閑話 アーバン君のお尻の危機

 俺は馬車に乗る時はフライングボードをお尻に敷いている。


 これが無いと馬車の揺れでアーバン君の可愛いお尻が2つに割れてしまうのだ。お尻はもともと2つに割れているだろ、とかそんな野暮なことは言いっこなしだ。

 ちなみにこの方法、俺以外の誰もやっていない。前に父や母に勧めてみたが、やんわりと断られた。色々と理由を付けていたが、要はカッコ悪いという事だと思う。

 カミーユや他の俺付きのメイドにも勧めてみた事があるが、「坊ちゃんの所有物である魔道具をお尻に敷くなど、恐れ多い」との事。みんな意地を張っちゃって。痔になっても知らんですよ?


 という事で実家に帰り着いた俺はフライングボードを尻に敷く必要のない馬車をつく―――いや待てよ?そもそも馬車である必要があるか?

 ゴーレム魔法を利用すれば魔力で走る自動車がぐらい作れるよな?


 ……作っちゃおうかな魔導自動車、略して魔導車。


 という事で早速制作開始。


 という事で早速制作完了。


 ふっ、今までのゴーレム制作の経験を生かして僅か4日で作り上げてしまった。さすがアーバン君である。


 馬車の速度に不満はあるが、道路交通法など整備されていないこの世界であまりスピードを出させるわけにもいかないので、普段は時速換算で大体30キロほどまでしか出ない仕様になっている。走行テストやら衝突実験やらをやれてないのも原因ではある。一応レバーを倒しロックを解除することで最高時速80キロは出るが、都会でそんな事をすれば大惨事になるので、普段は使ってはいけないと父や母、操縦を担当するだろう使用人には説明するのを忘れない様にしないと。

 魔導車自体は、細部に至るまで硬化の魔法陣の効果がいきわたっているので、多少の事で壊れることは無いだろうが―――


 内装は運転席と助手席、後ろの向かい合った4席の計6席。なんと説明したら良いだろうか、馬車の御者台を車内に入れた様な?

 シートのクッション性などはゲーミングチェアを作った時のノウハウが役に立った。流石に形は車に合わせてあるのでゲーミングチェアほどのフィット感は無いが。

 サスペンションまわりもかなりこだわった。特に微翔魔道具を組み込んだあたりが自慢しどころだ。その他ベアリングやらショックアブソーバーやら……まぁその辺は別に良いか。

 コレで石畳を走ってもお尻が痛くなることは無いだろう。

 ちなみに計器類は速度計しかついていない。そもそもエンジンが魔道具なのでタコメーターは必要ないし、ガソリンメーター(マジックメーター?)は今のところ世にない。人の魔力の残量を数字化出来れば便利だとは思うが、まだそこまで手が回せていないのだ。

 しかしメーターが一つだと何だか様にならないな。それっぽくするためにも魔力計の制作は頑張りたい。


 それと冷暖房も完備している。氷系と風系を組み合わせた冷房と、火系と風系を組み合わせた暖房、それとオフをレバーで切り替え可能だ。

 燃費的な事を言えば、ゴーレムよりかなり燃費が良い。例えば冷房を付けた状態で時速30キロで丸1日走行し続けて、ほとんどの人間は魔力切れを起こすことは無いだろう。が、寝ずの運転は普通に危険なので止めて下さい。

 逆にゴーレムの燃費が悪いのでは?……まぁサイズや性能を考えたら仕方ないか。


 外観はかなりレトロな感じで、それこそガソリン車が世に初めて登場した時の様な見た目だ。これは父が普段使い出来るように気を使った結果だ。俺的にはスーパーカーもかくやといった感じの見た目が好きなのだが。流石に父が街中で指を指されるのは避けたい。ん?馬が引いてない時点でアウトなのでは?……ま、まぁ良い。景観に合わせるのは大事な事だろう。多分。


 そして、この魔導車の最大の特徴はアクセルペダルもブレーキペダルもクラッチペダルも存在しない事だろう。

 ついでに言えばシフトレバーも無い。

 何せこの魔導車、つまるところゴーレムなのだ。操縦者がイメージしたらそのイメージ通りに動く。なので全ていらないのだ。

 ハンドルは有るがこれは鍵の役目だ。操縦するにはハンドルを握ってそこから魔力を流す必要がある。あ、一応クラクションは鳴る。というか鳴く。押すとカミーユの声で録音された音が「ぱーーーーーーっ!」って鳴く。

 照れながら録音するカミーユが可愛かった。


 さぁて、父は喜んでくれるかなぁ。


 「父上ー、お見せしたい物がー」




 何故か暫く封印する事になった。


 出来れば同型機を王家に献上して欲しい。それが無理そうならばアーバンが結婚するまでは次元収納に仕舞っておいて、結婚したらネフィス家で使用するように。その後に手が空いた時にでも自分たちの分を作ってくれると嬉しい。との事だ。

 母は魔導車を気に入ってくれていたようで残念がっていた。

 

 貴族のあれやこれやが関係しているらしい。面倒くさい事だ。

 というか色々王家へ献上していたのは普段第5王子にお世話になっていたからで、特に何もしてくれないなら一々作った物を献上するの嫌なんだが?

 

 ……仕方ないのでお尻に敷いていてもダサくない、クッション専用の微翔魔道具を作ろう。

 あれ?最初からそれで良かったのでは?

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