閑話 最年少留学生

【最年少留学生の男性】


 重心を低くしてバランスを取りやすくする。

 腕は長くしてリーチを稼ぐ。

 足は4脚にすればもっとバランスが良いかな?

 頭部は……要らないか。

 胴体は円柱状にして、無駄な凹凸をなくせば視界が確保しやすい。

 それに、これなら後ろから敵が来た時も、乗り手が後ろを向けば一瞬でゴーレムの前後が入れ替わる。

 ああ、でもそれだと手の関節が逆になって戦えないか。

 手も4本付けよう。実際に使う腕は2本ずつで、乗り手が後ろに向いた時に腕が切り替わるようにすればよいな。

 う~ん、しかしそうすると、対応する魔法陣が難しくなりすぎるかな……後でオリビエ先生にアドバイスを貰いに行こう。


 僕は、搭乗型ゴーレムでリ・マグに大敗を喫してから、更に強いゴーレムのデザインを考える事に没頭している。


 とはいえ、ボクのデザインしたゴーレムが、リ・マグのデザインしたゴーレムより劣っていたとは思っていない。

 あれはどうみても乗り手としての技量で圧倒されただけだった。

 いや、それはそれで悔しいんだけど……


 だが、今度は乗り手の技量を覆せる程優れたデザインのゴーレムを考えてやる!


 そう思って色々描いてみている所だ。


 ……でも、4本腕って、なんかリ・マグのデザインをパクったみたいで嫌だな……

 あっちは全部の腕を前面に配置して、4本同時に動かしていたから目的が随分違うけど……


 まぁ良いや。強ければそれが正義だ。


 出来れば武器もリーチが欲しいけど……槍?

 ……うん、槍は悪くないな。

 盾は……円柱状のボディの周りに鉄板を張り付ければ防御はそれである程度補えるか? それよりも魔法銃が欠かせないから、左手には魔法銃を……待てよ?

 頭部の代わりに円柱状の胴体の上に魔法銃を設置すれば良いんじゃないか?

 

 ……イケる気がする。

 360度回転するようにすれば、向きに関係なく使える……問題は高低差に弱い事かな。

 一応、上下にも動かせるようにした方が良いか。操作が難しくなるかな……ゴーレムの操作とは別に、魔法銃を操作する為の魔道具を操縦席に設ける必要があるかな。


 ……よし、デザイン画完成!

 むふふ、我ながら中々良いじゃないか!

 もし、2回目の搭乗型ゴーレムに乗る授業があったら、アーバン先生に今度はこちらのゴーレムを造ってもらおう。

 これなら乗り手がリ・マグだったって負けはしないぞ!


 そうだ、さっそくアーバン先生の所に提出しに行こう。

 オリビエ先生のところに魔法陣の相談をしに行くのはその後かな。




「アーバン先生! 新しいデザイン画を描いてみました! もしまた我々のデザイン画を元にした搭乗型ゴーレムを使った授業を行う予定がおありでしたら、その時は僕のゴーレムはこのデザイン画の物にして下さい!」


「おお! やる気があっていいですね。それでは拝見させて頂きますね……」


 アーバン先生はにこやかな表情で僕からデザイン画を受け取った。


「………………う、う~ん……細部がメカニカルならこれで十分ダサカッコイイになるんだけど……どう見てもトイレットペーパーの芯にボールと箱をくっつけただけの図画工作……いや、でもやる気は感じるし……これでマイナスポイントは可哀想か……」


 アーバン先生は、俺に聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で、なにやらぶつぶつと言っている。

 その表情は険しい……一体どこが駄目だったのだろうか?


「先生?」


「あ、ああ……わかりました。今のところあの授業の2回目は予定していませんが、その時にはこのデザインで造ったゴーレムをご用意させて頂きますよ」


「ありがとうございます! その時は絶対に全勝して、結果を残してみせます!」


「ええ、頑張ってくださいね。ところで1つお聞きしたいのですが、貴方的にこのデザインを格好良いと思ってデザインしていますか?」


「え? う~ん、そうですね。負ける事が何より格好悪いと思いますから、勝てたら格好良いのではないでしょうか?」


「そうですか………………そうじゃないんだよなぁ……」


「何か?」


「ああ、いえ。なんでもありません」


「そうですか」


 その時、たまたまオリビエ先生が偶々通りかかった。


「それでは、僕はこれで――オリビエ先生、ちょっとご質問が――」


 アーバン先生に一礼し、僕はオリビエ先生の下へと駆け寄った。


「……………やっぱマイナス1ポイント………」


 最後に、アーバン先生が何か呟いた気がした。

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