脚を掻きむしっていました。



 膝より少し上あたりに爪を立て、何度も何度も、少しずつ場所を変えながら、ガリガリと。話している間ずっと掻き続けていたのか、彼女が掻きむしった跡は太ももをぐるりと囲むような赤い線になっていました。ところどころ皮が剥けて血が滲んでいるほどだったのですが、Iさんはそれすら気に留めず手を動かし続けていたそうです。


 あまりの異様さに、Kはそのまま顔を上げられなくなりました。


 ガリガリ。ガリガリ。


「あー、やっぱりつなぎ目はしばらく痒いみたいなんだわ」


 不意に頭上からIさんの声がして、Kの肩が跳ねました。


「でもしょうがないよね。代わりを用意してくれただけ偉いって思うよ」

「なに、が、」

「みぎあし」

 

 他愛無い近況報告と全く同じ声の調子で、Iさんは言いました。血が流れるほど強く、ガリガリと足を掻きむしりながら。


「なんで私に頼むのって思ったけどさ、あんまりにも困ってるんだもんほっとけないじゃん。あの子だって迷惑かけないように、目立ちすぎないようにがんばってるし」


 ガリガリ。ガリガリ。


「多分みんなもそうだったと思うんだよね。最初は怖がって誰かに代わってもらおうとしてた人もたくさんいたかもしれないけど、もしかしたらほんとに困ってるのにこうやって頼むことしかできないから必死になってるのかなって思ったら、なんとかしてあげなきゃって」


 ガリガリ。ガリガリ。ガリガリ。


「まあだから今日もさ、心配しなくていいと思うよって言いたかったんだ。みんなで助けてあげようよ、だってみんなあの子に名前を押しつけて、たくさん助けてもらってきたんだから」


 生々しいみみず腫れが何本も走った彼女の右脚は、傷跡を除けばつるりと白く滑らかで、ほっそりと完璧に整っていました。それがスカートに隠れた左脚と、形も色も違う気がして――


「Kのところにもあの子は来た?」


 弾かれたように、Kは顔を上げました。


 Iさんは満面の笑みで、彼女を見つめていました。


 粘土に切れ込みを入れたような目が、じいっと彼女の表情を伺って。


 そっか、と満足気に口元が動いた時。




「  まだ、ひだりめがないんだあ 」




 鈴を転がすような声が、耳元でねっとりと囁きました。




   * * *



「――最初Iちゃんは、他の人に見せたらそっちに行ってくれると思ったらしいのね」


 一通り話し終えたKは、楽しい後日談を語るような口調で言いました。


「確かにそうではあるんだけど、でも元からあの子はできるだけたくさんの人に助けてもらいたかったわけじゃん。だからまあ、それはそれとしてIちゃんには頼みつづけてたっていうか。それにその頃にはIちゃんもだいぶほだされてたから」


 おかしくてたまらないといった様子で肩を震わせるKから、私は目が離せなくなっていました。正確には、彼女の顔と手元から。


 彼女は話しながら、しきりに目を擦っていました。


 化粧が崩れるのにも頓着せず、ぐりぐりと目の奥を捏ねるように手を動かして。


 執拗に、左目だけを。


「はーちゃんもあの子のこと知ってるでしょ、忘れてるだけで」

「……どういうこと」

「このサイト見てたことあるよね」


 確かにKの言う通り、私はその投稿サイトを使っていました。彼女たちと同じで、もう十年近く昔のことでしたが。


「うちらのこと恨んだっておかしくないのに、あの子はゆるしてくれたんだよ。うちなんかさ、あは、あの子があそこからどうなるかも忘れちゃってもう思いだせないのに」



 Kの言葉で、うっすらと理解しました。


「あの子」が誰なのかも、何を願っているのかも。


 それなら確かに、私たちが文句を言えるはずもないでしょう。



 顔を伏せ、眼窩を抉るように爪を立てて、「ああたしかにめっちゃかゆいねこれ」と笑う彼女の指のあいだで。


 左の目玉だけが、ほとんど白目を剥くようにぐるりと回って。


 星を閉じ込めたような瞳が、私の方へ微笑みました。





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