閑話 第5王子と報告書
【第5王子】
ヌーボルトとハイベルト、2人の事も切り捨てる事も考慮していたが、どうもその必要は無さそうだ。むしろ報告を聞く限りハイベルトはアーバン先輩に気に入られたように思える。2人にはこのままHMGの操縦者としてこれからもアーバン先輩との繋がりを大切にして欲しい。
さて、その報告なのだけれど、そんなほのぼのした感情で目を通していられる代物では無いようだ。
街が生えた。
天候を操作する魔道具を開発した。
モンスターを寄せ付けない結界を街に張り巡らせている。
雨水を浄水する魔道具を開発した。
ダンジョンを攻略しボスを連れ出してペットにした。
ダンジョンの核を発見、それを引き抜いて街のエネルギー源にしている。
周囲の調査結果、目ぼしい物は発見出来ず。
これはどこからツッコむのが正解なんだろうか?
派手な羽を生やしたカボと呼ばれるゴーレムが、魔力を生み出す羽だとか消滅しない水を生成出来るようになった魔道具だとかを持ち込んで来た時もそれなりには驚きいたが、そんな事は霞んでしまうな。
なおその水だが、ムシュラという男に大量に飲ませてみたが、致死量は普通の水とほぼ変わらない様だ。
このムシュラは奴隷商で端金で買った成人男性だ。侯爵家の嫡男を貶めるような発言をした為に奴隷落ちした愚かな男だ。
そのムシュラを虹色の薬で復活させた後、毎日4リットル飲ませているが特に健康被害は見られない。味は美味しくは無いとの事。試しに回復薬(緑)を水1リットルに対し1本入れてみたところ、多少マシになったらしい。
先ずは居住区と呼ばれる場所の説明からざっと目を通していく。
やたらと詳しく書かれているが、これはアーバン先輩のところのメイドとカボと呼ばれる自律式ゴーレムが解説付きで丁寧に街の中を案内してくれたかららしい。
また報告書に添付するようにと映像を紙に印刷出来る魔道具まで貸してくれたらしく、写真付きだ。
縦長の建物は、何世帯もの平民が暮らす事を想定して建築した物らしい。
アーキセルではあまり見られないが集合住宅という考えだろう。
ただ問題は対象が平民だというのに、中には様々な魔道具が備え付けられているという点だ。トイレ、風呂、照明、冷蔵庫、コンロ、エアコン等々だ。最近漸く魔道トイレの販売に漕ぎ着けたばかりのアーキセルでは、貴族の家にだってない物ばかりだ。
集合住宅という点を鑑みなければ、そこらの貴族なんて目じゃない程快適な暮らしを送れることになる。
…流石に事が大きすぎる。私1人でどうこうして良い話しではないだろう。
もちろんアーバン先輩の意向に沿う形で。
居住区には娯楽施設なども充実しているらしい。
ボウリング場やらアイススケート場やら遊園地やら、私の知らない物ばかりだったので、そちらのチェックも必要だろう。
それと病院もあるそうで、カボが回復の魔道具で怪我の治療を無償で行ってくれるらしい。
…回復の魔法を魔道具化に成功した報告は受けていないよ、チラズ。
闘技場区画と呼ばれる場所では搭乗型ゴーレムの貸し出しを行って様々な競技を楽しむらしいが、正直こちらは想定の範囲内だ。
というか、三日月島にゴーレム闘技場を建設した話は聞いているし、アーバン先輩ならば真っ先に作りたがる物だろう。
セキュリティや貸し出す相手の条件など、チェックが必要な部分も多くはあるけれど。
最後に城だ。
まごう事無き城だ。
名はコーネリア城というらしい。
アーバン先輩にしてはロマンチックな名前の様にも思えるが、それはまぁ良い。
地方領主が城を建てるなんてよくある事だが、どうみても今私がいるアーキセルの王城より美しく立派な城だという事が些か問題だ。
第2王子も最近は大人しくなってきたし、俺に寄こせなんてもう言わないだろうけど。
え?このコーネリア城は人型に変形するゴーレム?
……そ、そうですか。
もういっそあの地をアーバン王国にしてしまって、アーキセル王国もカドゥレーンと同じく属国にしてもらえば全て解決……なんて馬鹿な事を考えてしまった。
いや、アーバン先輩にその気があれば本当にそれで解決するのだけれど、ね。
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