閑話 装着型ゴーレム騎士たちの戦い

【フル=ガーミット】


 装着型ゴーレムを身に纏ったアーキセルの騎士200と、魔法の武具で身を固めたカドゥレーンの兵士1,000、一般的な装備の兵士3,000、合わせて4,000との戦いは、戦いと言うのも烏滸がましい程一方的だった。


 開戦と同時にカドゥレーンの兵士は次々と夢の中に落ちていく。


 アーキセルの騎士は上空から睡眠の魔法銃を撃つだけの作業で、一方カドゥレーンの兵士は弓矢や魔法剣の跳ぶ斬撃で反撃を試みているが、弓矢は届かず、何とか届く魔法剣の攻撃も簡単に避けられるし、仮に当たったところで殆どダメージらしいダメージを与える事は出来ない。


 戦いはそのまま一方的なまま終わるかと思えたが、カドゥレーンの兵士の数が残る約300程度になったところで流れが変わった。


 眠らないのだ。

 

 残り300の兵士は何度も睡眠の魔法銃の攻撃を浴びている。

 にも拘わらず、彼らは眠りに落ちない。


 「……レジストされているね」


 「おそらく魔法鎧の効果に睡眠無効の魔法陣が組み込まれているのでしょう」


 俺の横で第5王子と元副会長が冷静に分析している。

 そのまま暫く、戦いは膠着状態が続いた。


 『―――……――ヵ――まま――だ―』


 俺の耳に微かに誰かの声が聞こえた。

 どうやら第5王子の装着型ゴーレムに届いた通信が僅かに漏れ聞こえたようだ。


 「……許可する。ただし出来るだけ殺さないように。鎧の破壊を試みてくれ。鎧を砕ければ睡眠の魔法が効く筈だ」


 『……――かぃ―――けど、や―――……』


 「その時は貴殿の判断にまかせるよキヴァ殿」


 その通信の直後、前線で動きがあった。

 敵の反撃の届かない高高度から攻撃を行っていた騎士たちのうち約20人が、魔法銃を次元収納に収納し、代わりに魔法剣を装備しながら一斉に降下を始め、魔法銃のままの騎士もそれに続いて降下を始めた。


 着地した騎士たちは、Ⅰの顔の装着型ゴーレムを先頭にカドゥレーンの兵士たちとの距離を詰めると、魔法剣を振るい、見事に鎧のみを斬り裂いていく。

 おそろしく綺麗な太刀筋、寸分たがわず鎧のみを斬り裂く凄まじい剣術。おそらく20体のゴーレムの中身は全員第1騎士団のエリートたちだろう。


 先頭の集団が鎧を切り裂いて、露わになった兵士の体に、後ろに控えていたゴーレムたちが一斉に睡眠の魔法銃を浴びせていく。

 そうして漸く、魔法鎧で身を固めていた兵士たちの無力化される。

 多少時間は掛かるが、これで戦況は決しただろう。


 そう思った時だった。


 『―――ダーに―……ジャ―――トだと――……』


 第5王子の通信機が再び誰かの声を流し始めた。先ほどとは違う声の様に感じる。


 「数は?」


 『――ぅ―…』


 「9ですか……搭乗型ゴーレム4機で対応して下さい。それともガステアを哨戒から呼び戻しますか?」


 そう、今ガステアは俺たちの部隊から東の地を哨戒中だ。これは足の速いトワイライトの特性を生かし、カドゥレーンの奇襲を警戒するという名目ではあるが、間違いなくお偉い方の利権が絡む思惑が関係しているのだろうと俺は思っている。


 『………ぃ――』


 「ではお任せします」


 『―ょう――…』


 4体の搭乗型ゴーレムが前進を始める。

 

 通信の内容は聞こえなかったが、第5王子の言葉から推測するにヨルレア・フェーレがレーダーに9つの敵影を捕らえたのだろう。

 搭乗型に対応を任せるところから考えて巨大化したジャガーノートのような大きな反応だったんだと思う。


 相手が巨大ジャガーノートでは装着型の出番はない。

 そちらは第3王子たちに任せる他ないだろう。


 どちらにしろ俺の出番は無さそうだと安心したその時、Ⅰの顔をした装着型ゴーレムが宙を舞った――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る