第280話 模擬戦を終えた3人が搭乗型HMGから降りて来た。

 模擬戦を終えた3人が搭乗型HMGから降りて来た。

 ヌーボルトとノークエルトは得意げな顔をしている。

 うーん、あの程度の実力でドヤられてもなぁ……

 

 対してハイベルトは1人静かにHMGを見上げていた。

 何を考えているのかは知らないが、その表情は何か思うところがあるようだ。

 美青年だけに中々絵になっている。


 「アーバン殿、如何でしたか私たちの実力は?」


 「ガステア先生を除けば、我々に敵う者など居ないと自負しております」


 「……」


 ノークエルトはつまり俺やヌゼよりも強いと言いたいらしい。

 その自信は何処から来ているのだろうか。

 というか、お前さん、それは直ぐそこにいる第3王子よりも強いって言ってることになるけど、立場的に大丈夫かい?


 「ああ……そうですね、皆さんとてもお上手でした。活躍を期待しています」


 まぁ、彼らは4人で行動するみたいだからジャガーノート如きに後れを取る事もないだろう。


 「有難う御座います」


 「必ずご期待にお応えする活躍をするとお約束いたします!」


 「……」


 「ハイベルト、先ほどからやけに静かだが、どうかしたのか?」


 「………いや、なんでもないよ」


 「時に、どうでしょう?せっかくこんな場所まで来たのです、この後アーバン様やヌゼ様も我々と模擬戦など致しませんか?」


 ノークエルトがそんな提案をしてきた。

 こっちもそのつもりで来ては居たのだが……やる気で無いなぁ。

 

 「どうなさいますか?お義父上ちちうえ


 「え?お、ちちうえ?あ、私か?!え?」


 人前だからそう呼んだが、そう言えばヌゼ本人に義父と呼ぶのは初めてだったかもしれない。

 ……なんか、ニヤニヤしだした。

 気持ちわるいので今後は人前でもヌゼ殿で通そう。


 「殿。模擬戦はどうなさいますか?」


 「あ、そ、そうですね。私は構いませんが……」


 「だ、そうですよ?」


 「ありがとうございます!では僭越ながらまずはこのノークエルトからお相手を―――」


 「待て待て、ここは爵位の事もある。先鋒はこの私、ヌーボルト=ガイジャックが務めさせてもらおう」


 「む、こんな時だけ爵位を持ち出すのはズルいのではないか?」


 「ふふ、何を言う、私はいつだって大公家の一員である事を誇りに思い行動しているよ」


 「……」


 「あ、あの、3対1で戦うのでは無いのですか?」


 「「……は?」」


 「……」


 ヌゼの言葉にヌーボルトとノークエルトが暫く呆けて、それから不快感を露わにした。

 ヌゼ君も中々煽りよる。

 さっきの模擬戦の様を見せられてしまっては止む無しか。


 2人はプライドとか高そうだから、後々面倒なことになっても知らんよ?

 それにしてもハイベルトは何の反応も無いな。


 「ヌゼ殿、3対1とは正気ですか?」


 「先ほどの我々の動きを見ておいででしたよね?それともよそ見でもされておられたか?」


 はい、その人途中から完全によそ見をしていました。

 ついでに言うと俺も途中からよそ見をしていました。


 「もちろん拝見させて頂いておりました。その上で3対1での模擬戦を提案させて頂いております」


 「……そこまで仰るのなら良いでしょう。搭乗型ゴーレムの操縦者として先輩である貴殿の顔を立てて、私たち3人でお相手致しましょう」


 「一瞬で終わらせます。その後、改めて1対1での模擬戦で叩き伏せて差し上げましょう!!」


 ヌーボルトとノークエルトは目に見えて憤ってるなぁ。

 

 「赤竜の化身の実力をこの眼で拝見出来るとは光栄です。胸をお借りします」


 「赤竜の化身はとっくに引退しました。今の私はただの3人の子供たちの父親に過ぎませんよ」


 うわっ!!

 ヌゼがにっこにこしながらこっちを見て来た!

 いいからさっさとリストゥエラに乗り込みなさい!


 ※※※


 ガステアは3人寄り、俺はヌゼ寄り、と言う事で審判は第3王子が務める事になった。

 第3王子は3人寄りじゃ無いのか?と思ったが3人が顔を合わせたのは最近の事らしい。


 万が一巻き込まれた時の為に第3王子はパワードスーツゴーレムを装着して、また、常にある程度の高度を飛行しながらの審判となる。

 ……流石に生身で搭乗型に押しつぶされても平気何てこと無いよな、俺たち。

 念のため俺とガステアもパワードスーツゴーレムを着ているが、俺の目的は主に撮影だったりする。

 ヌゼが活躍するところを編集してニーナにプレゼントしなければならないのでね。


 3機のHMGとリストゥエラが向かい合って静かに立ち、開始の合図を待っている。


 「皆、準備は良いか?」


 静寂が答えとなって返る。


 「それでは、はじめ!!」


 第3王子の合図と共に3機のHMGが同時に2丁の魔法拳銃を引き抜いてリストゥエラに向かって連射する。

 横殴りの魔法の雨がリストゥエラへと襲い掛かる。


 へぇ、事前に話し合ってたのか、はたまた訓練の賜物なのか、3人は息ピッタリだ。

 1機は頭部、1機は胸部、1機は脚部を狙って、お互いの魔法同士が相殺してしまわないように撃っている。


 でも、正面からただ撃つだけじゃ魔力の無駄使いだよ。


 ヌゼは魔法剣を抜くと、高速で剣を振りながら全ての魔法を払っていく。


 『な、なんだ!あの剣捌きは!』

 『速すぎて剣筋が見えん!』

 『……赤竜……』


 ヌゼは魔法を払いつつゆっくりと3機との距離を詰めていく。


 『くっ!このまま正面から撃っていても駄目だ、ノークエルト、ハイベルト、2人は撃ち続けながら左右へ展開!3方向からの攻撃ならば剣では捌ききれん筈だ!』


 『『了解!』』


 2機のHMGが左右に別れ、リストゥエラを挟み込むように移動を開始する。

 それを見たヌゼは地を蹴り、中央のHMG、ヌーボルト機に向かって駆けだす。

 

 降り注ぐ魔法の雨を時に払い、時に避け、時に盾で受け、あっという間に距離を詰めると、ヌーボルト機に向かって剣を振るう。

 ヌーボルトは慌てて右手の魔法銃を放り投げ、魔法剣を引き抜くが、ヌゼがHMGの腕に剣を振ると、衝撃でHMGは魔法剣を取りこぼしてしまった。

 同じ様に魔法銃も払い落としたヌゼがリストゥエラをヌーボルト機の後ろに回り込ませ、ヌーボルト機の腕を取り肘を固めて動きを封じると、そのまま2機のHMGの射線を遮る盾として使う。


 『ヌーボルトを盾にするなど、卑怯な!』


 ぐぶぅ……


 あ、危ない。

 危うく笑いを堪え切れず噴き出すところだった。

 

 この状況で卑怯とのたまえるノークエルト君のメンタル、尊敬します。


 あと実は、この模擬戦ではフレンドリーファイアは無効になっているのでそのまま打ち続けても平気、と言うのは野暮なので言わないでおこう。


 『そうですか?では、お返ししましょう』


 ヌゼがヌーボルト機を押し出すと、背中を思いっきり蹴り飛ばした。

 

 『ぐおお!!』


 背後から蹴り飛ばされたヌーボルト機がうつ伏せで地面に倒れ込む。

 ヌゼはヌーボルト機が立ち上がる前に追撃、はせずに、次の標的をノークエルトに定めて駆け出した。


 『僕に背中を向ける何て!』


 ハイベルトが背後から魔法銃を連射するが、リストゥエラは左右にステップしながら、その全てを躱しなが進む。


 『後ろに目でも付いてるの?!』


 『来るならこい!正面から向かい撃ってやる!』


 ノークエルトが魔法銃をしまい、代わりに剣と盾を構える。

 ヌゼが簡単にその剣を払うと、1撃、2撃、3撃と高速の斬撃をHMGに浴びせかける。

 

 『ぐ、ぐううぅ!』


 模擬戦用にダメージを抑えているとはいえ、凄まじい猛攻にノークエルトの動きは完全に止まり、一方に的になぶられる形になってしまっている。


 4撃、5撃、6撃……いや、ちょっとヌゼさん?大人げなさ過ぎませんか?

 もしかしてさっきからのノークエルトの態度に怒ってた?

 俺に対しては気持ち悪いぐらいニコニコしてたのに。


 その時、ビーという試合終了の合図が演習場に鳴り響いた。

 今回設定していた500ポイントに到達したのだ。


 あ~、これじゃあハイベルトは不完全燃焼か?

 複数機で戦う時は各ゴーレムにそれぞれポイントを振ってあげるようにした方がいいかな。


 それにしても、俺が撮影してたこの映像はどうしようかな。

 これはヌゼの格好良いところじゃ無くて弱い者いじめの現場にも見えてしまう気がする。

 ……とりあえずニーナに見せる前に、ニーナと付き合いの長い家令やメイド長にチェックしてもらうか。

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