第15話 Side サフィー&カル 大事な大事な子ども達
side サフィー
私の子ども達はいつもどんな時もとーーっても可愛い!!
長女のエレアは赤ちゃんの頃はそれはもう大変だった。
泣いて暴れて、夜寝る暇もない。それでも娘の、エレアの顔を見れば疲れも眠気も吹き飛んじゃう!
夫のカルは料理も家事も出来て、私がエレアの相手で手が離せないときはいつもかわりにやってくれていた。....料理は私よりも上手かもしれない。悔しいけど。
まっまあ、そんな感じで助け合いながら子育ては上手くいっていたわ。
私が回復魔法を習得していたのもあって、怪我はすぐに対処できたし、病気も軽いものなら回復魔法で体力を維持することも出来て、元気にのびのびと育っていったわ。のびのびし過ぎたのかわがままな子になりそうだったけどね....
娘が可愛くて甘やかし過ぎたのかしらね?これからは少し厳しくしないといけないかも。
それから少し経って、カルとの間に二人目の子を授かり、無事に出産を終えた。
名前はアッシュ!
アッシュの髪色は、まるで私の白い髪と、カルの黒い髪を混ぜて出来たかのようなアッシュグレイ。
瞳の色は、私の真っ赤な瞳と、カルの深い青を混ぜ合わせたような紫色。
私たちのどちらとも違う色を持ち、でも私たちの色を持つこの子は、エレアには悪いのだけれどとても特別な子に見えてしまった。
だからと言って特別扱いをする気はない。それは私の信条に反する。
たとえどんな子だろうと、何があろうと私たちの子だから、平等に見て可愛がって怒って甘やかす。そう決めていたのだ。
だって私が感じた悲しさや寂しさをこの子たちに感じてほしくないから。
だが私は、赤ちゃんのことで頭がいっぱいになってしまって、エレアのことを疎かにしてしまっていた。
この時のことは今でもよく思い出しては後悔している。
ところが私たちの予想に反して、エレアは強くて優しい子だった。
赤ちゃんのアッシュと顔を合わせた時には立派なお姉ちゃんの顔をしていて、思わず泣きそうになってしまった。
....ただ....アッシュがエレアに返事をした時はびっくりしちゃったわ。私にはそんな返事まだしてくれてないのにって....
そのあと、すぐに私にも返事をしてくれてアッシュはとっても賢くて優しい子だと思ったわね!
そのあとからは私やカルが構ってあげられない時、エレアは広場の勉強会に積極的に参加して、時にはアッシュの相手をしてくれていたり、私たちの知らない間にすっかりお姉ちゃんで....子どもの成長は本当に早いわ。
アッシュが三歳になってからも驚くことばかりだったわね。
魔力に目覚めたと思ったら、初めての魔法をすんなりと発動させ、かつ大量の魔力を保有していて、さらには質まで良いと来た。将来はとんでもない大魔法使いになるかもしれないと思ったわよ。
しかもそれで終わらないのがアッシュなのよね。
何度か魔法を使えばすぐに習得して、挙句の果てには無詠唱までやってのけた。これには流石のエレアも唖然としてショックを受けていたわね。
私としては、どうフォローするか頭を悩ませたわ。杞憂に終わったけれど。
アッシュが魔法の使い方をそれはもう丁寧に解説してくれて、エレアも無詠唱での魔法の発動を成功させていた。ついでに私の魔法の効率も上がっていた。
アッシュは魔法の天才だわ!!!
ていうかうちの子たち、早熟過ぎない?賢過ぎて逆に心配になってしまう。
アッシュに至っては赤ちゃんの頃からほとんど手間のかからない子で、とても助かったと同時に赤ちゃんとして大丈夫なのかよく心配させられたわね。
そう言えば、あまり泣かないアッシュが一度だけ大泣きしたことがあったわね。
夜に声を出さずにずっと涙を流し続けていて、それに気づいたエレアも心配のあまり泣きながら私たちを起こしてきたのよね....そのあとは私とカルのベッドを繋げてみんなで一緒に横になって、少ししたらアッシュの涙も止まってエレアも泣き疲れて眠っちゃって、カルと二人で子どもたちを抱きしめて眠ったわ。
その翌朝、早くに目を覚ましたアッシュの大きな泣き声で目が覚めた。その時に聞いたあの子の泣き声に私はなぜか安堵を覚えていた。
自分でもよく分かっていない。でもアッシュが初めて本当の意味で泣いてくれたような気がして、泣き喚くアッシュをみんなで抱きしめてあやしながら、私も少しだけ泣いた。
きっと誰にもばれていないと思ったら、カルに涙を指で掬い取られたのよね。そんな気障なことをしながらカル自身も涙を流していたことは、気付かないふりをすることにしたわ。
泣き疲れてアッシュはまた寝てしまった。
すっかり目が冴えてしまった私は、アッシュのことをエレアとカルに任せて朝ご飯の支度をすることにした。ついでに目の腫れも取っておこうと思った。泣いた痕跡を残さないためではないわ。決して!
それから少ししてアッシュがリビングに出てきたとき、あの子ったら「もうだいじょうぶだよ」って言ったのよね。
思わず強く抱きしめてしまった。
でも仕方ないじゃない。あの瞬間に本当の家族になったようなそんな気がしたんだもの。
これまでも家族だったけれど、これからはもっと家族なのよ。
現に最近のアッシュはいたずらをすることが増えた。迷惑をかけてくるようになったのだ。それが、嬉しくて可愛くて、でもやってる内容が可愛くないのが玉に瑕ね。賢過ぎるわ!ご機嫌取りにあーんなんてずるよ!またしてもらいましょう!今度はエレアにもしてもらいましょうかね!
本当に素敵な家族に恵まれたわ!そろそろ三人目かしら?
side カル
僕の自慢の子ども達。あの子達には本当にいつも振り回されていて、でもそんな日々がとても楽しいと感じる。
妻のサフィーも子ども達のことになると途端に子どもっぽくなってしまって、そんなところも可愛いんだけどね?
にしても早いなあ....エレアが生まれてからもう七年、アッシュが生まれてから三年か....
僕は田畑の管理だったり、村周辺の間引きだったりで外に出ることが多かったから、あんまり子ども達の相手をしてあげられていなかったんだよね。
まあでも、僕が優先すべきは子育て中のサフィーのフォローだったからね。
赤ちゃんのお世話は想像以上に大変だった。
夜泣きやおしめを変えたり、授乳だったりそのあとのげっぷも大事、単純に泣いてるだけのこともあったなぁ。他にも離乳食を食べるようになったら、食べさせてあげなきゃだし、その際に服はいっぱい汚れるし、役割分担しないと僕らが倒れそうだった。
それを笑顔でこなすサフィーを見て、あぁ勝てないな、なんて思いつつ精一杯手助けしようと胸に誓ったよ。
でも大変だったと感じたのは、エレアの時だけだったんだよね。アッシュの時はこんなに楽だったかなってぐらい泣かない子で、ぐずらず、よく寝てよく食べて必要な時に泣く、思わずご近所さんに聞きに回ったよ、赤ちゃんの相手って大変でしたよね?って。
結果、アッシュが異様におとなしい子だということが分かった。
僕とサフィーの色を持つ子。何か特別な子かもしれないと思ったのだけど、サフィーは何があっても平等にうちの子だと言ったんだ。
サフィーの生い立ちを考えれば、アッシュに対して人一倍強い思いを抱いてもおかしくない。実家の貴族家では、その真っ白な髪と真っ赤な瞳で迫害されてきたのだから。
だから僕もエレアとアッシュを一家族として接するとサフィーと約束した。
それからしばらくして、元気いっぱいに甘えてきて少しわがままだったエレアが変わった。アッシュに会ってから、こう言っては何だけど、女の子らしくなったと言うか、活発ではあるのだけど柔らかく優しくなって....そう!思いやりが生まれたんだ!
弟という存在がそれほどまでに可愛かったのかな、アッシュとの仲も良いみたいで、今では、そんな二人を見守ることが最近の僕の楽しみだよ。
他に僕の楽しみといえば、剣の稽古かな?
エレアがかなり筋が良いんだよね!教え甲斐があるよ!最近では軽い打ち合いもしているね。どうやら、魔法の腕でアッシュに置いて行かれそうだから頑張っているのだとか。
アッシュの魔法の伸びはサフィーから見てもおかしいみたいだからね....
でもアッシュから教わった方法で最近、無詠唱での魔法の発動ができるようになったらしい。僕ですら出来ないことが出来るようになっていて苦笑いを隠せないよ。
今度の魔法の練習の時は僕も参加しようかな....?
そんなアッシュもどうやら万能ではないようで、剣を握り構えを取れる様にはなったけど、まだまだ力が足りていない。三歳だから仕方ないんだけれどね?
それでもまだまだ覚束ないアッシュの姿は、とても愛おしくて守ってあげたくなるんだ。
守りたい、か.....二人を出来る限り強くしてあげなければ。強さは無いよりも有った方が良い。
女の子ならなおさらだ。盗賊や悪党にさらわれてひどい扱いを受けるなんて話は枚挙に暇がない。
強ければ自分を守れる、自分の大切なものも守れる。弱くて悔やむことほど惨めなことはないんだ。
僕は冒険者になって最初に出来た仲間が、盗賊に殺された。それも殺しを楽しんでやる質の悪い盗賊だ。
仲間を人質に取られ、勝ち目がなくなった僕は、死に臆し命からがら逃げ帰った。
その日の夜、僕は僕を殴り続けた。強さを求めた。死に物狂いで鍛えて死んでは意味が無いと、自分の限界を責め続け鍛えた。
一年後、僕は復讐を成功させた。たった一年鍛えただけで、一人で倒せてしまうような奴らだった。
悔しかった。悔しくて!悔しくて!悔しくて!!悔しさで死にそうだった。
そんなことがあって疲れた僕は、各地を回る放浪の旅を続け、その道中で出会ったのがサフィーだった。
サフィーの実家とのサフィーを賭けた決闘では、僕が鍛え上げた力でもって相手を完膚なきまでに叩き潰した。強くなければ僕はサフィーと一緒になれなかった。
そんな人生を歩んできたからこそ僕はエレアとアッシュに力をつけてほしい。
ゆっくりとでも着実に魔法でも剣でも良い、槍でも弓でも良い、守るための力を身に着けてほしいんだ。
そして願わくば、子ども達自身の幸せを子ども達自身の手で見つけてほしい。
僕があげられるすべてをあげよう。
僕に出来るすべてをしよう。
だからどうか、僕の大好きな二人のこれからに幸多からんことを。
....!?何か今寒気がした?股間のあたりがひゅっとしたような....?
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