閑話 カドゥレーン(3)
それほど大きくもなく、豪華な装飾や高価な美術品なども無い質素な部屋で、それぞれ単色の服が5種類、各2人ずつで計10人が深刻そうな顔を合わせ話し合っていた。
「アーキセル王国が侵攻を開始した」
「数は?」
「入手した情報では凡そ200だそうだ」
「それはまた随分と少ないな……まさかその全てがあの巨大な魔道具などとは言うまいな?」
「いや、それを小型化したような物が主力になっているらしい。先のこちらの侵攻の際には通常サイズのモンスター共を圧倒していたそうだ」
「それが200か……」
「デカい方は?」
「出陣したのは5体前後らしい、残りは国の防衛に当たっているのだろう」
「つまり玉砕覚悟のカウンターも無駄という訳か」
「こちらの戦力はどうなっている?」
「魔法剣と魔法鎧、魔法盾などの魔道具を装備させた兵士たちを北側に配備した。数は1,000だ。また通常装備の兵士3,000も控えさせている」
「モンスターは?」
「ジャガーノートは何とか間に合ったが、ゴブリンの群れのリーダーとして認めさせる作業は間に合っていないし、強化も出来ておらん」
「絶望的だな……」
「あ、あの潔く降伏しませんか?アーキセルは周辺国家に自国の正当性を主張し、正面から宣戦布告してきました、敗戦国に非道な行いは出来ないのでは無いでしょうか?」
「それはどうかな、どちらにしろ降伏は無理だ」
「そうだな、キージェンイェン様が居る以上はな」
「それで?そのキージェンイェン様は?」
「今は魔道具師たちと前回の探索で持ち帰った用途不明の魔道具と魔法薬の効果と効能を調べておられる」
「今はせめてそれらが起死回生出来る強力な物である事を祈る事しか出来んか」
「「「………」」」
一同がより悲痛で深刻そうな表情のまま、黙ってしまったその時、ノックも無く両開きの扉が勢いよく開かれ、慌てた様子の魔道具師が入って来た。
「た、大変です!」
「何事だ?」
「キージェンイェン様が魔道具と魔法薬を持ってお1人で前線に!!」
「「「なにっ?!」」」
「……魔道具と魔法薬の効果が判明したのか?」
「は、はい」
「詳しく話せ」
「魔法薬の方は身体強化の強化版の様な効果があります。ただし、使用者は暴走状態になり、真面な思考が出来なくなってしまいます。使用中の記憶も残りません。効果は1本につき1時間。それを10本ほど持って行かれました……」
「魔道具の方は?」
「ゴブリンやジャガーノートに使った、対象を強化する魔道具の人間用の物です」
「なんだと?!」
「あのお方は人間を止めるつもりか?!」
「元々人と呼ぶには無理があるお方だがな」
「完全に強化したジャガーノートと1人で生身で渡り合えるお方だ、それがさらに強力な力を得て、加えてその魔法薬の効果が加われば、或いは例のゴーレムにも勝てるのではないか?」
「仮に負けても、あのお方が亡くなってくれれば降伏は可能になるのではないか?」
「……そうだな、属国にされるにしろこのまま戦い続けるよりはマシだろう」
「そこの魔道具師」
「はい!」
「その人間を強化する魔道具と魔法薬、まだ残っているか?」
「魔道具の方は3つほど、魔法薬は全てキージェンイェン様がお持ちになられました……」
「十分だ」
赤い服の男が徐に席を立ち、そのまま扉に向かって歩き始めると、同じく赤い服の別の男がその後に続いた。
「行くのか?」
「……国の事は頼む」
「我ら、最後までキージェンイェン様と共に……」
部屋を出て行こうとする赤い服の男2人に、青い服の男が声を掛ける。
「ゴブリンやジャガーノートの強化を図るために製作させた防具がある。体のサイズに合わせてある程度まで伸びる魔物の素材で作られている。全裸では格好がつくまい。ついでに研究室にある魔法武具も好きなヤツをくれてやる」
「お前にしては気前が良いな」
「勝つにしろ負けるにしろ、どうせ最後だ」
「……そうだな」
赤い服の男2人が報告に来た魔道具師を伴って部屋を出て行った。
「さて、我々は降伏の準備を進めるか」
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「ところでキージェンイェン様は全裸で戦うつもりですかね?」
「あの方には製作した物は全て報告している。つまり伸びる防具の事も知らせてあるよ」
「武器は?」
「大きさを変える武器は今のところ作れていないな。素手か、敵の巨大魔道具の武器を奪えれば……」
「今から出撃して、強化は間に合うのか?」
「いや、完全に強化されるには時間が掛かる、接敵までに完全な強化は間に合わんだろう」
「しかし、一度強化してしまえば2度と元のサイズには戻れないのでしょう?私生活にも支障が出るし、何よりあのお方とこの国の生命線であるダンジョンに入れなくなってしまうのでは?」
「あの御方にとっては、元々アーキセルを亡ぼす為のダンジョン探索だったからな、勝てればダンジョンに潜る必要も無くなるし、それに……」
「死んでしまえばダンジョンに潜る事は出来なくなる、か――」
「国にとっても戦いが終わればダンジョンから受けれる恩恵は正直微妙だ」
「後はアーキセルが我々をどう扱うか、だな」
「我々は処刑ですかねぇ……」
「元々国の為の命だ、惜しくは無い」
「では処刑される前に、国の為に出来る仕事は出来るだけ全部しておきましょう」
「そうだな」
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