第222話 この世界、モンスターは居るが、その他の生物や植物、生態系が地球と酷似しているのがありがたい。

 この世界、モンスターは居るが、その他の生物や植物、生態系が地球と酷似しているのがありがたい。


 「やっぱ鑑賞会にはポップコーンは欠かせないよな」


 そう、トウモロコシが普通に存在しているのだ。

 とはいえ、ポップコーンという食べ物は存在していなかったので料理人にうろ覚えの調理法を伝えて作って貰ったわけだけど。

 製菓系は普通に前世と同じ名前で同じようなものが存在しているのにな、良く分からん。

 気にしてもしょうがないか。


 「まずはヌゼの戦闘から観戦するか。正直ロボットって感じが無いからそんなに興味無いけど」


 帰還したドローンから魔法陣が刻まれた板を取りだして、それを今回の為に作ったプロジェクターにセットする。

 ちなみに参加者は俺……のみ。皆忙しいそうだ、しょんぼりである。

 これじゃ鑑賞会じゃなくてただの鑑賞である。

 いいもん、1人で楽しむもん。

 あ、このポップコーンちょっとしょっぱいな。


 どうせ1人で見るので場所は自室だ。


 さて、ヌゼの戦闘だが……やはり別に大して興味が湧かない。

 誰が装着しているのかは知らないが、パワードスーツゴーレムが2機ほど戦闘に参加しているのがまだ見どころか。ただバレないように結構な上空から撮影しているからズームで撮影してて使ってもまだちょっと小さい。

 しかし、なーんかあのパワードスーツゴーレム2機の動きに見覚えがあるような?無いような?流石に動きだけじゃ分からんな。


 お、リストゥエラがジャガーノートを真っ二つにしたな。

 ガステアのような見せプも無しか……う~ん、もういいや、次~。



 次は、俺が観戦していた場所とは別の場所でのトワイライトの戦闘である。


 基本的にはミサイルを撃ち込んで終了だと思うだろう、ところがどっこい、なんとトワイライトにはミサイルは18発しか搭載していないのだ!

 ……遠隔操作ゴーレムの製作とかで忙しかったんです。次元収納に次弾を装填出来るので、限界なんてあってないようなもんなんだけどね。


 全ての映像の冒頭だけ確認したが、どうやらトワイライトが倒したモンスターの群れは全部で7カ所、リストゥエラが2カ所、ヨルレアが1カ所、撃ち漏らしは無しで、チラズの出番は無かったようだ。


 普通に考えてガステアは西から順番に戦ったである。第3王子が一番東の群れだけ殲滅したとして、最後から2番目、つまり東から数えて2つ目の群れの時には流石にミサイルは撃ち尽くしているだろう。


 ということで、東から2つ目の群れを撮影していたドローンの映像を確認する。ちなみに、各箇所2機ずつのドローンで撮影している。


 「お!やっぱりミサイルを使い果たしたな。遠隔ゴーレムを引きつれている」


 金色の戦闘機を先頭に5機の黒い戦闘機がそれに追従する。6機は綺麗な編隊を組んで真っすぐとモンスターの群れに直進していく。


 黒い遠隔ゴーレムの名前はシュバルツ・アングスト。相変わらず名付けを拒んだガステアの所為で俺がひねり出すことになった。おかげで俺の数少ないドイツ語のストックが減ってしまった。ちなみにトワイライトが英語なのにシュバルツがドイツ語なのはカッコいいからである。あと単純にドイツ語で黄昏が分からん。

 人型形態のシュバルツは全長10メートルとトワイライトと比べるとやや小さい。


 シュバルツは謎金属をメインに作っており、魔力を流すと自動的に水の魔力に変換されるようになっている。黒色の時の謎金属の特徴としては魔力の通りが非常によくなる、つまり消費魔力が少なくて済むというメリットがある。代わりに脆い。まぁ、脆いと言っても硬化の魔法陣は描き込んでいるので普通の鉄よりは強度がある訳だけども。


 なぜ同時に10機の遠隔操作が出来るガステアに対して5機なのかというと、まだ彼の魔力値が少ない事が上げられる。

 嘘です、色々作っていたら間に合いませんでした。くそぅ、次の襲撃までには10機揃えてやるんだからね!

 ……次の襲撃、あるよね?


 6機は戦闘機形態のままビームを連射しながらゴブリンたちを蹴散らしていく。

 

 一発も外さないのは流石ガステア神。


 ある程度ゴブリンの数を蹴散らした6機は、モンスター達と距離を保ちつつ全機同時に空中で人型形態に変形する。


 かっけぇ!

 複数機を同時に操作出来るガステア神にしか出来ない芸当だ。


 6機は人型の状態で、空中で静止してビームでゴブリンたちを殲滅していく。

 一方的だ。

 しかしちょっと地味である。いや、これでこれで格好良いけども。

 やっぱり、最初の戦闘は俺が見ているのに気づいて格好良いパフォーマンスを披露してくれていたようだ。


 くっくっく、しかしガステアよ、魔法が効きにくいジャガーノート相手にはそうもいかないぞ?さぁて、どう戦うかな。


 ゴブリンたちを殲滅した後、トワイライト以外の機体が魔法銃を腰にしまい、硬化の魔法剣を取りだす。そう、トワイライトにはビームサーベルを持たせているが、シュバルツたちには硬化の魔法剣を装備させているのだ。

 あれ?そういえばリストゥエラの武器は風の魔法剣だったはず。って、ああ、ジャガーノートを切り裂いた時、剣はくすんだ金色だったな。ヌゼは魔力を通さずに使ったのか。……それでいてあの切れ味か、やるじゃん。というか出力強化も1段階目ぽかったな。ジャガーノートって意外と弱いのか?そういえば【試しの遺跡】で初めて見かけた時も別に強くは感じなかったな。……次は山羊頭の強化版の10体とかおすすめですよ敵国さん。単純に大きさが10倍になるなら山羊頭は60メートルぐらいになるな。最大サイズのドラゴレイムよりもデカいじゃん。見応えがありそうだ。


 さて、ガステアは接近戦を選択したみたいだけど、どういう風に戦うつもりかな。


 トワイライトをその場に残し、5機のシュバルツたちが地面に降り立ち、一気にジャガーノートに詰め寄っていく。

 5機は縦横無尽に地を駆け巡り、すれ違いざまにジャガーノートの足を斬り刻んでいく。

 一撃のダメージは小さいかもしれないが、あれだけの連撃だ、凄い勢いでダメージは蓄積していくだろう。

 ジャガーノートも反撃しようと拳を振り上げたが、その瞬間、ジャガーノートの眼球にビームが直撃する。

 それでジャガーノートの動きは一時的に制止する。撃ったのは勿論トワイライトだ。


 ……結構な距離がある上に、シュバルツたちを動かしながら精密射撃ですか、そうですか。


 そうしてダメージが蓄積したジャガーノートは遂に膝をついた。

 すかさずシュバルツたちが追撃を行う。


 3機が足を、2機が喉や首筋を狙う。


 待て待て、もうどう見ても別々の動作をしているだろう。


 い、いや、よく見たら3ー2で別れているけど、方向が違うだけで同じ動きか?

 シュバルツたちの動きがもともと俺が想定していた運用方法と違い過ぎる。


 やがてジャガーノートはゆっくりと動かなくなっていき、最後に2機が首を斬り落として勝敗が決した。


 改めて見ると、俺やヌゼが強いという表現ならガステアは巧いという表現が似合うな。多分武器を剣だけに絞ってスラスターも無い状態で1対1で戦うならば俺やヌゼが勝つだろうが、条件を絞らなければ俺とヌゼが2人掛りでも勝てない、そんな感じかな。

 要するに凄い。実に俺好みのパイロットである。



 さぁて、最後はお楽しみのヨルレア・フェーレだ。


 「おっと、ヨルレア・フェーレの映像を見るならこっちも合わせて再生しないとな」


 俺はヨルレア・フェーレの改修を行った際に回収しておいたをセットする。

 そう、城内の映像を録画したり、勝手に地図を製作するのはヤバいのでそれらの機能は普段はオフにしておくように第3王子には言っているが。

 戦闘中に録音しないなんて言ってない。


 (盗撮に合わせて盗聴ですか?最低ですね)


 なんか勝手にオリビエ先生の声が脳内で再生されてしまった。


 ……さ、見よ見よ。


 〚共に、戦いましょう〛


 『ああ、共に勝利を――――ヨルレア・フェーレ、出る!!』


 くぅ!これだよ、これ!


 おっと、流石に接敵までは早送りっと、あぁ、ポップコーンが美味い。


 おっと、この辺だな。


 ドローンのカメラがヨルレア・フェーレを映し出した。

 後は音声のタイミングを合わせてっと、


 〚射程圏内です。魔法銃を、使用する事を、推奨します〛


 『ああ、サポートは頼むぞ』


 〚お任せ下さい〛


 良い感じかな?


 かなりの距離はあるが、ヨルレア・フェーレが次々とゴブリンたちを撃ち抜いてゆく。

 うん、エボの照準補正も正確に作動しているな。


 ゴブリンたちは仲間の死をも物ともせずにヨルレア・フェーレとの距離を縮めていく。


 〚私に、お世辞などという、機能は、ありません〛


 『そうか、ではその期待に応えねばな!』


 エボと第3王子とのやり取りも中々良い。良いコンビになりそうだ。


 群がるゴブリンたち相手に無双するヨルレア・フェーレから離れた場所でジャガーノートが巨岩を持ち上げて、それをヨルレア・フェーレ向かって投げつける様がカメラが捉えている。


 〚攻撃、来ます!〛

 

 『しまった!』


 この辺は第3王子の視野の狭さが原因かなぁ。エボももうちょっと早く警告出来たらよかったけど、レーダーには巨岩は映らないしな。エボとリンクさせるために一応外部カメラを搭載しているけど、目の部分に一ヵ所のみだし、寧ろどうやって気付いたんだ?


 巨岩を避けきれなかったヨルレア・フェーレは左脚を失い、そのまま地面に転がる。


 地面に倒れ伏せるヨルレア・フェーレに一斉にゴブリンたちが襲い掛かる。


 〚ゴブリンが、来ます、直ぐに本機の、体勢を、立て直して下さい〛


 『<出力強化>!』


 咄嗟に立ち上がりスラスターを噴かせて、ゴブリンの攻撃を回避するヨルレア・フェーレ。


 『………切り札を使うべきか』


 〚推奨、します〛


 『……そうか。エボ、認証する。切り札の準備を』


 〚はい、チャージを、開始いたします。使用可能まであと30秒〛


 正直、初戦で切り札を使うのはちょっと予想外だった。

 今回の戦いでは切り札の出番はないかなぁとすら思っていたのだが。

 流石第3王子、王道を分かっている男である。


 『王国に仇なすモンスター共に裁きの光を!<正義の輝きヨルレア・フェーレ>!!』


 来ました!必殺技!!

 この音源はエファンのベルトに追加決定です!有難うございます!!


 第3王子の叫びと共にヨルレア・フェーレは輝きはじめ、その光はやがて周囲を包み込むように広がっていく。

 

 ドゥオーンという、この世界ではあまり耳慣れない音と共に地面はバリバリと剥がれ、重力に逆らうように宙に舞い上がっていく。


 やがて光が収まった時には、ヨルレア・フェーレを中心に巨大なクレーターを作り出していた。


 はい、ここで近づきすぎたドローンが1機巻き込まれました。

 データの送受信は出来ないので残念ながらそちらの映像は無し。跡形もなく消滅しました。

 

 くそ~、ローアングルからも見たかった。


 〚目標の、殲滅を、確認。我々の、勝利です〛


 第3王子の返事は無い。


 ヨルレア・フェーレはただ静かに佇んでいた。


 やがて、ゆっくりと第3王子が喋り始める。


 『王都に戻らねば。魔石の魔力残量は少ないが、訓練のおかげで私自身の魔力値も増えている。この脚でも固定砲台の代わりにはなるだろう。スラスターを使用すれば移動も問題なく出来る筈だ―――――エボ、操縦を頼めるか?』


 〚了解、しました〛


 ヨルレア・フェーレはエボの操縦の元、王都に向けてスラスターで移動を開始した。


 …


 ……


 ………


 『すまない、すまないヨルレア・フェーレ……』


 コックピットには、ただ静かに、第3王子の懺悔ともとれる言葉だけが響いた―――


 ブ、ブラボー!!

 

 スタンディングオベーションである。


 パチパチパチパチ!


 凹んでいる第3王子には悪いが俺が第3王子に期待したもの全部盛の素晴らしい作品だった!


 いやぁ、良いものを見れた。

 他の皆は忙しいと鑑賞会に付き合ってくれなかった事を後悔すると良い。

 いや?それは勿体ないな。

 編集して映像を配るか。ポータブル再生用魔道具と一緒に。

 娯楽の少ないこの世界だ。めっちゃ流行るかもしれない。よーし100枚ぐらいコピーして屋敷の皆に行き渡らせるぞぉ!!


 あ、でも本人の許可は取ってないから第3王子には内緒にしてね。

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