第16話 ユーズ様の家にお呼ばれ
ランス様の元上司ケインズ様が退室してから、その場の空気が重い。ランス様はまだ怒っているのがわかる。ユーズ様も困惑してるし、ケインズ様、相当厄介なお方なんだわ……。
「そうだ、ランス。お前近々家に来いよ。聖女様も一緒に」
ユーズ様が突然言い出す。え、私も一緒に行っていいんですか?
「今回の任務の件についてもう少し話がしたいのと、聖女様にうちの奥さんを紹介したいんだ。ランスもついに一人前の白龍使いの騎士になったと知ったら、どんな聖女様なんだって根掘り葉掘り聞かれてさ」
ハハハ、と苦笑いしているが恐らく今日のランス様の様子を見て気をきかせてくれたんだと思う。ケインズ様と違ってユーズ様はとってもいい方なんだな。
「でも……俺はともかくセシルは……」
ランス様が私の方を向いて困った顔をしている。
「私もユーズ様の奥様とお会いしてみたいです!」
「そうか!じゃあ決まりだな」
私の返事を聞いてユーズ様は嬉しそうだ。ランス様もそれなら、と了承してくれた。自分の教会以外の聖女様に会うなんて初めてだからちょっとドキドキするけど、なんだか楽しみ!
◇
と、いうわけで数日経ってユーズ様のお宅にお邪魔することになりました。
騎士団長ということもあって王都からそんなに遠くない場所にある。めっちゃ綺麗なお屋敷!大きい!ここにも白龍様が降りたてるようにやはり大きな広場がある。私達がユーズ様のお屋敷にいる間は、ミゼル様はそこに座ってくつろいでいるようだ。
「ミゼル、ユインの所に行って来てもいいんだよ」
ランス様が言うと、ミゼル様は首をふいっと横に振った。ユインというのはユーズ様の白龍様のことらしい。
「ミゼルとユインは仲が悪いわけではないけど昔からの知り合いだからなぁ。わざわざ会いに行かなくてもいいと思っているんだろう」
ユーズ様が苦笑する。なるほど、白龍様同士にも色々あるのね。
「さて、屋敷の中に入ろう」
玄関を入ると、執事やメイド達が並んでお辞儀をしている。すごい、お屋敷が大きいとやはり仕える人数も違うのね。そんな風に感心してると、パタパタパタと走ってくる音がする。
「ベル!慌てて走ると転ぶぞ」
「遅くなってごめんなさい、支度に戸惑ってしまって」
はぁはぁと息を切らして薄いピンク色の髪の毛を緩やかに靡かせた綺麗な女性がユーズ様の隣に到着した。透き通るように色白できめ細やかな肌をしており、ふんわりとしたAラインの刺繍入りワンピースに身を包んでいる。
ほっそりしているけれど程よい肉付きがあり、背丈は私よりも少し大きめ。ユーズ様は背が高いから並ぶとちょうど良さそう。というか、二人並ぶと美男美女だなぁ……!
「お久しぶりです、ベル様」
「ランス!久しぶりね!こんなに立派になって!……あっ、もしかしてこちらがランスの聖女様?やだ、可愛い!!」
キャッキャっと嬉しそうにはしゃいでいるのを、ユーズ様もランス様もいつものことのように呆れつつ優しい目で眺めている。
「はい、俺と契約してくれた聖女のセシルです。セシル、こちらが聖女のベル様。ユーズ団長の奥様だよ」
「初めまして!セシルさんて言うのね!よろしく!!」
またもや嬉しそうにはしゃいでいる。勢いにすごく圧倒されるけど、知的そうな見た目に反して可愛らしいしとても優しそう。
「は、初めまして。セシルです。よろしくお願いします」
そう返事をすると、ニコニコと屈託のない笑顔を向けてくれる。さっきから思っていたけれど、ベル様が到着してからその場の空気がふんわりと優しく軽くなったのがわかる。ベル様もやはり聖女様だからなのかしら。それにしても、その場にいるだけで場の雰囲気を良くしてしまうほどの力があるのか、すごい。
それから、もう一つ気づいたことがある。ユーズ様のベル様を見つめる目線が熱い。すごく愛おしいものを見るような瞳だ。そしてベル様もそれに応えるかのようにユーズ様へ熱い視線を返している。それに、いつの間にかユーズ様の手がベル様の腰に回っていて、ユーズ様とベル様が密着してる……!な、なんだろう、このアツアツぶりは一体。
「お二人はとても仲がいいんだ。お二人ももちろん契約結婚だけどね、そんなこと微塵も感じさせないくらいなんだよ」
ランス様にこそっと耳打ちされる。なるほど、契約結婚でもこんなにラブラブになれるのか、いいな……。って、なんで私はいいなって思ったんだろう?それに、耳打ちされた時にランス様との距離が近くてどきりとした。
ちらり、とランス様を横目で見ると、ランス様もこちらを見て微笑んでくる。なんでだろう、む、胸が苦しい。ドキドキが止まらない……。
ふとユーズ様とベル様の視線に気づいてそちらを見ると、ユーズ様はなんだか嬉しそうだし、ベル様は両頬に手を当ててあらあらと微笑んでいる。なんだろう、すごく恥ずかしい!
「よし、挨拶も済んだし、みんなでお茶でも飲んで雑談しようか」
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