閑話 とある王宮魔道具師の話

【とある王宮魔道具師の男性】


 最近、私の――私達魔道具師の人生は充実している。


 魔道具師など貴族の恥と言われていた時代から、王宮魔道具師として働いていた私には、こんな時代が到来したことが未だに信じられないほどだ。


 そんな私の今の仕事は、搭乗型ゴーレム、ムーゼンの量産だ。

 搭乗型ゴーレムに興味を持てない魔道具師も多いようだが、とんでもない。

 我等が大恩人、アーバン=ネフィス様がゴーレムに情熱を掛けているのは明白。

 彼の後を追う我らが、どうしてゴーレムを軽視出来ようか。

 

 だから私は、搭乗型ゴーレムの量産に人員を割くと聞いた時、真っ先に立候補した。


 そして先日、先行量産型を10体ほど造り上げたのだが……

 その先行量産型ムーゼンの扱いについて、とんでもない事を聞かされた。


「ば、バカな! ムーゼンをカドゥレーンに派遣する?!」


「そうらしいです。やはり、属国如きに最初に投入するという案は入れられませんか?」


 そんな事はどうでも良い。

 問題は――


「ムーゼンにカドゥレーンに生息する強力なモンスター達を討伐出来るほどの力はない。パワー、スピード、稼働時間、全てが不足している。開発に携わった者がこんな事を言うのは良くないかもしれないが、アーバン様のお造りなるゴーレムとは違うのだ。直ぐに止めさせなければ――ゴーレムは壊れたらまた作れば良いが、搭乗する騎士達の命はそうはいかないのだぞ!」


「流石、真面目ですね。騎士達も他の貴族と同じ、長年我々魔道具師を馬鹿にして来た者達ではありませんか。そんな者達など、勝手に痛い目に遭えば良いとは思いませんか? どうせ蘇生薬があるのですし――」


「馬鹿を言え。蘇生薬は死後3時間以内にしか効果がないと聞く。それに、全滅すれば誰が蘇生薬を使うんだ。ムーゼン10体では戦闘に入れば1時間と持たずに全滅だぞ。一体どこの誰が考えた事だ?」


「第5王子殿下の発案だと伺っております」


 第5王子殿下? あの御方はもっと物事が見えていると思ったが……

 いや? 何か狙いがあるのか?

 騎士10人を潰しても構わないと思える何かが。


 あり得るな……

 あの御方に取って騎士の命は重くない。

 だが――


「私は第5王子殿下への面会を求めてみる。キミは――」


「その必要はないよ」


 突如聞こえた声に振り向けば、そこには話題の第5王子殿下が居られた。


 この御方は最近、頻繁に顔をお出しになる。


「魔道具師達はプライドが高いから、てっきり我々が造った搭乗型ゴーレムならばカドゥレーンのモンスター如き余裕で倒せます、なんて言うかと思ってたけど、私の予想は外れてしまったね」


「……お話しをお聞きになられてたようですが、改めて進言致します。ムーゼン10体でのカドゥレーンでの戦闘は無謀です。どうかお考え直し下さい」


「そうだね。それじゃあ、派遣までにムーゼンを強化し、少なくともカドゥレーンに出没するモンスターぐらいは倒せるようにして貰おうか」


「ムーゼンには、量産型として持たせられる性能の限界値を持たせています。特別なカスタマイズを施せば、まだ幾分は性能を上昇出来る余地はありますが、それでは先行量産する理由がありません」


「だから、量産出来る新しい武装を作ってくれ」


「……簡単に仰る。ただ、殿下がそう仰ると言う事は、何か当てがあるのですね?」


「そうだよ。それがこれだ」


 第5王子殿下が取りだしたのは次元収納だった。


「この中には王立学園の魔道具研究部の現役の部員が造った――正確にはキミ達の魔法銃を改造した新型の魔法銃が入っている。既にムーゼンでの試験運用を試したが、威力、連射速度、射程、魔力消費量、どれをとっても文句のない出来栄えだったよ。キミ達にはこれの量産を頼みたい。あと、特別な盾も完成予定だからそっちもね」


「学生が? ……魔道具研究部、アーバン様の古巣ですね。わかりました、直ぐに解析を開始いたいします」


「素直だね。学生如きが造った魔法銃が、王宮魔道具師であるキミ達の造った魔法銃を上回るって言われているんだよ? 怒ったりしないのかい?」


「アーバン様の古巣ならば、そういう事もあるでしょう。実際、同じ魔道具研究部出身のノーザン殿は我々の中では頭1つ――いや、2つ3つ抜けて優秀ですから。人格は置いておいて……」


「そうかもね。さて、キミは先ほど解析と言ったが、それは必要ないと思う。こちらにアーバン殿に書いて貰った説明書があるから、これを読んでくれ」


「やはり、アーバン様も関わっておられましたか」


「魔法銃を造ったのは間違いなく学生達だけの力だそうだよ。それと、この魔法銃ならば、王宮魔道具師達でも再現は難しくないと思うとも言われたね」


「では、そのご期待にお応えしなければなりませんね」


「そうしてくれ。そうだ、新しい魔法銃が完成したら是非感想を聞かせてくれ。その魔法銃を造った2人の生徒は、将来王宮魔道具師としてゴーレム開発に携わりたいと言ってくれているらしいからね」


「おや、でしたら我々もうかうかしていられませんね。これ以上後輩に馬鹿にされたくはありませんから」


「それじゃ、よろしく頼むよ」


「はい」



 最近、私の――私達王宮魔道具師の――いや、この国の全ての魔道具師の人生は充実している。


「ビームガトリングガンか……さて、やるか――皆、集まってくれ!」

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