第37話
どうにも落ち着かない一日を過ごし、ようやく訪れた放課後にほっと息を吐いて図書室に行こうとしたハリィメルの前に、朝と同じ暗い目つきのロージスが立ちはだかった。
「話がある」
ロージスの怒りの表情は見たことがあるが、ハリィメルに無視されて屈辱にぷるぷる震えていた時とはまったく違う、腹の底から湧き上がる不快さを必死に押さえつけて平静を保っているかのような表情に、ハリィメルは思わずごくっと息をのんだ。
教室にはまだ他の生徒達がいる。何人かはロージスがハリィメルに話しかけたことに気づいてこちらを見ている。
いつもなら「人前なので」と無視するところだが、さすがに今この場でそんなことをする勇気はハリィメルにはなかった。
ロージスの態度を見る限りあまりいい話ではなさそうだし、とりあえず教室からは出た方がいいだろう。
「あの、場所を変えませんか?」
「ああ。なら街のカフェにでも行こうぜ」
思わぬ言葉を返されて、ハリィメルは困惑に眉を曇らせた。
「え? いえ、中庭とか空き教室でよいかと……」
ハリィメルがそう言うと、ロージスは目をすがめて「はっ」と笑った。
ひどくやけっぱちな笑い方だった。
いつもとまったく違う態度を見せるロージスに、ハリィメルはなんだか恐ろしい感じがして手にした荷物をぎゅっと握った。
なんだろう。休み中になにかあったのだろうか。
でも、ロージスは明らかにハリィメルに対して腹を立てている。
その理由がわからずまごまごするハリィメルに、ロージスは冷たい声音で言った。
「俺の誘いは断るくせに、他の男とはカフェに行くわけか」
「え?」
ハリィメルはロージスと向き合いながらも、彼の様子のおかしさに気づいた周囲がざわめいているので気が気じゃなかった。
「あの、なんの話をしていらっしゃるのかわかりませんが、まずは教室の外に――」
「なんの話かわからない、だ? 勉強が忙しくて遊びに行く暇もないはずの誰かさんが、カフェで男と会ってのんびりお茶を飲んでいたって話だ!」
ロージスに強い口調でそう言われて、ハリィメルは唖然として目を白黒させた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます