懐かしさの再会

O.K

第1話:懐かしいぬいぐるみ

主人公のタカシは、ある日、仕事帰りにふらりとリサイクルショップに立ち寄った。色とりどりの商品が並ぶ店内を歩き回るうちに、棚の隅に置かれた古びたぬいぐるみが目に留まった。それは、少し色褪せているが、どこか懐かしい感じがした。タカシは思わず手に取り、そのぬいぐるみをじっと見つめた。


ぬいぐるみは、昔よく見かけたデザインで、手触りも柔らかく、どこか心を落ち着かせる感触があった。タカシはそれを手に取ってみると、思わず微笑みがこぼれた。「なんだか懐かしいなぁ」と心の中で呟く。どこで見たのかは思い出せないが、強い郷愁に駆られる感覚があった。


タカシはそのぬいぐるみを手に入れることに決め、レジに向かった。店員さんに会計を済ませると、袋に入れられたぬいぐるみを大事に抱えて店を出た。家に帰ると、早速袋から取り出し、ソファに座りながらじっくりと眺めた。ぬいぐるみを手に持っていると、ますます懐かしさが込み上げてくる。


翌日、ふとぬいぐるみの背中に目をやると、小さなタグが縫い付けられているのに気づいた。よく見ると、そこには手書きで「タカシ」と書かれていた。驚いたタカシは、まさかと思いつつもその名前に見覚えがあることに気づく。自分の名前が書かれたこのぬいぐるみが、なぜリサイクルショップにあったのか、不思議でたまらなかった。


タカシはそのぬいぐるみを持って、週末に実家を訪れた。久しぶりに帰った実家の雰囲気に心が和む中、母親にぬいぐるみを見せて「これ、見覚えある?」と尋ねた。母親はぬいぐるみをじっくり見て、驚いた表情を浮かべた。


「タカシ、これ、あなたが小さい頃に保育園でいつも遊んでいたぬいぐるみじゃないの?」と母親が言った。その言葉にタカシは驚愕した。自分が幼い頃に大切にしていたぬいぐるみが、なぜかリサイクルショップに並んでいたとは夢にも思わなかった。


母親は続けて、「あなたが保育園を卒業する時に、このぬいぐるみを他の子供たちにも使ってもらおうと思って寄付したのよ」と話してくれた。その話を聞いたタカシは、幼い頃の記憶が鮮明に蘇ってくるのを感じた。保育園の遊び場で、このぬいぐるみを抱いて過ごした楽しい時間が次々と浮かんできた。


「そうだったんだ…」と感慨深げにタカシは呟いた。再び手元に戻ってきたこのぬいぐるみは、ただの懐かしさ以上に、自分の幼少期の思い出と結びついた大切な存在であることを実感した。


その日から、タカシはそのぬいぐるみを自分の部屋の特等席に置くようになった。毎日そのぬいぐるみを見るたびに、幼い頃の思い出が蘇り、心が温かくなるのを感じた。そして、そのぬいぐるみと共に、これからの新しい思い出も紡いでいこうと決意したのだった。

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