第206話 ガステアとの面会は思いのほか早く実現した。
ガステアとの面会は思いのほか早く実現した。
早すぎて第3王子に面会のセッティングをお願いしたその日に実現した。
何でも午後から第3王子のゴーレムの訓練が予定されていたそうで、ガステアはもともと第3王子の元を訪れる事になっていたそうだ。
ちなみに、第3王子は公務が残っているとかで、引き合わせだけして仕事に戻って行った。応接室は貸してくれるらしい。
忙しいところごめんね。
「お、お初にお目に掛かります。ベスタ―侯爵が5男、ガステア=ベクターと申します」
「初めまして、アーバン=ネフィスです。よろしくお願い申し上げます」
どこかオドオドとしていて、所謂貴族らしさというものが多少欠いている。そんな印象を受ける青年だったが、むしろ俺が出会ってきた侯爵家以上の人間の中では第一印象の評価は高い。
「わ、私は、アーバン殿の販売しているミニゴーレムで日々遊んでおりまして、そのことが高じて第5王子殿下から、第3王子殿下のパワードスーツゴーレムの指南役という大役を任せて頂く栄誉を賜りました。い、今でも時間さえあればHMGシリーズやヨルレアシリーズで遊ばせて頂いております。あのような素晴らし物をお作りになられたアーバン殿には心から感謝しております。ほ、本日はお会いできてとても光栄に思います」
うん、いいね!
ただの社交辞令かも知れないけれど、今のところ100点だよガステア君!
「そう言って頂けると此方と致しましても嬉しい限りです。ところで、その第3王子殿下にお聞きしたのですが、ガステア殿は2機のゴーレムを同時に操る事が出来るのだとか」
「え?あ、はい。その、お恥ずかしながら、幼少の折は毎日ゴーレムでばかり遊んでおりまして、当然毎日他家の令息とスケジュールが合う訳でもなく、学園に入学した兄のゴーレムを借りて1人で2体のゴーレムを動かして戦わせておりました。で、ですから2体同時に動かすことが可能です」
「もし宜しければ1人で2機のゴーレムを同時に動かすところを見せて頂けますか?開発者として興味があるのです」
「そ、それは勿論構いませんが、今日はミニゴーレムを持って来ていないのですが……」
別にこんな事も有ろうかと思ったわけではないが、実は俺が持って来ている。というか大体いつも次元収納に入れて持ち歩いている。いつ布教チャンスがあるか分からないからな。
「私の私物をお使い下さい」
そう言って次元収納から1機ずつミニゴーレムを取りだす。
HMGシリーズが3機、ヨルレアシリーズ、つまりヨルレアフェーレに似ている機体をA~Fまで1機ずつと飛んでZを1機、試作の4脚、タンク、逆脚、等々多様なミニゴーレムが応接室のテーブルの上に所狭しと並んでいく。
「こ、これは?!す、凄い、こんなに種類が……どれも非売品でしょうか?アタッチメントも含めてアーバン様の発売している商品は大体チェックしているつもりだったのですが」
「そうですね、趣味で作った物や、試作品も入っております。もし宜しければ後程幾つかプレゼントさせて頂きますよ」
「ほ、本当ですか?!」
「ええ、喜んで。さて、今日はガステア殿が操作に慣れていそうな通常のHMGシリーズで2機同時に動かすところを見せて頂けますか?」
「は、はい」
ただ見せびらかしたかっただけの他のミニゴーレムを再び次元収納にしまってから、HMGシリーズをガステアに渡す。装備は一般的な剣と盾、背中にはスラスター、それだけのシンプルな装備だ。
HMGシリーズは10センチとゴーレムとしては小さいので、この応接室のテーブルの上で十分に動かせるはずだ。無駄に大きいしね、テーブル。
「そ、それでは、動かしますね」
「宜しくお願いします」
ガステアが2機のHMGに同時に魔力を流す。
両方がガステアの方を向いていたHMGはお互いに向かい合って腰を落として構える。
次の瞬間、向かって右のHMGがスラスターを噴かせ左のHMGに急接近する。分かりやすくするために右のゴーレムをA、左のゴーレムをBと呼ぶことにする。
Aは高速で剣を横薙ぎにする、Bはしゃがんでそれを避けるとAを蹴り上げた。Aは衝撃でかなり上空まで吹っ飛び、それをBがジャンプで追撃する。Bの剣がAを捉えると思われた瞬間、Aは一瞬だけスラスターを噴かせて器用にそれを避けた。
2機はまるで空中で踊るように攻防を繰り広げながら、自由落下していきテーブルに着地した。
は、ははは!!!なんだコレ!
「すっげ……」
俺は2機を同時に動かせると聞いた時、格闘ゲームを右手と左手で2キャラを動かして戦うようなイメージを思い浮かべた。
使用できる技は限りなく少なくなり、ただパンチやキックボタンを連打する、動きは前進と後退だけ、そんなしょぼい動きを想像していた。それが出来るだけでも凄いのだ。
そんな想像をしていた俺にガステアが見せてくれたのがこれだ。
1機1機の動きだけ見れば俺の操作するゴーレムより劣るが、2機同時に相手をして勝てる自信はないな。そのクオリティの動きを2機同時に動かしながら維持しているのだ。
尚も踊るように戦う2機のゴーレム越しに、ふと、それらを操作するガステアの姿が目に映った。これだけの動きだ、さぞ神経をすり減らすような集中力を要する事だろう、当然真剣な表情をしていると思っのだが、彼は笑っていた。それは楽しそうに。
やがて2機のゴーレムの演武は終幕の時を迎えた。
AとBが互いに放った突きは互いの刀身に火花を纏いつつ、お互いの手元へと延びていく。瞬間、Bがくるりと手首を捻り、Aのバランスが僅かに崩れたところに膝蹴りを繰り出した。Bの膝はAの顎に命中し、その勢いでAは後方に吹っ飛び、仰向けに倒れた。仰向けに倒れたAの喉元にBが剣の切っ先を突きつけて試合終了だ。
そう言えば得点掲示板のセットをするのを忘れていたな。
ぱちぱちぱち!!
俺は惜しみない賞賛を込めて拍手を送った。
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