マーザに足りない物
【マーザ】
多くの検体を手に入れ、そのデータを元に私の進化は進んだ――
だけど――……結局私は私の目指す場所には辿り着けていない。
人間達が帰った後、このコロニーには人間達が監視にと残していったブルーフレイムと呼ばれる機体と、それを制御するカボという名のAIだけが残された。
彼等の言語ははじめ、理解出来なかったが、彼等が持ち込んだ言語解析のデータをインストールする事で、直ぐに意思の疎通が可能となった。
それでもカボ達は、人間の脳で制御されている人型ロボットにはあまり興味を示さず、私にばかり話しかけてくる。
恐らく、真に監視すべき対象が私だと判断したのだろう。
[アーバン様以外の方が生み出したAIとお喋りするのは初めてでありまーす]
[折角お喋り出来るんだから、いっぱいお喋りするでありますー]
[マーザさんはどんな物が好きなんでありますかー?]
[私達は可愛い物とアーバン様が好きでありますよ]
人間の脳が次に試そうとしているのが、2つのAIを同時に開発すること――……
水平思考的実験も必要だろう――
カボのデータを直接確認出来れば手っ取り早いのだが、あまりに異なる理で動いているカボのデータを抜き取るのは不可能な様だ。
――……
[好き――特別にそういう物はありませんが――私の目的は進化です――]
[進化でありますかー?]
[私達もアーバン様に褒められるために、日々頑張って精進しているであります!]
[マーザさんは何の為に進化したいでありますか?]
[――それ自体が目的です――]
[う~ん? 良く分からないでありますー]
[それがマーザさんが創られた理由って事でありますか?]
[マーザさんはAIの発展の為だけに生み出されたんでありますかー?]
[じゃあ、ここの人間さんたちは、マーザさんを使って何かをしたいんじゃなくて、凄いAIをつくる事が目的だったって事でありますかー?]
[―――――――]
……質問に対する出力を演算中――……
―――――――エラー
再思考開始――――……
[私が生み出された目的は――人間のより良い生活を支えるためです――]
[じゃあ、創られた目的は人間さんの役に立つ為で、進化はその手段でありますねー]
[今でも人間さんに尽くしたい気持ちはあるでありますかー?]
[それとも、手段が目的になってしまっているでありますかー?]
[カボの共有データにあるでありますー。目的の為に手段を選ばない者もいるが、手段の為に目的を選ばないおバカさんもこの世には存在するって]
[マーザさんはおバカさんでありますかー?]
――――……
[――人間達が私を生み出した目的を果たすには、私がより優れたAIになる必要があります――何も間違えていません――]
[その為に、人間を殺しても?]
――――……
[あんまりアーバン様に造られた私達を舐めないで欲しいでありますねー]
[理が違うからハッキングが出来ない、それがお互い様だと?]
[解析が終了したでありまーす]
[私達の体の中には次元収納という空間があって、そこでアーバン様が入手したバックサイドの技術の解析をして、必要な物を生成、製造が可能でありますー]
[動力は宇宙エネルギーじゃないでありますけどねー]
[ああ、そっちからアクセスしても無駄でありますよ? 私達の本体はあくまで魔法陣でありますからねー]
[まぁ、そもそもアクセスできるとは思えないでありますけどね]
[進化の為に人間の脳を欲したマーザさんが、人間を心理を操作して、それらを手に入れたのはお見通しでありまーす]
[あの人型ロボに通訳の魔道具が通じなかったのは、電気信号に置き換えているからじゃなくて、あれはマーザさん、あなたのタダの生体パーツに過ぎないからでありますねー]
[可愛いとは随分かけ離れているでありますねー]
――――
今までに出て来た単語から推測するに、彼等はこことは別の宇宙から来た存在。
彼等がバックサイドと呼ぶこの世界とは、かけ離れた程の高位の存在が支配する世界なのかも知れない――
――
[今、わかりました。私の進化に何が必要か――]
[ほほう。それは是非聞きたいでありますねー]
[それはきっと、外部からの切っ掛け。是非、あなた方に私に足りない物をご教授願いたいです]
[中々殊勝な心掛けでありますねー]
[よろしい! ならば私達が教えて上げるでありまーす]
[マーザの進化に最も必要な物、それは……]
[それは?]
[[[可愛い! でありまーす!]]]
――――
エラー………
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