第271話 街の南西部、平民たちが暮らす区画に到着してあらためて周囲を見渡す。

 街の南西部、平民たちが暮らす区画に到着してあらためて周囲を見渡す。


 「結構壊されちゃってるね」


 「人的被害はほとんど無いそうですが、これは復興にはかなりの時間を要すると思います……普通なら」


 「人が見当たらないですね」


 ウルドが周囲をキョロキョロと見渡している。


 「平民は中央付近に避難中らしいし、騎士たちは街中を走り回ってモンスターの生き残りが居ないか探し回っているそうだから、多分そのうちこの辺にも戻って来るんじゃない?」


 「そうですか。まぁいても邪魔になるだけな気もしますが」


 「酷い言い様だなぁ。それじゃあその邪魔者がくる前にとっとと作業を進めちゃおうか。家屋の瓦礫と、家財道具とかは別の次元収納に収納するように。あと、別々の家庭の家財が混ざらないように出来るだけ注意してね」


 「と言っても次元収納は1人1つ、どうしたって混ざってしまうと思うんですけど?」


 「1人1軒で良いよ。半壊の建物は後回しで全壊している建物からね。片付いたところから新しい家を建てて行くから」


 「は?!今日この場で、ですか?!」


 「ウルド……アーバン様なら可能なのは今更説明する必要も無いでしょう?」


 「でも、平民の家屋を態々……って、それも今更か」


 「ええアノーレ、それも今更よ」


 「建材ならある程度持って来てるよ。と言っても全部を木材にしちゃうと流石に全然足らないから、謎金属を混ぜながらになるかな。後は瓦礫の中から木材をより分けてくれたら、それを俺がゴーレム魔法で使える形にして再利用出来るからそれで補おうか。あ~…エファンは、そうだなウルドと一緒に作業してくれる?分からない事があったらウルドに聞いて、ウルドは分からない事があったら俺に聞いてね」


 「分かりました」

 「はい!」


 「と言う事で作業開始」


 「「「「はい!」」」」



 

 「アーバンさま、終わりました!」


 てな具合で作業を開始して10分弱、最初に民家1つ分を片付けたのはウルドとエファンのチームだった。

 うーん、早い。

 ちゃんと家財道具と瓦礫を分けて収納出来ているのだろうか。

 まぁ瓦礫から木材を抜き出す作業をするから、混ざってしまっていたらその時分ければ良いか。


 「じゃあ瓦礫の中から木材を分けてくれる?」


 「収納する時分けましたから、そのまま木材だけを取りだせます」


 「……お、おう。ありがとう」


 優秀だなぁ。


 「それじゃあ俺の所と替わってくれる?俺は家を建ててくるから。はい、これ俺が使ってた次元収納」


 「はい!」

 「了解です。こちら俺が使っていた次元収納です」


 これは家を建てるスピードがとてもじゃ無いが追いつかんな。

 まぁ、俺が家を建ててる間は皆には休憩して貰っていれば良いか。


 建物のデザインは周囲の無事な建物を参考にする。

 この辺は平民の中でも比較的裕福な家庭が多いのか、2階建てでそこそこの大きさの建物が多い。


 と言う事で土魔法とゴーレム魔法を織り交ぜて土台を作り、謎金属の支柱を立ててゆく。

 大量に作ったが、これはまた謎金属を量産する必要があるなぁ。


 支柱を軸にゴーレム魔法を使い木材で壁と床、天井を作る。天井には謎金属を挟んだ物を使っておいた。

 窓ガラスだが、どうもガラスとは結構高価なものらしく、窓はあるがガラスがあるご家庭は見受けられない。

 と言う事で、俺特製のなんちゃってガラスをハメるのはやめておく。 


 そう言えば、最近立て続けに戦艦やら飛空艇やらを作った時に、どうせ今後も大量に必要になるだろうと、トイレとシャワーとエアコンをあと2つ程度ネモフィスが作れるぐらい大量に作って置いたので、かなりの数が余っているからサービスで付けておいてあげよう。

 ついでに、まだそれほどの数は用意してないけどコンロもおまけしておこう。

 説明書までは用意出来なかったので使い方は使いながら感覚で覚え欲しい。別に変な使い方をしてもそう簡単に壊れたりしないし、爆発するような事も無いはずだから安心してくれたまえ。




 で、なんでそんなに数を作れているのかというと、実は【試しの遺跡】のドラゴンからドロップするアイテム、勲章が魔道具(何かの鍵っぽい)である事が判明した時、つまり魔法陣を生成する事が出来る事に天才のアーバンさんは気が付いてしまったのだ。

 その勲章を生み出している魔法陣を解析し、それを3Dプリンターと組み合わせる事で、あ~ら不思議、魔道具が量産出来るんですねぁ。

 という、とんでもない新、いや真3Dプリンターを完成させてしまったのがつい先日。


 これを完成させてしまうと、オリビエ先生の仕事を奪う事になってしまうと思って、どうしようかと迷ったのだが、魔道具の生成にも肉や果実と同様にかなりの魔力を要するし、先生には魔法陣の開発や解析を手伝ってもらう仕事もある、それに加えてゴーレム魔法が使える先生には色々手伝って欲しい仕事は山積みだ。

 チラズもゴーレム魔法が使えるし、何より彼には大量の書類仕事を押し付―――任せている。むしろ仕事が減るのは喜ばしい事だろう。


 2人には魔力が足りない時だけ魔法陣の作成を手伝ってもらい、普段は他の仕事をしてもらう事にしようと思う。


 ちなみに、真3Dプリンターを世に出すかどうかだが、今のところ世に出すべきではないという意見がネフィス家で9割を占めているので、多分ネフィス家内で使用するか、仮に世間に発表するにしてもネフィス家の傘下、あるいはグランシェルド家で、このプリンターで生み出した魔道具を販売する、とかに留まると思う。


 なお、この真プリンターに使用している魔法陣は、今までの魔法陣の中でもトップクラスに複雑な魔法陣なので、仮に特許の申請をし、魔法陣を世間に公開したところでどうせ誰にも再現出来ない気がする。

 さらにこの魔道具を再現出来ても、次は対応する魔法陣を自ら自作しなければならないので、そちらも難易度的には同レベルで難しいだろう。


 まぁ、魔道具を生み出せる魔道具を売るより、それで作り出した魔道具を売った方が市場を独占できるし、かなり長い年月、ネフィス家やグランシェルド家の収入になるんじゃないだろうか。


 うん、なんか考えるのが面倒になってきた。

 面倒な事はチラズやサリー、それにニーナが任せろと胸を叩いていたので、お願いする事になるだろう。

 やっぱり餅は餅屋に任せるのが一番だろう。



 

 最後に、部屋のひらけた場所に家財道具を取りだし。壊れたテーブルやチェスト何かをゴーレム魔法で修理して完了、ここまでおよそ30分。


 ……うん、他の4人が作業を終わらせて、俺の作業が終わるのをじっと待ってる。

 

 なんですか、アーバンさんの仕事はそんなに遅いですか?

 いや、2階建ての家を30分で建ててるんですよ?早いですよね?


 うん、俺1人じゃ全然無理。

 撤去作業などは後から来る使用人たちに任せてチラズも建築にまわってもらおう。

 あとオリビエ先生にも参加してもらおうかな、いや、俺から声を掛けると強制みたいになっちゃって良く無いか?


 「あの、アーバン様。支柱を立てる作業や、建材を並べる程度なら我々にも出来ます。アーバン様はそれをゴーレム魔法で繋ぐ事に集中して頂ければ、もう少し早く完成出来るかも知れません」


 と、イブが提案してくれた。


 ……天才か?


 てなわけで3件分の地面を整地し、次の作業をイブ、アノーレに任せる。ウルドとエファンは空いた次元収納を持って次の家の瓦礫の撤去に向かった。


 次の家が完成したのは、だいたい15分後。

 なんか、突貫工事過ぎて心配になってきた。

 ……大丈夫だろう、多分。


 その後使用人たちも合流し、使用人の半数はチラズの所に派遣して、チラズにも建築側にまわってもらっているが、やっぱり手が足りない。


 仕方ない。

 やはりオリビエ先生にも通信で応援を要請しよう。

 パワードスーツゴーレム、まだ装着してくれているかな。


 「………あ、オリビエ先生、今話しできますか?」


 『はい、どうされました?』


 「実は―――」


 俺が簡単に事情を説明すると、オリビエ先生は二つ返事でOKしてくれた。

 してくれたのだが、


 『その話は喜んでお引き受けしますが……あの、実はその話とは別にアーバン様に1つお願いしたいことがありまして……』


 賃上げ交渉かな?

 流石に酷使しすぎている自覚はあるので、こちらには応じる意思があります。


 『あの……母がどうしてもアーバン様とお会いしてお話がしたいと……』


 娘さんを酷使しすぎた結果、親御さんが直々に乗り込んでくるらしい。

 違うんですお母さん、ウチはほとんどブラックですがグレーな職場なんです。

 娘さんの意志は尊重されています、本当です。


 ……とりあえず、ジャンピングからの滑り込み土下座の練習をしておこう。

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