第32話 図体が異様にデカい、ゴブリン

 牢屋の鉄格子を吹っ飛ばして脱出する。

 鉄の棒がポキポキと折れる爆音が響き、ゴブリンたちを呼び寄せてしまった。

 駆けつけてきたのは、十匹ほどの衛兵と――変色はしているものの、まだ黄金の輝きを帯びた甲冑をまとった貴族風のゴブリンだ。


 「ごぶ! ナニヤツ!」


 怒鳴りながらドタドタ乱入してきたので、思わず反射的に撃ってしまった。

 MP7の連射で、ゴブリンをまとめてなぎ倒す。


 ゴブリンどもがボロボロになるのは別にいい。でも純金の甲冑まで見るも無惨な穴だらけになってしまったのは、ちょっともったいなかったな。


「ボス。こっそり王冠を盗むって言ってなかった?」

「そのつもりだったんだけど。特殊作戦って難しいね」

「ガンガンいこうぜなのだ」

「チフもやる気十分だし脳筋プレイで、やっちゃお」


 プランBに移行する。

 作戦なにそれ、おいしいの? ってノリで、目に入ったゴブリンを片っ端からキルしつつ、愚直に王の部屋まで突き進むプランだ。


 城内の敵は、おそらく二百ちょい。

 まとめて来られたらこっちがボコボコにされるけど、分散して来るはずだ。

 無線なんてないし、そう信じたい。


「ここって城内で、合ってるよね?」

「そうじゃ。ゴブリンども、掃除をしておらぬようじゃの」


 王の住処とは思えないほど汚れていた。

 真っ白だったはずの壁は黒ずみ、絵画には埃がびっしりと積もっている。

 文明を手にしても、ゴブリンにとっては豚に真珠だ。


「卑怯とは言わないごぶな?」


 ゴブリンがリードをぐいっと引き、人間を自分たちの前へ立たせる。

 首輪につながれた人たちは、逃げることも隠れることもできない。


 肉壁、か。


「いや、卑怯でしょ」

「変な筒を使ってるおまえらの方が卑怯ごぶ!」

「銃?」

「それごぶ! 危ない塊を飛ばすのやめろごぶ!」

「あんたたちこそ、毒を塗った矢を放ってくるじゃん」


 通路を人質の肉壁で塞いだゴブリンたちが、隙間から矢を放ってくる。

 飛来する矢を、チフが小刀で弾き返した。

 チフの背後では、アリスが小銃を構える。


 ふーっと息を吐き、狙いを定めたアリスが引き金を引いた。

 発砲音と同時に、弓を引き絞っていたゴブリンの命が散る。


 ゴブリンどもがひるんでいる隙に、肉壁にされていた人質を素早く回収した。


「びびるなごぶ! ぶっ殺されてぇのかごぶ!」


 図体が異様にデカいゴブリンが現れた。

 一瞬オークかと思ったけど、チフが違うって言うからこいつもゴブリンだ。

 しかも金棒を持ってる。


 怒号に突き動かされたゴブリンが、無謀な特攻を敢行する。

 チフとアリスが撃ち、斬り、血祭りにした。

 廊下にはゴブリンの四肢や頭部が転がった。


 要のチフとアリスを部下に丸投げしたデカいゴブリンが、私に突進してくる。

 私はMP7を連射するけど、こいつ歯をガリっと噛んで耐えた。

 腹に無数の穴――蜂の巣が苦手な人ならひぅっとなるほどぶち込んだのに、平然を装って走っている。我慢強すぎる。


 金棒が、私の視界を塞いだ。


「吾輩が相手なのじゃ」


 チフが刃を金棒にぶつける。

 アリスは私の後頭部に手を置き、力を込めて無理やり私の腰を折り曲げる。私を庇う体勢を作ったアリスは、チフから離れた。


 刃と金棒が何度も衝突し、火花を散らす。

 隙を突き、チフの拳銃から放たれた弾丸が、図体が異様にデカいゴブリンの急所に複数の風穴を空ける。


 致命傷のはずなのに、デカいゴブリンは血反吐を吐きながら笑っている。

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