第60話 今宵、星になる
【前回のあらすじ】
# ♪ ♭
中央に立つのは五侯爵の首魁・パルヴェーク。壁際では
そして、双方の間には、半ベソで膝を震わせているツインテ双子姉妹がいた。
「マヨミノ!? お前ら、わざわざ引き返して来たのか!」
「
マヨたちは、おっかない上司を相手に勇気を振り絞り、時間を稼いでくれたのだろう。
「二人ともよくやった。あとはオレに任せとけ」
「私も少しは
「当然ッス。先輩もぴあ
「そうですわ!
「心配すんな。あいつはオレを先に送り出してくれたんだ。ちゃんと後から来る」
泰然たる
「あのオーグマンを倒して来たのですか」
「ああ。存分に戦えて満足してたみてーだぜ」
「……そうですか」
パルヴェークは長いまばたきの後、
「
「はあぁっ!? 何言ってんだテメェ、イカレてんのか!?」
思わず
「貴方の力は悪魔にとっての脅威。だからこそ、弱いうちに芽を摘まねばならない。今まではそう思っていました」
「オレの強さが手に負えねぇってわかった途端、味方に引き入れて利用しようってのか?」
「妾が覇者となった
「てめーの都合で部下を切り捨てるようなボスが信用できるはずねーだろ。却下だ、却下」
当然、交渉は決裂。だが、パルヴェークはなおも強気である。
「強がりはおよしなさい。貴方にはもう戦える力は残っていないのでしょう」
「一発分は残してあるぜ。今のあんたを倒すにはそれで充分だろ?」
「この間合いで妾に当てられるとお思いですか?」
「確かに、オレ一人じゃ無理だろうな。――おい、いるんだろ? マキナ!」
ややあって、開け放たれた通用口から、銀髪の魔術士が飄々と姿を見せる。
「やあ、
「ったく、重役出勤も大概にしとけよ」
軽口を叩き合う。やけに懐かしい気分だ。感慨に浸りたくなる気持ちを抑え、
「やはり来ましたか」
「パルヴェーククン、お別れを言いに来たよ。残念だが、ワタシたちは敵同士として出会ってしまったからね。どちらが倒れようと恨みっこなしだ」
マキナの決意を見て取ったか、パルヴェークもそれを受け入れる。
「よいでしょう。元より我が後ろに道はありません。手に入らぬものならば――壊すまで!」
殺気が
もし
「迷わず撃ちたまえ、
マキナの声が
「行くぜ……〈
ありったけの闘志を込めた蒼い波動が、
「フフ……何と、あっけない……」
パルヴェークは前のめりに崩れ落ちる。その背後と側方には、マキナがこじ開けた空間の亀裂がそれぞれ広がっていた。
波動はパルヴェークの胸の傷痕を食い破り、致命傷となっていた。
「キミが切り捨てた
「道理で……貴方を閉じ込めておける……はずが、ない……」
因果応報を悟ったパルヴェークの表情は、実に晴れやかだった。
マキナはパルヴェークに歩み寄り、そっと問いかける。
「言い残すことはあるかい?」
「……ギョニソ」
「ああ」
「美味しかっ……た――」
パルヴェークの身体は輝く星屑となって爆ぜ散った。ちょうど辺りを覆い始めていた夕闇を照らし出すかのように。
マキナは黙って空隙を開き、中から取り出した聖杯で霊質を吸い寄せる。余さず回収を終えると、再び杯を仕舞い、元どおり空間を閉じた。
「……終わりましたのね」
「うん……」
ぴあ
茫然と立ち尽くす双子たちを横目に見つつ。
「
マヨもミノも首を横に振った。
「マヨたちはセンパイについてく。パルヴェーク様が初めて許してくれた、マヨたちのワガママだから」
「右に同じ……」
「そっか」
マヨとミノには、虚勢を張らずに生きられる居場所を。
オーグマンには、持て余した力を存分に振るえる好敵手を。
デムネシュには、JKにしばき倒されるというドMの夢を。
(最後で台無しじゃねーか! あのキモ男のことはもう思い出したくねーな……)
頭を抱える
「大丈夫かい、
「あんたこそ。ちょっとやつれたんじゃねーのか?」
「スリムになったと言ってくれたまえ。ヒーローにはデリカシーも必要だよ」
マキナは隣に腰を下ろし、
こんな甘えたふりをするなんて、どういう風の吹き回しだろうか――そんな疑問も、星の瞬く紫色の空を見上げるうち、
「ヒーローかぁ……」
これまでは、ヒーローという存在に漠然と憧れていただけだった。今になって、その理由がやっとわかった気がする。
「オレはきっと、日常を守りたかったんだ。
「
「
以前に電話で言いそびれていたことを、
「気づいていたさ。最初にキミを見かけた時からね」
「やっぱりか。やけにしつこくスカウトしてくると思ったぜ」
本当は、ほかにもっと話したいことがたくさんあったはずだ。
でも、珍しくウザく感じないマキナの笑顔を前にしたら、どうでもよくなってしまった。
「
「は? 当たり前だろ」
「その言葉、決して忘れないでいてくれたまえよ」
そう言った翌月、マキナは
(次章につづく)
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