第356話 第5王子にカボが盗んで来てしまった例の次元収納の魔道具を押し付けると、

 第5王子にカボが盗んで来てしまった例の次元収納の魔道具を押し付けると、第5王子はその一団の事を知っていると言い出した。


 「貿易の為にエカリテに向かった一団ですね。2種類のゴーレムを撃ち落としたと言うのは最近追加で組み込まれた護衛の貴族です。最近のエカリテの状況を鑑みて護衛を追加したようですが、まさかアーバン殿のゴーレムを撃墜出来るほどの実力者だとは思いませんでした。興味が湧いて色々調べてみたのですが、学園での剣術や魔法の成績は上の下でした。確かに光る物はあったが抜きんでているとまでは言えない、というのが当時の担任の教師の下した評価の様です。また、その彼を護衛にねじ込んだ者がいるようです。問題は彼らがカボと戦闘した場所が既定のルートから外れていた事です。これは国際問題に発展しかねない重要な問題です。彼らの目的はこちらで調べますので、報告をお待ちください」


 え~…次元収納を押し付ける前にスゲー調査が進んでる。

 多分サリー経由で先に情報が渡ったんだろうけど、どうやってこの短期間でそこまで調べたんだろこの人。

 こわぁ。


 まぁいいや。

 調査はその辺の話しはさして興味もないし、ノリノリな第5王子に任せよう。




 後日、俺はチラズと料理長が握ってくれた寿司を食べていた。

 コーネリアも誘ったのだが――


 「アーバン君、妊婦に生魚なんて食べさせないで!」


 と、サリーに止められてしまった。

 う~ん、魔道具で生成したドロップアイテムと、魔道具で生成した魚介類モンスターを捌いて貰った食材だから安全だと思うんだけどな。

 この世界の住人に魚の生食を広めるのは難しいようだ。

 ちなみにチラズは全然平気らしい、むしろ気に入ってくれたようだ。


 なお酢はこの世界の物を使っているが、流石に山葵は存在していないらしい。

 残念。


 「ところでアーバン義兄さん、第5王子から追加の調査報告が来ていますよ。なんでも貿易の為にエカリテを赴いていた一団がルートを外れた場所に居たのは欲を搔いたからという事でした」


 「どういう事?」


 「新しく雇った護衛が予想以上に優秀だったから普段はモンスターが怖くて近づけない森の中の集落とも取引が出来るのではないかと思ったそうです」


 「そう言うのってエカリテの許可が要るんじゃないの?」


 「当然必要です。ついでにアーキセル王国の許可も必要です。ですが、実際はそこまで国が管理できるものでもありません。バレるわけが無いと考えたのでしょう。実際アーバン義兄さんがたまたまゴーレムを飛ばさなければバレなかったと思います」


 「その護衛がその提案を受け入れたのが、ルートを外れる事になった最大の原因らしいです。なんでもダンジョンまで行くならそこまでの護衛は無料で引き受けるいうやり取りがあったそうです」


 …だから第5王子はどうやってそこまで調べたんだよ。怖いよ。


 「ダンジョンって?」


 「それは分かりません。今第5王子がエカリテ側に問い合わせている様ですが、返事は期待できないでしょうね。その護衛の貴族が何故エカリテのダンジョンの場所を知ってたのかも謎です。今ごろ当人は尋問されていると思います」


 「尋問ねぇ……」


 拷問じゃないといいけど。


 「それと、エカリテの森にモンスターが増えた原因ですが、これはカボたちが撮影した映像データを元にした推測らしいのですが、増えた、というよりも移動して来たのではないか?というのが今のところ最も線の濃い推測だそうです」


 「移動して来た?」


 「はい、元々人が住めないような、森の深い場所、その場所で確認できるモンスターが少ないように感じたそうです。といってもカボたちは基本的に集落を目的に移動していたので、その周辺の映像データが少なく、明確な事は何とも言えないらしいですが、もしかすると、森のそう言った場所に何らかの異常が発生して、モンスター達はそこから逃げて来たのでは?というのが専門家の見解らしいですよ」


 「ふ~ん……」


 「多分第5王子はそこの所調べて欲しいと思っていると思いますが、どうなさいますか?」


 「え~…興味ないなぁ」


 「では止めておきましょう」


 「良いの?」


 「何故僕に確認を?アーバン義兄さんの気が乗らないのならそれが全てでしょう。国から命令されたわけでもありませんし、ネフィス家にとってもグランシェルド家にとっても大したメリットはありませんから」


 「そんなもん?」


 「そんなもんですよ。あ、この蟹ってのが美味しいですね」


 「蟹の寿司…まぁ良いか」


 「そう言えば、最近可愛らしいボディを授けたカボたちは待機状態ですか?」


 「え?ああ、ペンギン型ゴーレムの事?待機ってかネフィス家の敷地内をぺちぺち

歩き回っているよ。どうやらメイドたちに可愛いと言われるのが目的みたいだ」


 「トンボ型、カメレオン型ゴーレムのカボから不満が出ているみたいですよ?」


 「ああ…そう言えば新しく可愛いボディを造ってあげるって約束したなぁ…」


 「造ってあげないんですか?」


 「う~ん、俺あんまり可愛い系は得意じゃないんだよなぁ…他のに合わせて飛べる系だとやっぱり鳥型?可愛い鳥ってどんなのがいるかな…ヒヨコ型?は飛べないか。あ、それはペンギンもそうだった。飛べるヒヨコにすれば良いだけか。後は日本では北海道でしか見られないシマエナガが人気だったっけ?」


 「ヒヨコは分かりますけど、すみません、アーバン義兄さんの話に時折出てくるニホンの話しは分からないです」


 「ちょっと待ってて…ええっと…紙とペン……」


 次元収納から取り出したそれらにササっとシマエナガの絵を描いてチラズに見せる。これはロボットっぽさとか一切ない普通のシマエナガの絵だ。当然ゴーレム化するならそれにロボ要素は盛り込む。


 「ああ、これは可愛いですね。カボたちだけじゃ無くてメイドたちにも人気が出るのでは?ただ、これだと逆にペンギン型ゴーレムのカボから苦情が来そうですね」


 「そう?俺はどちっちも同じくらいだと思うけど?」

 

 「同じくらいだとやはり問題では?ペンギン型ゴーレムはゴーレムの残骸を持って帰って来たご褒美でもあるのでしょう?」


 代わりに人様の次元収納の魔道具を盗んで来たけどね!


 「どうです、今トンボ型やカメレオン型ゴーレムを使っているカボにもう一度エカリテの森に行ってもらって調査をしてもらうのは。そのご褒美にそのシマナガエ型ゴーレムのボディをプレゼントするという形をとれば、ペンギン型ゴーレムのカボたちも納得するのでは?」


 結局調査させるんじゃないか。

 わざわざ理由付けなんてしなくても良いのに。

 チラズは多方面に気を遣っているようだ。


 「お寿司、好きなだけおかわりして良いからね」


 「え?あ、はい、いただきます」


 うんうん、たんとお食べ。


 それにしても、こんなに気を遣ってくるあたり、チラズから見ても俺って少し怖いのだろうか?

 俺を怖がっているのなんてヒルダぐらいだと思っていたのだが、ちょっぴりショックだ。


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シマエナガのデザイン案を頂きました。

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