一緒にシよ?――2

 その夜、自室の椅子に腰掛けて、俺は『みゃあ』さんの音声配信を待っていた。


 両耳にBluetoothイヤホン。すぐ手が届く位置にティッシュ箱。ズボンはすでに脱ぎ捨てている。準備万端だ。


 ドキドキワクワクムラムラしながら、スマホで時刻を確認する。予定時刻まで、あと五分。縮まるはずもないのに、待ち遠しすぎて、先ほどから何度も何度も確認してしまっていた。


 そしてついに、予定時刻。


 時間になると同時に、Postter上にルームが作成された。もちろん、『みゃあ』さんのルームだ。


 反射神経のテストをしているかのごとく、即座に『みゃあ』さんのルームに参加。


 イヤホンから声が流れてきた。


『みなさん、聞こえていますかー?』


 昼間に聞いた、花咲さんの変声。色っぽいアルトボイスが鼓膜を震わせる。


『はじめまして、「みゃあ」です。声出しするの、ちょっと照れますね』


 くすぐったそうにそう言ってから、花咲さんが――いや、『みゃあ』さんが、本題に入った。


『初配信の今日は、みなさんのオナサポをしようと思います』


 一旦を挟んでから、『みゃあ』さんが囁く。


『わたしでいっぱいヌいてね❤』


 艶めかしさに鳥肌が立ち、脳がジーンと痺れた。


 期待と興奮で、爆発しそうなくらい心臓が暴れている。


『みゃあ』さんによるオナサポがはじまった。


『――固くなってるね、きみの。おっきくて、反り返ってて、それに、スッゴく熱い。わたしの手、火傷しちゃいそうだよ』


 どうやら『みゃあ』さんは、性行為の演技をすることでオナサポしようとしているらしい。すなわち、『みゃあ』さんとの擬似プレイだ。


 想像した途端、下腹部がカアッと熱くなり、俺の分身はあっという間にスタンバイを終えてしまった。


『ねえ? きみって、いつもわたしのおっぱい見てるよね? わたしのおっぱい大好きなんだ』


 イタズラげに『みゃあ』さんが言って、『じゃあさ?』と続ける。


『大好きなおっぱいで、おっきくなったきみの、挟んであげるね?』


 フラッシュバックする、花咲さんの胸の感触。


 あの極上の柔らかさに、俺のが挟まれるだって?


 もう、たまらなかった。


 息せき切って屹立きつりつを握り、花咲さんの胸で挟まれている光景をイメージしながら、しごきだす。


『ゴツゴツしてて、脈打ってる……んっ、きみのでおっぱい擦られて、わたしも気持ちよくなっちゃってるよ』


 演技しながら興奮しているのか、『みゃあ』さんの息遣いも荒くなっていた。


『あっ、いま、ビクってしたね。ふふっ、気持ちいいんだ?』


 屹立をしごく快感に、『みゃあ』さんの声から与えられる興奮がミックスされて、「うっ」とうめきが漏れる。


『オスの臭い、スッゴく濃いよぉ……わたしも、欲しくなってきちゃった』


『みゃあ』さんの声色が、甘えるようなものになる。


『わたしのあそこ、もうぐちょぐちょなの。きみのでかき回してほしくて、ヒクヒクしてるの』


 まぶたを閉じてイメージする。浮かび上がってきた花咲さんは、M字開脚して、女の子の大事な場所を露わにしていた。


『いいよね? れちゃうよ?』


『みゃあ』さんとの疑似プレイが、ついに本番行為に突入する。


『んっ、あはあぁぁ……っ❤ お、おっきぃ……わたしのあそこ、きみのでいっぱいだよぉ❤』


『みゃあ』さんの台詞に、男の尊厳が満たされる。甘く蕩けた声色に、征服欲が刺激される。


 俺のが、『みゃあ』さんの……花咲さんのなかに……っ!


 花咲さんと繋がっている想像をすると、頭が弾けるほどの昂ぶりを覚えた。夢中になって屹立をしごく。


『あっ! 奥に当たるぅ! わたしのなか、チュッチュされてる! きみのでマーキングされてるよぉ!』


『みゃあ』さんの演技が迫真のものになってきた。彼女もまた、擬似的な性交にのめり込んでいるのだろう。


『きみの、ビクビクしてるね? 限界なの? イキそうなの? わたしも、もう、イっちゃいそう……っ!』


 切なげな声で、『みゃあ』さんが懇願した。


『なかに出してぇ! わたしも……イ、イク……っ!』


「ぐぅ……っ」


『みゃあ』さんのイキ宣言につられるように、俺の快感が最高潮に達した。部屋を汚さないよう、ティッシュ箱に手を伸ばす。


 そのとき、スマホの画面が目に入った。


『みゃあ』さんのルームには、四桁近い同接数が表示されていた。それはすなわち、その数と同じだけの男が、『みゃあ』さんにオナサポされているということ。


 思い至った瞬間、沸騰するほどの興奮が、嘘みたいに醒めていった。


 もはやティッシュは必要ない。ティッシュ箱に伸ばした手が、所在なさげに留まっている。


 性的興奮は消えていた。代わりに胸中に漂うのは、たびたび俺をさいなんできた、あのモヤモヤだ。


 息だけが荒いまま、俺は歯噛みする。


「なんだっていうんだよ……くそっ」

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