第598.3話

【アノーレ】


 最初の集落が見えて来た。

 情報によると、この場所には居るカボは10体という事らしい。


 アタイ達は息を潜めて、ゆっくりと集落へと潜入した。


「……ざっと見まわした感じ、普通の集落って感じだね」


 アタイは出来る限り小声で話す事を心掛ける。


『そうね……カボ達が手伝ったという割には、あまりに普通過ぎるわね』


 イブも声を抑えている様だ。


『とにかく探ろう。先ずはカボを見つけるぞ。それから尾行して様子見だ』


 ウルドの指示に、私は黙って頷いた……って、ウルドにはこっちが見えてないんだった。


「了解」



 カボは直ぐに見つけられた。

 太い木の枝に止まっている。

 その下には、カボを崇める様に、感謝の意を述べているエルフが2人。男女の様だ。


「カボ様。今日もこの集落は平穏でした」

「これも全てカボ様のお陰です」


[……いいえ。これも皆さんの努力の成果です]


「勿体なきお言葉」

「カボ様に感謝を――ネフィス家に感謝を――ついでにアーキセル王国にも感謝を――」


 エルフは花輪と、小さな木彫りのカボを置いて去って行った。


[……また花輪。可愛いですけど……枯れるし、ちょっと花が可哀想……エルフ達には枯れないし腐らないプレゼントをおねだりしましょう……]


 カボはそう言いつつ、器用に翼で花輪を自身の頭? に被せ、バサッと翼を広げると、どこかに飛び立っていった。


「……事前に聞いていた通り、住民には可愛い物をおねだりしてるだけ。別に変ったところはなかった、よね?」


『そう、だな……まぁ、まだ調査は始まったばかりだ。取りあえず、次のカボを探そう』


「そうだね」


 ウルドの提案通り、アタイ達は直ぐに次のカボを探す為に移動を開始した。




「今日一日見て回ったけど……少なくとも、この集落のカボ達は普通だったんじゃない?」


 夜。アタイ達は集落から少し離れた場所に拠点を設置した。

 ちなみに、この拠点にも透明化の魔道具が搭載されている。

 

 今はその拠点の中で話し合いの最中だ。


「……う~ん、いや、俺にはなんか違和感があったんだけどな。その違和感の正体が分からん」


「違和感? カボ達の行動は、1、エルフ達から賛辞を受ける。2、エルフ達から物品を受け取る。3、エルフ達がモンスターと戦う際に加勢する。4、塀や建物の破損個所の修繕……ぐらいだったわよね? 別に違和感なんてないと思うけれど――」


「……だよな? 悪い、俺の考え過ぎかもしれん。エファンは何か気になった事はあったか?」


「えっとね……この集落の修繕とかはもう終わってるのに、なんでアーバン様はカボ達をアーキセルに呼び戻さないんだろって、思った」


「ん? ……あぁ、確かに。まぁそれは、アーバン様に直接聞きゃ分かる事だ。そうじゃなくて、カボ達やエルフ達の言動で気になった事はないか?」


「ない……かなぁ」


「そうか。それじゃあ、明日は別の集落を調査しよう。今日は解散、って事で良いか?」


「アタイはそれで良いよ」

「異議なしよ」

「ふぁ……僕、もう眠いや……」


 初日の調査は、特に収穫がなく終わってしまった。

 

 ところで、アーバン様は、ちょくちょく拠点を改良やら増築やらなさる。アタイ達は今の拠点はバージョン7と呼んでいる。

 さて、この拠点には、当然の様に次元収納を利用しされており、中は広い。

 広くて、各々個室が容易されている。


 ……

 

「ねぇ、イブ。今日は一緒に寝て良い?」


「構わないけど……なに? アノーレ。もしかして急に1人で寝るのが寂しくなったの?」


「……なんか、さっきのキモイ虫とかがでそうで……」


「ここ……次元収納内よ?」


「そうなんだけど、ほら、入る時に知らない間に一緒に潜りこんで来たかも」


「はぁ……虫が怖いなんて、大した冒険者様ね」


「普段は平気なんだって。さっきのヤツがあまりに気持ち悪かったから……ちょっと――それに、その言葉はアーバン様にも当てはまるんじゃない?」


「アーバン様は冒険者ではないでしょ? あ、それは私達もね。撤回するは。大した私兵様ね」


「……いじわる」


「ふふ、ちょっと揶揄い過ぎたわね。良いわ。一緒に寝ましょ。久しぶりにエファンも一緒のベッドで寝る? ……流石にウルドは、駄目よね」


「僕ウルドお兄ちゃんと寝る~」


「だってよ。フラれたな」


「残念ね。それじゃ、お休みなさい」


「おう。お休み」


 ……エファンは、そろそろそういうのに興味が出てくる年頃だと思うんだけどな。

 姉的立場としてちょっと気になる。


 寝付くまで、イブとはその辺の話でもしようかな。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る