第604話 【月光の塔】で出会った通り魔について、

 「黒髪ロングポニーテールの、水着姿で刀を振り回す女神?」


 【月光の塔】で出会った通り魔について、さっそくホープに心当たりを尋ねてみた。


「いやぁ……ちょっとボクの知っている神の中に、そんな危ない神は――沢山いるけど、条件に当てはまる神は知らないかなぁ」


 おや?

 ホープは通り魔女性を知らないらしい。

 という事は、彼女は神ではなく、天力を持った人間という事だろうか?


「まぁ、ボクの知らない神なんて沢山いるよ。神様ってわりとうじゃうじゃ居るから」


 うじゃうじゃ……いやな表現である。


「ただ、アーバン達にちょっかいを出してる、チョコの本来の飼い主である女神の知り合いって考えると、ボクの知ってる範囲内だと思うんだけど……やっぱり知らないかなぁ。一応、ヘブロムやヤクト、それから……服飾神の呼名は決めてないんだっけ? それとも服ちゃん? まぁなんにしろ、その3人にも聞いてみる事をおすすめするよ」


「わかりました、そうしてみますね。ところで……それは何を」


 俺はホープの下を指さした。

 ……なんか、ネバンがホープの下敷きにされている。


「虐待じゃないよ? ネバンが自分も馬をやりたいって言うから、変わってあげたんだ。体重をかけないように気を使っているから安心して」


「はぁ……そうですか」


 ……ネバンが変な性癖に目覚めそうである。

 止めた方が良いかな?


 見守るメイド達もあわあわしているし――

 

 ただ、ネバン本人は至って真剣そうである。


「むぅー!! むぅー!!」


 変な声を上げながら、腕を押し、体を持ち上げようと必死である。


「……そろそろホープお姉ちゃんが下に戻る?」


「やっ!! むぅー!!」


 ……うん、頑張っているのに邪魔しちゃ悪いし、そっとしておこう。

 メイドさん達、ネバンが限界っぽかったら止めてね。


 という事で、こちらに止めて欲しそうなメイド達の視線を躱し、俺はヤクトの所へと向かった。



「……ポニーテールの水着の刀?」


 キモいよ。なんだその刀。


「多分知らないんだな。というか刀ってどんな武器なんだな?」


「刃の反った、片刃の剣ですね」


 俺はその辺にあった紙に、ちゃちゃっと日本刀のイラストを描いて見せる。


「……あぁ、その剣なら見た事あるんだな。剣神が好んでいたんだな。ただ、剣神は男だし、女のアバターを好むなんてキャラでもないんだな。というか、奴が女のアバターに入る姿を想像すると笑えるレベルなんだな。他にその剣を持っている神に心当たりはないんだな」


「そうですか。お忙しいところ、お時間を頂きありがとうございました」


「……我からも1つ質問があるんだな」


 俺が去ろうとすると、ヤクトに呼び止められた。


「何でしょうか?」


「女が喜びそうなプレゼントを教えて欲しいんだな」


 だ~か~ら~、人選! どいつもこいつも、相談する相手を選びなよ。 アーバンさんにそんなの分かるわけないだろ。


「それは、【踏まれたタンポポ】の2人に、という事ですか?」


「そうなんだな。ヌゼが言ってたんだな。妻には定期的にプレゼントを上げるべきだと。アーバンもそうしていると聞いたんだな」


 え? 俺?

 俺は別にコーネリアにプレゼントなんて……あぁ……してる気がする。


 黒曜丸とか、ケトゥエル(ゴーレム馬)とか、自作のプレゼント。

 後は、旅行先のお土産とか?


「女性が、で考えるより、【踏まれたタンポポ】の2人が何を欲しがっていそうかを考えて上げるのがよろしいかと――」


「なるほどなんだな。それで? あの2人は何を欲しがってるんだな?」


 知らん。

 自分で考えなさい。


「2人の事を良く見ていてあげて下さい。そうすれば、自ずと分かると思いますよ? プレゼントって、何を渡すかを考えている時間も大切だと思うんです」


 なんかそれっぽい事を言ってみる。

 誤魔化されろ!


「う~ん、奥が深いんだな。分かったんだな。そうしてみるんだな」


 よし、誤魔化された!


「それでは、私は服飾神様にも、例の刀の女性の事を聞いて参りますので、これで失礼しますね」


「うむ。ありがとなんだな!」


 ……意外に素直なんだよなぁ、ヤクト。

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