第757話 さて、ティクロンとやらの事は大まかには聞いたので、
さて、ティクロンとやらの事は大まかには聞いたので、早速動かしてみたい。
「これ、俺でも操縦できます?」
「自分が生体認証でロックを解除するであります! 一緒に乗るであります! 操縦の仕方をレクチャーするであります!」
至れり尽くせりである。
と言う事で、俺はフォルカと一緒にティクロンへと乗り込む。
ティクロンへの搭乗の仕方だが、くるぶし辺りにあるタッチパネルに触れると、光土台みたいなのが現れてそれに乗るとコックピットまで運び上げてくれる様だ。
コックピットは割と狭い。
ここに成人2人はちとキツイな。
そう思っていると、先にフォルカが乗り込んだ。
そして、股を開くと、そこを手でポンポンと叩く。
「ここにお座り下さいであります! 少々狭いのは我慢して欲しいであります!」
俺は黙ってその指示に従う。
うむ。これは中々の座り心地だ。
特に背もたれが良い。ふかふかである。
「この体制で操縦出来ますか?」
「任せるであります! ティクロンなら目を瞑ってたって操縦できるであります!」
それは止めて欲しい。
フォルカが何やら操作すると、コックピットのハッチが閉まり、コックピット内の計器が動き始める。
コックピット内には数多くの計器と、両手に1つずつのレバー。レバーには先端に1つと腹の部分に4つのボタンが付いている。
良いね良いね! 如何にもコックピットだね!
俺が興奮していると、フォルカが後ろか俺の喉元に手を伸ばして来た。
そして、パイロットスーツの手の甲からブン――と、ビームダガーとでもいうべき形状のピンク色の刃が生まれる。
「……騒ぐな――抵抗もするな。お前を人質にしてここから脱出する。この空間から出る方法を教えろ」
フォルカの声が一段低くなる。
~であります! という語尾もなくなってしまった。
アレちょっと可愛かったのに。
「それで? どこに向かうんですか? 貴方が乗って来た戦艦も、なんちゃら星団の戦艦と思われる他の2隻も撃墜されちゃってますけど?」
「……別の調査隊に合流する。お前は黙ってここから私の質問にだけ答えろ」
ビームダガーが俺の喉にぐっと近づけられる。
ちなみに、彼女には事前にアイアンメイデンでステータスをチェックさせてもらったが、生身でのレベルは3だった。
まぁこれは、MPとIMG値が共に0だったから、という事もあるだろう。
それを差し引けば、レベル5か6ぐらいにはなった筈だ。
仮にそんな人間を殺傷する為の武器だと考えると、このビームダガーで俺が殺せるとは思えない。
が、念のために神衣魔法を発動しておこう。
ちなみに、神衣魔法は改良して、背後に紋章が浮かび上がらない様にしてある。
……この改良、実はあんまり人気がない。紋章は有った方が格好良いというのが、多くの者の共通認識らしい。
「別の調査隊に? 多分受け入れては貰えないと思いますよ? あの時戦闘を選んだ6隻は沈んで、対話を選んだ5隻が残ったんですよ? 今更戦闘を選んだ者の生き残りなんて受け入れたら、折角スムーズに進んでいる話し合いの邪魔にしかならないでしょう」
「……それでも、可能性はゼロじゃない」
「う~ん、説得が面倒臭くなってきまして。俺が人質にならない事を証明しますよ。その武器で俺の事を刺すなり斬るなりしてみて下さい」
「……は?」
俺はポスリと中々クッション性の良い背もたれに背中を預け、だらりと力を抜く。
「抵抗なんてしませんから、ささ、サクッとやっちゃってみて下さい」
「お前――私がお前に危害を加えられない腰抜けだとでも思っているのか? 甘く見るなよ。私は正規のパイロットだぞ。既にこの手で何人もの命を奪ってきているんだ」
「いや、そういうんじゃないんですけど……というか、俺を殺す気で攻撃する気だったんですか? 死んじゃったら人質にならないと思いますけど? 太ももとか腕とか、傷ついても致命傷にならない場所を試しに攻撃してみてください」
「い、意味が分からない」
「攻撃したら分かると思いますよ? そちらも、自分の言動がハッタリやただの脅しじゃない事を証明出来ますし、ウィンウィンでしょう?」
「どこがだ……良いだろう、そんなに言うならお望みどおりにしてやる!」
フォルカが腕を振り上げ、俺の太もも目掛けてビームダガーを振り下ろす。
しかし、そのビームダガーは俺の太ももに当たる前にピタリと止まった。
フォルカの手はプルプルと小刻みに震えている。
……なんか、思っていた展開と違うんだけど?
こちらとしては、ほ~らノーダメージ。攻撃するだけ無駄だよ~、それじゃ人質にはならないねぇ~って言うつもりだったんだけど?
「どうしました?」
「――う、煩い!」
フォルカはもう一度腕を振り上げるが、今度は振り下ろす事すら出来ずに、振り上げたままだ――そして、その腕はやっぱりプルプルと震えている。
……何これ?
「わ、私は……腰抜けなんかじゃない……」
ビームダガーの刀身が消え、フォルカは振り上げた腕をそっと降ろすと、俺の背中に頭をトンとぶつけた。
そして、呻くように静かに泣き出してしまった。
……だ、誰か助けてぇー!!
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