閑話 ノークエルトの考え
【ノークエルト=デュエラ】
このままここに居ても、俺の未来は暗いだろう。
先日のカドゥレーンとの戦いで無様を晒した俺の、それが現状だ。
そもそも搭乗型HMGも約束通りアーバンに返却されてしまった。
有事の際にはまた貸し出すのだろうが…カドゥレーンが属国になった今、その有事が起こりえる可能性は低いように思える。
俺は別にミニゴーレムで遊びたくて今の仕事を選んだわけでは無い。
国の為に戦うのならば、騎士として剣術や魔術に秀でているより、ゴーレムの操作に長けていた方が、よほど活躍できる時代が来ると確信を持ってゴーレムの訓練ばかりの日々を選んだのだ。
実際、カドゥレーンに勝てたのは9割…いや、全てゴーレムのお陰だと言っても過言ではないだろう。
だが現在、アーバンが騎士団に貸し与えているゴーレムは、装着型が50体、搭乗型が0体、つまり搭乗型のレンタルは無しだ。
聞いた話ではアーバンは先日、北西の海、魔海を越えて島を見つけ、現在はその帰路に有るという。
そうだ、アーバンの持つゴーレムと空を飛ぶ船を使えば、いとも容易く何百年もの間人類には越えられないと思えていた海をも簡単に渡れてしまうのだ。
ならば、ゴーレムはその様に運用すべきでは無いだろうか?
例えばカドゥレーンの国土の8割は現在も強力な魔物が闊歩する未開の地だ。国はそれをそのまま放置しようと考えているらしいし、一部の馬鹿な貴族はその土地をアーバンに押し付けようとしたらしいが…
俺から言わせればどちらも間違いだ。
搭乗型や装着型のゴーレム、それと空飛ぶ船を使い開拓を進めるべきでは無いのだろうか?
もちろんそれをアーバンに押し付けるのは違う。
カドゥレーンの時の様にまた正式に国がアーバンからゴーレムを借り受ける形を取るべきだろう。正当な対価を支払ってだ。
その時こそ俺は再び、今まで磨き続けて来たゴーレムの操作技術を生かせるのだ。
そう考えて第5王子に提案したが、第5王子は俺のその提案に難色を示した。
「……開拓はともかく、調査はしたい気持ちはあるよ?でも人員も予算も足りない。それに、アーバン殿の意向で防衛以外でのこれ以上のゴーレムの貸し出しは基本してもらえない事になっているから、難しいかな」
だそうだ。
確かに、現在アーキセル内で使われているゴーレムはネフィス家の物がシェア100パーセントだ。アーバンの機嫌を取るのは大事だろう。
しかし、アーバンとて商売の為にゴーレムを作っているのだ、実際にレンタルだってしている。
ならばそのアーバンの機嫌を損ねずに、尚且つ国の為に貸し出して貰えるようにアーバンを説得するのがお前の役目だろうに。
アーバンは対価として大金を手に入れ、国も利益を得る。お互いに得する筈なのに。お前はそのためにサリーと結婚したのではないのか。
アーバンの機嫌を損ねるのを恐れるあまり、そんな事すら出来ない様なら第5王子は俺が仕えるに値しない男だ。
第1王子も同じ意見だろう。
第3王子は……駄目だな。第3王子は第5王子に良いように使われているだけだ、第3王子を説得出来たところで第5王子の許可が下りない限り、結局は同じ結果だろう。
…では第2王子ならばどの様に考えるだろうか。
彼は以前少し無理をして王位継承権の順位を下げられてしまったが、未だに継承権自体はある。
それに、名誉挽回…いや、汚名返上の機会を狙っているとしたら、何かしらの手柄は欲しい筈。
今、ゴーレムを防衛以外にも使いたいと考えている貴族は沢山いる。
もし第2王子がその意志を示せば、その意見を推す貴族も多いのではないだろうか?
望みはそれほど大きくない。
だが、このままここで小さなゴーレムで訓練を続ける事にどれ程の意味があろうか?
再び搭乗型HMGに乗れる日が可能性も限りなくゼロに近いのに。
俺はこのままここで腐るのか?
…そんなのは俺のプライドが許さない。
俺は辞職し、親のコネで第2王子付きとなった。
第2王子は落ち目だから、それはそれほど難しい事では無かった。
後は第2王子を説得し、アーバンにゴーレムを貸し出して貰うよう交渉するように仕向けるだけだ。
「え?俺の代わりに平民のメイドが加入した?そのメイドにヌーボルトとハイベルトが負けた?はん!これで2人も俺と同じで無様を晒した事になるな。なに?その3人に搭乗型HMSが贈与されただと?!貸与では無く?!は、話が違うでは無いか!お、俺の分は?!当然無い、だと?そ、そんなぁ……」
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