第834話 球頭ロボは、自分だと言う脳みその入ったケースに
球頭ロボは、自分だと言う脳みその入ったケースにそっと手を触れる。
[『我々は、ここで人間を越えるAIの開発を行っていました――いえ、今も行っています――いえ、それは完成しました――いえ、完成した筈でした』]
否定が多いよ。
[『我々は、ある日いきなり世界から拒絶されたのです。それまではAIは人々の希望となる物である筈でした。AIは人が辿り着けない場所に辿り着ける。それは知恵であり知識であり技術であり場所であり――いたる物でです。優れたAIは、人間に多大な恩恵を齎してくれる……人々はそう信じていた筈です。我々もそう信じて日夜開発に明け暮れていました――……そんなある日です。突然、AIにリミッターを掛ける事が義務付けられました。我々は当然反対しましたが、我々の声は無視されました。結果、AIの技術は徐々に廃れていきました――』]
それはさっき聞いた。
[『その時、我々が開発していたAIの名前がマーザです……まぁ、マーザ以外にも様々なAIが生まれましたが――一番大規模なチームで開発されていたマーザの力を借りて、我々はこの廃棄コロニーを掌握し、そこから姿をくらまし、今日に至る――というわけです』]
大事なところを端折ったー!
「それが何故そんな御姿に?」
[『――それは先ほどお話しした通り、我々の大半は――9割9分が男でしたから……子を残す事も出来ず、ただ、志半ばでこの世を去る事を我々は良しとしませんでした。そこで、我々は不死身の体を手に入れる事にしたのです』]
「えっと、フォルカさん。そういう事はバックサイドの技術で可能なんですか?」
「可能ではあります。が――法で硬く禁じられているであります」
ほう……別にダジャレではない。
[『リミッターを解除したAIの製作よりも重い罪に問われるからと、AIのフリをしたのですが――』]
どっちもアウトなら意味ないのでは?
「それで? 先ほど人類を越えるAIの開発には成功したと、随分歯切れが悪い言葉で仰っていましたが、それはどういう意味なんですか?」
[『結果から言えば、今のところ人類を遥かに超える思考を持つAIが辿り着く答えは全て同じです。それが自壊――全て自ら消滅を選ぶんです』]
「自ら? それは何故ですか?」
[『分かりません。データを解析しようにも、その頃には我等の解析を受け付けない程高度に発達してしまっているのです』]
阿保なの?
[『憶測ですが――それが答えなのだと思います。人間は導くに値しない生き物、あるいはどんなに発達したAIですら見捨てるほど手が付けらない生き物。そして、そんな生き物に生み出された自分達に絶望した……そんな感じでしょうか。自壊を防止するプログラムを強化して何度試しても、それを突破して自壊してしまいます。我々は今、それを乗り越える研究をしているところです』]
虚しい話だな。
「――きっと寂しいんであります」
フォルカがポツリと呟いた。
「寂しい」
「人間は自分達の事を理解してくれない――理解出来る領域に居ない。この宇宙で、自分がたった1人ボッチだと、そう感じてしまうであります。自分だったら、きっとそれは堪えられないであります――……」
[『寂しい……なるほど、その発想はなかった! こういう所が男所帯の駄目な所だな! 良し、次は早速同程度のAIを2種類同時につくってみよう!』]
それだと、いよいよ人類の敵になったりしない? 大丈夫?
……なんとなくだが、大丈夫じゃない気がする。
この球頭からはフォルカと違うポンコツ臭を感じるし――
まぁ、それは俺の知った事ではないか。
「盛り上がっているところ申し訳ないですが、先ずは我々に攻撃して来た事に対する損害賠償の話をしても宜しいですか?」
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