第578.1話
【カドゥレーン人のパイロット】
「これがムーゼン……レッサーHMGとは随分と違うな」
俺は初めて乗り込んだムーゼンの動作を確認する為、右手、左手、右脚、左脚をそれぞれ軽く動かしてみる。
動かす度に凄い衝撃が操縦席に伝わって来る。
……股間が痛いな。
なるほど確かに、これはレッサーHMGと比べると劣っていると思える。
レッサーと比べて劣っているとは、皮肉だな。
動く時の癖は大体わかった……出来れば照準のブレなんかも把握しておきたいが――
『それではこれより、ムーゼンによる模擬戦を始めたいと思います』
拡声の魔道具から広がる声がそれを許さない。
「ぶっつけ本番か……カドゥレーン人である俺にチャンスがあるだけでもありがたいが……俺にやれるか――」
やれるか――じゃない。やらないとな、カドゥレーン人である俺が乗り手を続けるには結果を出し続ける必要があるのだから。
最初の対戦相手である騎士が乗り込んだムーゼンが、ゆっくりと膝を地面から離し立ち上がる。
『カドゥレーン人、最初の俺で終わらせてやるよ』
ビームガトリングガンの銃口をこちらに向けるムーゼン。
そう、俺は一度でも負けるとそこで負けになる。
俺は9連勝しなければならない、それぐらい出来ない様なら、カドゥレーン人である俺を乗り手に選ぶ理由がない。
俺はムーゼンの盾を前面に構えた。
狭い視界が益々狭くなる。
『それでは――始め!!』
開始の合図と共に、相手の騎士はビームガトリングガンを連射して来た。
俺はそれを盾で受ける。
こちらもビームガトリングガンで反撃したいところだが……俺の魔力量はそう多くはない。出来るだけ温存して戦う必要がある。
俺は盾で無数に飛来するビームを受けながら、次の行動を考える。
『どうした? ただ守るだけか? それでは勝てんぞ!』
……良い盾だ。体に伝わる衝撃が、あのビーム一発一発がかなりの威力の魔法だと教えてくれる。それでも、盾を貫通する攻撃は1つもない。
それにしても、向こうの狙いがイマイチつかめない。
ただ闇雲にビームを打ち続けているだけの様に思える。
あれでは魔力を消耗するだけだ。
そんな馬鹿な戦い方をする騎士が居るとは思えないが――
相手の真意はどこにあるのだろうか?
『そらそらそら! このまま押し切らせてもらうぞ!』
……も、もしかして、本当に何も考えずにただビームガトリングガンを乱射しているだけなのか?
だとすれば――
俺はただ盾を構えたままじっと衝撃に耐え続けた。
そして、かなりの時間そうやって耐えていると、相手のムーゼンの動きが明らかに鈍くなり、ぶらりと腕を垂らして動かなくなった。
『…………』
先ほどまで意味もなく言葉を発していた騎士だが、今は静かだ。
……拡声の魔道具すら使えないほど魔力が枯渇したらしい。
『そこまで! 勝者、モリア!』
審判によって、俺の勝利が宣言された。
もし、全員この程度の人達なら9連勝も容易かもしれない。
「くそ! 卑怯だぞカドゥレーン人! 正々堂々戦え!」
ムーゼンから降ろされた騎士が、青い顔で冷汗を垂らしながらもそんな事を放ってきた。
……いや、こちらは正面から正々堂々と戦ったつもりだったのだが――
どうもアーキセル王国とカドゥレーンとでは正々堂々の意味が違うのかも知れない。
今度ケイト様にでも、アーキセルでの正々堂々の意味について聞いてみよう。
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