閑話 騎士たちの戦場 【南西部】
【南西部】
第1騎士団と第2騎士団にはそれぞれ1機ずつ、第3王子の訓練用のパワードスーツゴーレムが貸与されていた。
南西部を守護する第1騎士団ではそのパワードスーツゴーレムを副団長に装備させ、団長であるキヴァ=ハーケン自身は生身での戦闘を続けている。
「団長、やはりこのゴーレムは団長が装備するべきでは?団長が活躍すればその分士気も高まりますし、団長が好きな前線での無茶も通りますよ?」
「誰がゴーレム無しじゃ活躍出来ないって?」
「はぁ……こんな時ぐらい変な意地は捨てて下さいよ」
「別に意地だけでそのゴーレムを装備してねぇわけじゃねぇよ。そのゴーレム、顔が見えねぇだろ?俺の活躍かどうか分かりにくいからそこまで士気に関わらねぇだろうし、そもそもリーダーだけ特別製の鎧で守られてズルいなんて考えが士気を下げる可能性だってある。戦力的に見ても、なんとか生身でもAランク指定のモンスターとサシで戦える俺が装備するより、お前が装備した方が効率的だと判断した結果でもある」
「第2騎士団は団長が装備している様ですよ?」
「良いんじゃないか?あいつはそれほど戦闘能力は高く無いが、部隊を指揮する能力に長けている。そういう奴が装備した方が良いだろ、なにせ数が少なすぎるからな。それに、あっちには親父殿がいるからな」
「いつまでもお元気な方ですね」
「全くだ」
「……考えたのですが、武器だけでも団長が使ってはどうでしょうか。このゴーレムがあれば武器がナマクラでも戦える気がするのですが」
「どうかな、武器の方が持たなそうだが。……いや、ありだな。魔法銃は生身の騎士に渡しておけ、ただし俺以外のな。剣は―――」
キヴァの台詞を遮って、ドフォゥと大きな音を立て目の前の建物が崩壊する。
土煙が昇り、やがて土煙の向こうからジャイアントオーガがその姿を現した。
「ちょうど良い、試し撃ちの的が向こうから来たぞ。魔法銃を他の騎士に渡せ」
「はい、ではニット、あなたに託します」
「は、はい」
魔法銃を受け取った若い騎士、ニットは緊張の面持ちでその銃口をジャイアントオーガに向けた。
「撃て!」
「はっ!!」
魔法銃からX型の風の魔法が飛びだし、ジャイアントオーガに襲い掛かる。
魔法は見事、ジャイアントオーガの胸部に命中するが、X型に大きく傷をつけるが致命傷を与えるまでには至らなかったようだ。
ジャイアントオーガは藻掻き苦しみながらも、腕を大きく振り回しながら騎士たちに迫っていく。
「ふむ、倒すには5・6発当てる必要がありそうだな。あのアーバンの魔道具にしては随分控え目な威力だな。ワザと威力を抑えているのか、或いは使い手の能力が威力に影響を与えるタイプの魔道具なのか」
「いや、十分凄いですけどね」
「次は剣を試すか。おい誰か予備の武器をこいつに渡してやれ」
「はい」
先ほど魔法銃を放ったニットが副団長に一般的な鉄剣を手渡した。
鉄剣を受け取って直ぐに副団長はジャイアントオーガに突っ込み、その巨腕を躱し、斬撃を繰り出した。
パワードスーツゴーレムが放った鉄剣の斬撃は、見事1撃でジャイアントオーガを絶命至らしめたが、同時に鉄剣は根元に近い場所でポキリと折れてしまった。
「駄目だな、一撃で折れるんじゃ話にならねぇ。剣はそのままお前が使え」
「そうですね。魔法銃はこのままニットに?」
「何人かに使い回させろ。あまり攻撃魔法が得意でない奴に持たせた方が効率的だとは思うが、威力の事もある。その辺は自分たちで創意工夫しろ、以上」
「最後、急に雑になりましたね」
「いつまでもおしゃべりをしているわけにはいかんだろうよ」
ドゴォンガゴンと、再びの騒音が辺りに響き、人型、馬型、亀型など様々な見た目のモンスターが姿を現した。
「ちぃ!いくら何でも入り込まれ過ぎだな。これじゃあ入り込んだモンスターを討伐して外のモンスターの駆除を始めるどころか、どんどん入り込まれるぞ」
「……やはり、この魔法剣は隊長がお使い下さい」
「お前の武器はどうするんだよ?」
「これを使います」
そう言って副団長は右手を眼前に翳した。
「これって?」
「拳ですよ」
「どこのオーガだよ」
「オーガ本人に言われたく無いですね。それでは、行きます!」
「あ、おい!」
副団長は魔法剣を地面に突き立て、その場に残したままモンスターの群れへと突っ込んでいく。
キヴァは慌てて魔法剣を拾い上げ、その後を追う。
そのキヴァの目に映ったのは、パワードスーツゴーレムに殴り飛ばされて地面に転がるジャイアントオーガの姿だった。
「マジでオーガだな」
魔法剣を装備した生身のキヴァ、パワードスーツゴーレムを装着した副団長、そして魔法銃を使い連携しながら戦う騎士たちは、徐々にモンスターを押し返し、ネフィス家の使用人たちが応援に駆け付けるまで、被害の拡大を防ぐことに成功した。
事態は徐々に収拾していく。
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