第555話 さっちゃん協力の元で行われる、ネフィス家の人間に天力を芽生えさせる作業には、

 さっちゃん協力の元で行われる、ネフィス家の人間に天力を芽生えさせる作業には、さっちゃんの経過観察の意味も含め、毎回俺が立ち会っている。

 今日もちょうどその作業が終わったところだった。


「若様。王都の冒険者ギルドのギルドマスター、レガー殿より手紙が届いておりますが……ご確認なされますか?」


 そう確認を取ってきたのは、若い執事である。

 執事がこんな事を俺に確認してくるのは、実は結構レアケースだったりする。

 大抵の手紙は、俺が読む必要があるかないかを他の人間が精査し、俺が読む必要がないと判断された手紙は、俺の元に届く事はない。


「内容は?」


「それが……なんでも王都の冒険者の中に、ネフィス家の事を嗅ぎ回っている冒険者がいる、という内容です。それと、その者達とネフィス家になんらかの繋がりやいざこざがないか確認したいとの事です」


 そんな事を俺に聞かれても困るが……


「そのネフィス家の事を嗅ぎ回っている冒険者ってのは、どこの誰?」


「【踏まれたタンポポ】という女性2人組の若手の冒険者だそうです。デビューして僅か2年弱で【西のダンジョン】の第15階層を踏破したと、今話題の冒険者チームなのだとか」


「【踏まれたタンポポ】? 知らないなぁ~……」


 というか、何その名前。

 自虐的なのかな? でも花の名前を付けるぐらいには自分達を可愛いと思っているのかも知れないし、どっちだろうか?


「冒険者の事だし、ちょっとイブ達にも確認を取ってみるよ」


「それには及びません。実は、若様の御手を煩わせるのも忍びなかったので、事前にイブさん達に確認しております。彼女達の誰も【踏まれたタンポポ】という冒険者チームは聞いた事もない、との事です」


「まぁ、最近は冒険者ギルドに顔を出す機会も減ったしね。最近ぽっと出の冒険者チームなら知らなくて当然か。ヌゼ殿やニーナお義母様が知っている可能性は?」


「まずあり得ません。若様が当家にいらっしゃるまで、当家と冒険者ギルドにはほぼ何の繋がりもありませんでしたから――」


「そう。それじゃギルドマスターには当家としては心当たりなしって返事を書いてもらえる?」


「畏まりました」


 俺は手紙を受け取らず、執事はそのままこの場を去ろうとした。

 その時、執事の後ろから人影がひょっこりと現れた。


「アーバン様、少々宜しいでしょうか?」


 現れたのはイブである。

 執事は背後に急に現れたイブに対しても微塵も驚いた素振りを見せず、冷静なままである。


「何?」


「その【踏まれたタンポポ】なる冒険者チーム、このまま放置なさるのですか?」


「うん? そうだね。別にネフィス家の事を調べ回っている人間なんてわんさと居るでしょ? それら全てに対応してたらキリがないし、放置で良いんじゃない?」


 【西のダンジョン】15階層止まり程度の実力の者がたった2人で何が出来るわけでもないだろうし。


「しかし、新人が急に15階層まで行ける実力を身につけたという事実が気になります。もしかすると、ネフィス家の力の恩恵を不正に得ている可能性もあるかと。ここは調査するべきではないでしょうか?」


 2年弱って、新人かな?

 なんて、そんな事は今はどうでもいいか。


「調査って言われてもなぁ……」


「もし差し支えなければ、我々にお任せいただけませんか?」


「我々って、いつもの4人にって事?」


「はい。久しぶりに元冒険者という肩書が役に立つかと――」


「でもなぁ…」


「アーバン様が以前懸念されておられました、他の貴族からのちょっかいという事であれば、もう心配する必要はないかと――虹色の薬は王家を通して販売が開始されておりますし、その事で態々ネフィス家を敵に回す馬鹿な貴族も、もうこの国には少ないと思いますから」


 居ないじゃなくて、少ないってのが気になるんだけども。


「じゃあお願いしようかな」


 イブ達は仕事中毒なところがあるから、何かしら仕事を与えてあげてないと落ち着かないみたいだし。


「有難うございます!」


「悪いけど、さっき頼んだ返事の手紙に加筆をお願い。イブ達にその【踏まれたタンポポ】の事を調べて貰う事にした旨も書いておいて。手紙はイブ達に届けてもらうから、書き終わったらイブ達に渡しておいてね」


「畏まりました」


 執事は恭しく一礼すると、きびきびとした動きで仕事へと戻って行った。

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