第40話 笑止千万




 強くなりたかった。

 だから、

 口調を変えた。

 表情を変えた。

 体格を変えた。

 雰囲気を変えた。


 そう思っていたけれど。

 本当に、そうだったのだろうか。


 わからない。

 わからなくなってきた。


 違ったのではないか。

 本当は、こちらが、俺の本性ではなかったのか。

 凶暴で禍々しいこちらが。

 真実の本性を隠していたのではないか。

 ひた隠しにしていたのではないか。




 すべては、




 たった一人の少女の為に、己を自由自在に変化させる、固定しない、流れさせる。

 たった一人の少女が望むのならば、望むままに、己を変化させる。


 己がないと憐れむか。

 己がないと憤るか。

 己がないと嘲笑うか。


 笑止千万。


 たったの一人。

 生涯を懸けて愛すると決めた人が望む己になる。

 生涯を懸けて愛すると決めた人を守る己になる。




 その為ならば、何でも。

 やってやる。











(2024.8.14)



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