まだ息してる
サヨ
1日
自殺名所
なんでもない日の昼下がり。カーテンをゆらして風が部屋を通り抜ける。
検索にかければ真っ先にSOSダイヤルが現れる。そんなものに用はなくて画面をスクロールする。
見出しに見える自殺名所の名前。そして自殺をとめる団体の活動。
何度もどこかで見たような言葉を流していく。
名所なんて言葉を入れるからはじかれるのか。自殺に適した場所を探し出せるような検索ワードを次々と打ち込むが欲しいものは得られない。
自殺を止められるなんて冗談じゃない。生きたい人が人生や命を語るのを聞くのは不快だ。
飛び降りたら気持ちいいだろうな。なんて思ってもいい場所が見つからない。飛び降りて死に損ねて、そこを人に見つかって救われました、なんて最悪だ。
医療の発展が憎らしい。死に魅入られた人でさえ生に縛りつけ、死という解放を奪い取る。
飛び降りるなら人のいないところがいい。万が一即死しなくても、ダメージを受ければじわじわとでも死に迎える。
ただ、なかなかいい場所が見つからない。
情報過多な世界なくせに、人生に必要な情報は探せど探せど見つからない。
まだ見つからないから息をしている。
死んでないから生きている。
そんな日はいつまで続くのか。
スマートフォンを手から滑り落とす。
風がカーテンを揺らしていた。
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