第42話 赦されなくても
魔法使いが異空間に創った森にて。
「もし僕が強引に
無言でお姫様抱っこしている瑠衣を見下ろしていた
「もう、僕の料理を食べたくないくらい。もう、僕と言葉を交わしたくないくらい。もう、僕を視界に入れたくないくらい。もう、僕の話題を耳に入れたくないくらい。僕の事、嫌いになる?」
「私は嫌だって言った。私が嫌がる事は、本気で嫌がる事は、禾音はしないって知ってるから。禾音が私の事を嫌いになっても。嫌いだったとしても。私は一生、禾音を嫌いにならない。あと。ずっと。引き延ばしにしてきたけど。ごめんなさい。私が十歳の時に倒れてから六年間ずっと連絡を取らないで。とても心配をかけたのに。自分の事だけしか、考えられなくて。ごめんなさい」
記憶喪失の禾音に言っても意味がない、記憶が戻った時に謝罪すればいい。
そう思ってきたけれど、意味がない事はない。
記憶がなくてもあっても、禾音は禾音だ。
謝りたいと思っていたのなら、謝るべきだった。
引き延ばしにすべきでなかった。
(赦さないって。言われるのが、きっと。怖かった。赦さないずっと嫌いだって言われるのが)
嫌いだ。
直接、面と向かって言われた事はない。
ただ、視線で、言葉で、態度で、雰囲気で、そう言われてこられた、ような気がしていた。
嫌いだおまえの事なんか嫌いだ。
そう、とても強い感情を籠めて。
「ごめんなさい。禾音」
赦されなくても、もっと早くに言うべきだった。
嫌いだと直接言われる事が怖くて口を噤むのではなく、言うべきだったのだ。
(2024.9.1)
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