番外編

第39.5話 (色んな意味で)デカい女

【時系列】

★第39話 湯の華は真夏の名残雪

https://kakuyomu.jp/works/16818093080062396426/episodes/16818093093598251573


※第39話のお風呂親睦会の続きです。


   #   ♪   ♭


 浴槽の中、ことなつに組みつかれたまま、弁解を続けていた。

 なお、まいとぴあはとっくに風呂場を出て行ってしまっている。


「そんなわけだから、オレがぴあに惚れたとか、手を出したとかは一切ねーよ。安心しろ」

「……ぴあさんが、ことを慕って…………そうか」


 なつの腕から力が抜けていく。拘束を抜け出したことは、火照った身体を冷ますため、湯船の縁へと腰掛けた。


「納得したか?」

「ああ。一応な」


 そうは言うものの、なつの視線は未だことを敵視している気がしてならない。


「何だったら、ぴあのこと慰めに行ってやりゃどうだ? お前にとっちゃチャンスだろ?」

「断る」予想外の反応だった。「失恋の痛手につけ込むなんてアタシは御免だ。ぴあさんの気持ちの整理がつくまで、普段どおり接してあげたい」


 言われてみれば、なつ自身、ネル部長を振った経験もある。思うところあって当然だ。

 ことは軽率な発言を悔いた。


「だよな。わりぃ」

「オマエもあまり思い詰めるな」


 逆になつから気遣われてしまった。

 実際、他人から向けられる好意にはっきりとノーを突きつけるのが、これほどこたえるものだとは、ことも思っていなかった。


 言葉は選んだつもりだが、それでも必要以上にぴあを傷付けていないかと、心配は尽きない。


「普段どおり接する……か」

「そうだ。ぴあさんの好きなことのままでいてやれ」


 なつの心強さがいつも以上に沁みた。ことは今一度、その敬愛すべき仲間の姿を正面に見据える。


「そういやお前、カラダ綺麗になってんな」

「きっ、キサマ……まいさんやぴあさんだけでは飽き足らず、アタシまで誘惑するつもりかッ! このハーレム主人公が!」

「ちげーって! ホラお前、さっきの戦いでバッサリやられてたし、傷が残ってねーか確認をだな……」

「余計なお世話だッ! そんなにジロジロ見るんじゃあないッ!!」


 とりあえず、ことは存分に理解した――なつは自分よりも色んなモノが一回りデカいのだと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る