第303話 帰路は特に何事も無く、平穏無事にネフィス家へと辿り着いた。

 帰路は特に何事も無く、平穏無事にネフィス家へと辿り着いた。


 楽しかったこちらと違って、あちらは色々とあったそうで、まずはこちらがダークエルフたちの紹介をした後、アーキセルとカドゥレーンの戦いの行方をチラズとメイドたちが頑張って編集してくれた動画を見ながら、ポップコーンをお供にチラズやサリーの解説で付きで鑑賞する。

 今回は三日月島に行っていた使用人全員で見るため、ネモフィスの映画館を使う。


 あまり長々と感想を述べても仕方ないので、それぞれ手短に済ませる事とする。


 まず初めに見たフルを含む装着型ゴーレムたちの戦いだが、なんか凄いガタイの良い、というか良過ぎるおっさんが2人暴れまわっていたのが印象的だったが、特に気になったのはそのぐらい。戦いは終始一方的だったし、それほど見応えは無かった。

 次の映像に移ろうとした時に、ヒルダが声を掛けて来た。


 「アーバン様、こちらフルがお預かりしていた魔石です。アーバン様の御恩情のお陰でフルも無事に帰還する事が出来ました。深く御礼申し上げます」


 …普通、付き合いが長くなれば長くなるほど親しくなる物だと思うのだが、ヒルダとの距離はむしろ学生の頃より随分と離れてしまった気がする。

 それはさておき、魔力10万の魔石が帰ってきたのは助かる。

 三日月島用のカボMシリーズを増やそう。作りたい物を作り過ぎて魔石が足りなかったのだ。


 「どういたしまして」


 「あ、そうだアーバン君」


 続いてサリーも声を掛けて来た。


 「何ですか?」


 「さっきの映像に映っていた大男の所有物の中に魔道具があってね、それがどうもゴブリンやジャガーノートを巨大化する魔道具に似ているみたいなんだよ。第5王子が解析を頼みたいって言ってたから1つ預かってそれ専用の次元収納に入れて保管しているけど、解析引き受ける?」


 「ええ、構いませんよ」


 「じゃあ後で渡すね。報酬の交渉とかは私がやっちゃって良い?」

 

 「お願いします」


 アレの人間版、ねぇ……ゴブリンやジャガーノート版は元に戻れないように作られていたが、人間版もそうなのだろうか?だとしたらよくそんな物を使う気になったものだ。


  

 次は搭乗型HMG3機の戦闘、なのだが、思ったより良かった。

 特にハイベルト君、キミは中々見どころがある。

 出来ればデルタ落とし穴(仮)を使用した時に、自分で付けた格好良い必殺技名を叫んでくれたら尚良かった。

 

 個人的にだが、クソみたいな態度を取り続け醜態を晒したが、ノークエルトも嫌いではない。と言うか変わった味のガム?みたいな?段々美味しく感じて来た、みたいな?

 傍から見ている分にはアレは個性に見える。

 まぁ、俺が他のHMGのパイロットなら身体強化ありの状態でぶん殴っているところだが。


 逆にヌーボルトは味が薄い。途中、移動中の会話も少し入っており、お?っと思うような発言もあったが、やっぱり薄味だった。これからの味変に期待しよう。


 ちょっと心配なのは、ラストの方でハイベルトが鼻血を流して、しんどそうにしていた機内カメラの映像が差し込まれていた。それも込みで格好良いが、どうもゴーレム2体同時操作はやはり相当のしんどいようだ。

 ゆっくり休むんやで。

 ちなみにだが、実は俺も2機以上のゴーレムを同時に操作する為のコソ練を続けている。

 何とか2機までなら自在に動かせるようになったが、3機になると全く同じ動きしか出来なくなる。


 「搭乗型HMGに関しては既に返還してもらってるよ」


 「修理も終わっています。アーバン義兄さんに教えてもらったゴーレム魔法があれば一瞬ですからね。今はカボたちが清掃してくれています、そちらももうすぐ終わりますよ」


 サリーの報告にチラズが付け加える。


 そうだった、搭乗型は王家や高位貴族が調子に乗らないように返品してもらう予定になってたんだった。

 ヌーボルトの今後に期待する機会が……


 う~ん、3人共そこそこ良い物を見せてくれたし、ジャガーノートを倒した報酬とか適当な理由で、3人の専用機にカスタマイズしてプレゼントしようかなぁ。


 「それと、アーバン君は興味ないかもだけど、ノークエルト=デュエラ殿は今回の事でゴーレム関係の仕事からは一切身を引くって宣言したらしいよ」


 ズコー!


 え~?カッコ悪すぎない?

 悪態ついて、醜態晒して、それで逃げ出したの?


 「何でもこのままゴーレムに関わり続けるのは自分のプライドが許さないとか、貴族としての責任がなんとか」


 逃げ出す方がプライドが許さなそうだが…

 がっかりだよノークエルト。

 せっかく君の苦みや臭みや雑味の良さが少し楽しめるようになりかけていたのに。

 そこは泥に塗れながらでも立ち上がって欲しかった。

 今からでも遅くない、帰っておいでノークエルト。


 「代わりに今はガステア殿のメイドが訓練に加わっているみたい」


 なぬ?ガステアも隅に置けませんな。

 しかし…


 「そのメイドって貴族ですか?」


 「まさか、ガステア殿はただの侯爵家の5男だよ?普通の平民の娘だよ」


 「へぇ~、ハイベルト殿とヌーボルト殿はそれを認めているんですか?」


 「それが、初日の訓練で、そのメイドの娘がその2人をコテンパンにのしてしまったみたいでね。認めざるを得ないというか、うん、まぁ認めているみたいだよ」


 忖度の出来ない娘さんなんだな。

 しかし、そうか、ノークエルトの代わりはメイドさんか、いいね。

 やっぱり帰ってこないでいいやノークエルト。

 お前の席もうないから。



 で、最後にメインディッシュ。

 第3王子とガステア神。


 今の第3王子とヨルレア、それとエボの組み合わせなら、ジャガーノートぐらい余裕だろうと思っていたら、こっちにもさっきと同じ様に大男が現れた。

 

 あ、ポップコーンのおかわり貰える?


 こっちの大男は若い、そして強い。

 出力強化の2段階目では勝てないと判断した第3王子は早々に3段階目の出力強化を使用した。

 そして戦いは第3王子の優勢で進み、そのまま、魔力切れになる前に王子が攻め切って王子の勝ちで決着かと思った時、大男が次元収納から何やら取りだして、それを口に含んだ。

 あ、巻き戻って大男の口元がズームになった。編集お疲れ様です!

 

 どうやら、なにやら液体の入ったをその瓶ごと頬張ったようだ。

 いや、瓶は捨てろよ。


 突如大男の体が、周りのジャガーノートよろしく赤みがかり湯気を噴き出す。


 途端、大男のスピードやパワーが見違えるほど格段に上昇した。

 あと顔がガンギマリで怖い。


 そこから第3王子は防戦一方だった。

 スクリーンから聞こえてくる王子とエボのやり取りに、一緒に見ていたメイド達が「頑張って下さい!」「負けないで!」「逃げてぇ!」と声を上げている。

 

 そして第3王子の『……助けてくれ…………』の言葉に、数人のメイドが涙を流し始めた。 

 ……劇場版第3王子、本気で視野に入れておこうかな。

 カメラの存在は既に第5王子には教えているし、後は第3王子本人に許可を取れれば、ネフィス家の外でも流せるはずだし……その辺も第5王子に任せようかな。


 そして、遅れて登場したガステア神が全ての美味しいところを持って行った。

 赤みがかった状態の大男を通常の出力強化状態で圧倒し、最後は最大出力で――


 「ラ、ラムアタックだーーー!!」


 あ、俺も声出しちゃった。


 実は、現段階ではトワイライトが最も威力を出せる攻撃が、この出力強化3段階目の体当たりだ。

 見たかった事もあり、マニュアルの片隅に小さく記載しておいたのだが、ガステアはちゃんと隅々まで読んでくれているらしい。

 良い物が見れた。あざっす!


 「今ガステア殿が倒した自称キィ=ジェン=イーエンが、どうもカドゥレーンの国家君主だったみたいで、この後装着型ゴーレム部隊がカドゥレーンの中枢に乗り込んだ時には、あっさりと降伏して来て、争いは一先ず終了…ってとこかな。ああ、それともう1つ。私と第5王子の結婚式は戦時中と言う事もあり、簡易的な物として先日執り行われて、正式に夫婦になったから報告だけしておくね」


 ん?今、最後になんかさらっと……


 「「「えー?!」」」


 俺とコーネリア、それと俺たちと一緒に三日月島へ行っていた使用人たちの声が揃う。


 「待て待て!そんなあっさりと、王族と侯爵令嬢の結婚なのだぞ?!国を挙げて祝うべきものでは無いのか?!」


 コーネリアの言う通りだと、俺も思おう。


 「戦時下だからって、それが許されたんだなぁ~これが」


 「許されたって…サリーはそれで良いのかい?大切な事だろう?」


 「え?ううん、別に?というか簡易的な物に出来ないかって私から言い出した事だし」


 「え?そ、そうなのかい?」


 「うん、そもそも別に愛とか無いし、ああそうだ、私1年のうち8割ぐらいは実家で過ごして良いって言われてるから、こらからもよろしくね。お姉ちゃん、アーバン君も」


 「そ、それは有りなのかい?」


 「陛下の許可も貰ってるよ?というか、王家的にも私にはこっちに居て貰った方が有難いんじゃないかな?橋渡し的な意味や情報収集的な意味で」


 「そ、そうか…」


 「なぁに?もしかしたらお姉ちゃん的には早く出て行って欲しかったとか?」


 「まさか!サリーと一緒に居られるなら私も嬉しいよ」


 「へへ~!ありがと。アーバン君は?」


 「ええ、俺も嬉しいですよ」


 「じゃあ問題無しだね!」


 そうかな?

 ……そうだな。

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