先行調査隊の選択
【ザハーディ=フォダト】
本物の日光を浴び、美味い――美味すぎる本物の肉を食べ、スムージーという飲み物で喉を潤す……まさかこんな日が来るとは……私達は今、各星団の最高権力者達でさえ経験出来ない程の、最高の贅沢をしている……その自覚がある。
「艦長、今更ですけど、この星周辺の調査、真面目にしなくて良いんですか? 聞いた話では、移住の条件として、一度向こうに戻って、彼等の存在と彼等からのメッセージを届けなければならないんですよね? そん時に碌に周辺調査をしていなかったことがバレれば酷い叱責が待っているのでは?」
声を掛けて来たのは、私と同じ様に甲板で日光浴をしていたアーラ=カンドロスである。
彼女は下着姿であり、手にはスムージーの入ったグラスを持っている。
「……流石に下着姿ははしたなさすぎないか? 見ろ、男性陣が遠目から盗み見てるぞ?」
「思春期のガキですかね、あいつ等。折角の太陽光ですからね、全裸じゃないだけマシでしょう? 艦長も目の保養になって良かったですね」
「はいはい、そうだな……で、この星の周辺調査だったか――そんな事をするつもりはないな。アイツ等にこの世界の情報を渡す利点などない。本来なら、この星の事も、この星の住人の事も、伝えない方が良いだろうと言うのが俺の考えだ。とはいえ、それが我々が移住する為の条件だと言うのなら従うがな」
「それにしても、本当なんですかね。天才達が豊富な資金と資源を使って、それでも一定のポイントにワープさせるのに数百年掛かったのに――それを僅か数十日で完成させるなんて。しかも、あっちのゲートより遥かに優れた性能のヤツですよ?」
「本当なんだろうさ。それを証明する為に、彼等は態々、我々の本来の帰還予定日の翌日に、自分達側から送り出すという方法を提示して来たんだ。これは、俺達にも、あちらの世界のお偉方全員にも、自分達がそれだけの技術力を持った存在なのだという事をアピールする為の物だろう」
「……それで彼等が諦めますかね」
「今回の我々の報告には、この星の映像が含まれているんだぞ? 諦める訳がない。それに、持ち帰る戦闘データだけを見れば、勝てそうに見えるだろうからな、益々諦める理由がない――」
「……本格的な戦争になったら、どちらが勝つとお考えですか?」
「さてな……見せつけられたME――いや、この星では搭乗型ゴーレムだったか……兵器の性能なら、間違いなく搭乗型ゴーレムの方が圧倒的に優れているが、やはり数がな……各艦の情報を合わせてみたが、この星の総人口は10億から15億程度と推測されるらしい。あまりに少なすぎる」
「あの金色のゴーレムと、そのパイロットと同程度の戦力が、仮に1億居たとしても、永遠に戦い続けられるわけでもない――睡眠も食事も必要だし、弾薬や燃料の補給も必要でしょうからね」
「いや、解析が進んでいるが、どうやらそのどちらも必要ないらしい。あのロボット達は、人間の持つ不思議なエネルギー……つまり魔法で動かしているとか」
「……意味がわかりませんね」
「あちらから言わせると、フォストライドの方が余程意味が分からんのだろうさ」
「そうかも知れませんね……戻った際に艦を降りる者の数は?」
「今のところうちからは10人だ。全員あちらに家族がいる。彼等にはMEで艦から降りてもらうつもりだ」
「……家族が居る人間をこの任務に宛がう上の考えに反吐が出ますね」
「そうだな。仮に彼等が元通りの仕事に就く事が出来たとして……また同じような任務をさせられる事になるだろうな。というか、一度生きて帰った実績を代われ、次回の派遣に組み込まれる可能性が高いな」
「それでも、その者達は、元の世界で艦から降りる事を選んだんですね……何とかなりませんか?」
「なんとか? それは俺に彼等を説得しろと言っているのか? 無理だろ。俺如きに説得されたぐらいで決意が揺らぐようなら、最初から家族を見捨ててるさ――」
「そうですね……はぁ……いっそ、この世界の人間に頼んでみますか? 不思議な魔法でパパっとあちらに居る彼等の家族を連れて来てくれるかも知れませんよ?」
「ははは! それは確かに魔法だな! そんな事が出来るなら、トップの暗殺だっていとも容易いだろうな……諦めろ……それが彼等の選んだ道だ……」
「……そうですね」
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「良い物を見せてくれたお礼に、それぐらいのサービスはしてあげようかな」
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