子ども促進法(通称:お見合い法)の相手が推しのアイドル声優だった〜その子と結婚することになったが、ニャンデレ過ぎてたまに怖いけどすごく幸せです〜

田中又雄

第1話 猫+ヤンデレ=ニャンデレ

「...はぁ、嫌だなー」と、机に突っ伏しながら呟く。


「まだ言ってんのか?仕方ねーだろ?法律で決まったことなんだからよ」


「...いやいや、そもそもなんだよ子ども促進法って。いくら少子化とはいえそんなことするかね。むしろ、俺みたいな拗らせアニオタがそんなことしたら逆効果だと思うんだけどな」


「...確かにな。相手の女子にゴミのような目で見られたら...いや、それはそれでありだな」


「...ドMイケメンな雄二ゆうじと違って...こっちは地味メンインキャアニオタだぜ?需要なんてこれっぽっちもないっての」


「...まぁ、でも行かなかったら罰金だぜ?行って合いませんでしたならいいわけだし、大人しく行くしかないと思うがな」


「...はぁ。お見合い相手が【黒たん】だったらいいのになー」


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093080059841296


 2026年...少子化が進む中で一つの法案が可決された。

それが【子ども・子育て促進法】通称、【お見合い法】である。


 近年は出会いの場が少なくなってきているおり、一昔前のお見合いのようなものは完全になくなっていた。


 そこで政府手動で行われることになったのが強制お見合いだ。

好みや相性の事前調査などを踏まえ、強制的に男女をマッチングさせるというもの。


 ちなみに18歳から25歳までの7年間毎年行われ、途中で結婚した場合や一部例外的な事情を除き、強制参加となり不参加の場合には罰金が課せられる。

(※ちなみに相手の名前や顔は会うまでわからない)


 このマッチングにより結婚した場合には条件付きで特別な給付金などが貰えるなどもあり、一定の効果が見込まれるとか...。


 そうして、そんな法案が可決した翌年に18歳になった俺も例外ではなく、強制お見合いに参加することになったのだが...。


 気が重い。

確か来週の日曜だよな...。

はぁ...嫌だなー。


 そんな風に現実逃避をしつつも無慈悲に日々は流れ、ついに日曜日を迎えることになったのだ。



 ◇6月15日 日曜日


 のっそのっそとゆっくりと準備をしていると、母さんに詰められる。


「ちょっと!時間ギリギリじゃない!早くしないよ!って、ネクタイ曲がってるわよ!」


「...うん」


 確か俺は...12:00〜13:30の1時間半か。


 これが毎年かぁ...。

年1イベントとは言え、既に気が重い。

どうせ俺と結婚したい人なんていないし。


 そうして、電車に揺られながら会場に向かうのであった。


 会場は国が所有しているビルであり、日にちをずらしながらほぼ365日開催されていた。

(※学校は休むことができ、会社も有休扱いになる。健康診断と同じような扱い)


 ちなみに話しやすいようにちゃんと1組ずつ個室が用意されていた。


 さて、俺は15階の...A室か。


 はぁ、せめて趣味が合う人がいいな。

というか、そういう人間を選んでくれてるよな?あんまり可愛い子は嫌だな。嫌がられるのも辛いし、コミュ障がバレるのも嫌だし...。


 そうして、会場に到着すると受付の人に紙を手渡す。


「では、スマホをお預かりします」


「...はい」


 1時間半を無言でスマホをいじり続けるなどの対策、また相手のプロフィールについて記録できないようにこのような対策が行われているのである。


「それではあちらの部屋でお待ちください」


 時間ギリギリになっちゃったけど、相手はまだ来てないのか。


 そう思いながら先に入って待機する。

なんか面接前みたいで緊張するな。

バイトの時を思い出す。


 そうして、12:00になると何やら部屋の外でドタバタ音が聞こえる。


 すると、足音はどんどん近づいてきて、そのまま勢いよく扉が開いた。


 そこに現れたのは俺の推しアイドル声優である...黒凪くろなぎ 刹那せつなさんであった。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093080059696119


 黒凪 刹那はここ最近人気急上昇中の現役JKアイドル声優であった。

声優としての実力はもちろん、歌唱力、ダンス、クールな性格と喋り方、そして何よりアイドルグループのセンターを張っていてもおかしくないほどのそのルックスに多くの人が魅了されていた。


 そんな彼女が目の前にいたのだ。


 思わず言葉を失っていると、「ごめんなさい。仕事が押しちゃってて...」と言いながら入ってくる。


「...」と、黙って見続けてしまう俺。


「...」と、何故か彼女も俺の顔を見つめる。


「あっ、いえ...す、すみません」と、思わず目を逸らす。


 そして、二人が揃ったところで受付のお姉さんがやってきて相手のプロフィールが渡される。


 名前や身長や体重や趣味など事細かく情報が記載されている。


 そこにはやはり黒凪くろなぎ 刹那せつなという名前が記載されていた。


 うぉ、噂通り本名なんだ...。

てか、やばいって!俺この趣味の欄にアニメってかいてるし、好きな芸能人に黒凪さんの名前書いちゃってるよ!!

絶対気持ち悪がられている!!


「それではこれから1時間半、楽しくお話ししてください!」というと、そのまま受付の人は出ていくのであった。


 チラッと紙越しに彼女を見つめるが、俺のプロフィールを事細かくみている...。

まるで心を見透かされているようなそんな状況にもう今すぐ帰りたくなった。

いや、嫌われても良いからサインだけはもらおう!


「...よくライブに来てくれてますよね」と、挨拶より先にそんなことを言われてしまった。


 うわぁー!なんか要注意人物的な感じで覚えられてたー!!最悪だ...もうライブに行けない...。


 絶対キモいって思われてるよね。

下手したらこのお見合いすら俺が仕組んだとか思われてるのかな...。

あーぁ...本当来なきゃよかった。


 やばい...泣きそう。すげー惨めになってきた。。


「...ははっ、ファンだから...セッティングされたとか...ですかね?ご、ごめんなさい、忙しいのにせっかく来たのに俺みたいなき、きもいやつが相手で...。な、何なら俺、体調不良とかで...切り上げても...」


「...帰らないでください」と、彼女はそう呟いた。


「...え?でも...」というと、彼女は何故か俺に紙を見るように指で伝えてくる。


 よく分からず眺めていると、【今一番会いたい人】の欄に【いつもライブに来てくれる人。名前とかはわからないけどグッズいっぱい買ってくれるし、SNSとかでもすごく励ましてくれるから。本当は感謝を伝えたいけど事務所からはそういうのNGって言われてるから。だから会ってお礼を言いたい】と書かれていた。


「...え?...これって...」


「...すごくびっくりした...。本当に会えるとは思ってなくて...。あの...いつもありがとうございます//」と、少し顔を赤くしながら髪を耳にかけてそう言われた。


 人生で一番嬉しい瞬間だった。

そのまま目から涙が流れ始める。


「...そう...ですか...支えになれていたなら嬉しかったです...ほ、本当は迷惑なんじゃないかって思って...すごく不安で...」と、涙をボロボロと流しながら呟く。


 すると、俺の手にそっと触ってくれる黒凪さん。


 それから泣き止んでからは色々話をした。

まぁ、一方的に俺が話して彼女は優しく相槌を打っていただけだった気がするけど、、、。


 まるで夢のような時間だった。

しかし、そんな夢は長く続くことはなく、気がつくと残り5分になっていた。


「ご、ごめんなさい...一方的に色々と話しちゃって...。あの、これからも応援してるので頑張ってください!」というと、少し悲しそうな顔をする。


「...何でそんなこと言うの?」


「え?」


 すると、彼女はカバンから1枚の紙を取り出す。

それは...婚姻届だった。


 すでに彼女の情報は書かれており、後は俺の情報だけ書けば提出できるような状態であった。


 意味がわからずぼけっーとそれを眺めていると、「...私のこと好きじゃない?」と言われてしまう。


「す、好きです!だいすきです...けど...」


「...もし、今日あの人に会えたらこれを渡そうって思ってたの...。わ、わたしも...好きだから//だ、だから結婚して欲しいの...//」


「え?いや、え?」


「...嫌...?」


「い、いや!そ、そんなことないです...」と、そのままの流れで持ち物の中に書いていた印鑑を取り出し、ハンコを押す。


 後は証人の名前を書きさえすればもう出せるような状態になったところで、1時間半が経った。


 そのまま受付の人に婚約することになった伝えると、すごく驚きながらも嬉しそうに笑ってくれた。


「おめでとうございます!」


「あっ、ありがとうございます...」


 そうして、携帯を受け取ってそのまま母さんに証人欄に書いてもらおうと俺の家に向かっていたのだが...。


 エレベーターに乗ったところですごく顔を近づけられる。


「な、なに!?//」


「...受付のお姉さんの...おっぱい見てたでしょ」


「え?み、見てないよ!」


「...嘘。...おっきい人が好きなんだ...」と、すぐに俺に背を向けて拗ねてしまう。


 そんな可愛い彼女と結婚することになりました。

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