第40話:始祖吸血鬼プロウジェニタ・ヴァンパイア
「「エクスプロージョン!」」
カインとアベルは、語りだそうとしたプロウジェニタ・ヴァンパイアを無視した。
無視しただけでなく、爆裂魔術のエクスプロージョンを放った。
完全同調したエクスプロージョンの破壊力はとんでもなかった。
プロウジェニタ・ヴァンパイアは全く予想していなかったザコ、カインとアベルの攻撃に不意を突かれた。
悪神ロキから注意しされていたのはエマとライアンだけだった。
ロキ自体が神の加護を受けていないカインとアベルを舐め切っていたので、プロウジェニタ・ヴァンパイアに警告しなかった。
だからプロウジェニタ・ヴァンパイアは、カインとアベルを敵として認識していなかったのだが、それが勝負の分かれ道となった。
精霊たちや猟犬見習たちと同じように、カインとアベルが攻撃して来ても自分たちは傷つかないと思い込んでいたのだが、全く違っていた。
不死の存在の中でも始祖と呼ばれる存在なのに、たかが人間の攻撃に魔力の防御層を破られ、聖銀以外には貫けないはずの強固な皮膚が一瞬で消滅した。
全ての攻撃を防ぐはずの薄い脂肪層も一瞬で消滅し、大魔獣すら軽々と滅ぼす破壊力を生み出す筋肉まで焼かれ再生も間に合わない。
「「エクスプロージョン!」」「ホーリー・ピュアリフィケイション」「死にさらせ!」
完全な不意討ちに虚を突かれ固まってしまったのはプロウジェニタ・ヴァンパイアだけでなく、二体のスペシャル・グレイド・ヴァンパイアも同じだった。
それに乗じてエマとライアンも奇襲した。
プロウジェニタ・ヴァンパイアの次に警戒しなければいけないスペシャル・グレイド・ヴァンパイアを真っ先に滅ぼそうとした。
ライアンは、エマのホーリー・エムパワーメントで聖なる力を付与された総銀製の長剣でスペシャル・グレイド・ヴァンパイアの首を刎ね心臓を貫いた。
エマはもう一体のスペシャル・グレイド・ヴァンパイアにホーリー・ピュアリフィケイションを放ち避ける事も許さず聖なる力でとらえた。
カインとアベルは二乗のエクスプロージョンでも瞬滅しないプロウジェニタ・ヴァンパイアを完全に滅ぼすべく、追撃のエクスプロージョンを放った。
だが二撃目の完全同調エクスプロージョンでも完全にプロウジェニタ・ヴァンパイア滅ぼす事ができず、骨の姿で立っていた。
「エマ!」
「ホーリー・ピュアリフィケイション」
「「エクスプロージョン!」」
カインとアベルの奇襲を成功させるために先手を譲ったエマとライアンだったが、二撃目は完全に同じタイミングになり、三撃目は先に攻撃していた。
ライアンは右手の銀長剣でスペシャル・グレイド・ヴァンパイアの心臓を刺し貫いたまま、左手の銀長剣で四肢を斬り飛ばしていた。
そこにエマが追撃のホーリー・ピュアリフィケイションを放った。
プロウジェニタ・ヴァンパイアに勝つ方法と予言してもらった技をスペシャル・グレイド・ヴァンパイアに使ったのだ。
カインとアベルは三撃続けて完全同調のエクスプロージョンをプロウジェニタ・ヴァンパイアに放った。
筋肉も内臓も消滅して、骨だけになったプロウジェニタ・ヴァンパイアを完全に滅ぼすべく放った、止めのエクスプロージョンだった。
「次」
「ホーリー・ピュアリフィケイション」
「「エクスプロージョン!」」
カインはまだ完全に滅ぼせていないもう一体のスペシャル・グレイド・ヴァンパイアに止めを刺すべく駆けた。
途中にいるレッサー・ヴァンパイアとインターミーディア・ヴァンパイアは、長剣が届くなら心臓を貫き首を斬り飛ばした。
エマは、逸早く正気を取り戻して向かってくるハイア・ヴァンパイアにホーリー・ピュアリフィケイションを放って滅ぼした。
カインとアベルも別のハイア・ヴァンパイアに完全同調エクスプロージョンを放って滅ぼした。
「なんだと?!」
「ホーリー・ピュアリフィケイション」
「「エクスプロージョン!」」
ライアンは驚きの声を上げるのは当然だった。
エマのホーリー・ピュアリフィケイションを受けて、骨だけになっているスペシャル・グレイド・ヴァンパイアがライアンの剣を受け止めたのだ!
ホーリー・ピュアリフィケイションは悪神ロキの眷属だけを滅ぼすので、身につけていた武具はそのままの状態だった。
だから辺境伯家の騎士を証明する完全鎧も見事な大剣も健在だったが、骨化した顔から無力だと思っていたのに、惚れ惚れする剣技で受け止められてしまった。
軟らかな総銀製の長剣は、眷属には有効だが鋼鉄製の大剣には無力だった。
打ち合ったところから真っ二つにされた。
二つに分かれて役に立たなくなった銀長剣は、セーレが村に送ってくれる。
エマのホーリー・ピュアリフィケイションがまたハイア・ヴァンパイアを滅ぼす。
カインとアベルの完全同調エクスプロージョンが四体目のハイア・ヴァンパイアを滅ぼすだけでなく、周囲にいたレッサー・ヴァンパイア四体も一緒に滅ぼす。
「くっ!」
「ホーリー・ピュアリフィケイション」
「「エクスプロージョン!」」
ライアンが、加護に魔術の重ね掛けをした身体強化で敵の攻撃をギリギリ避ける。
敵は、純血種竜やインターミーディア・ヴァンパイアと戦った経験から、これくらいと思っていたスペシャル・グレイド・ヴァンパイアの強さを軽く超えていた。
鋼鉄製の剣を持っていれば打ち合えるのだが、ヴァンパイアを滅ぼすためにやわらかい銀製の武器しか持っていなかった。
急所を守る防具も銀製で、ヴァンパイアの爪攻撃だけを警戒していたライアンには、鉄製大剣を避けるしか身を守る方法がなかった。
そこにエマがホーリー・ピュアリフィケイションを放ってくれた。
奇襲になるはずだったのに、余裕の態度で避けられてしまった。
だがエマの攻撃のお陰でひと息つくことができた。
カインとアベルが放ったエクスプロージョンが五体目のハイア・ヴァンパイアを滅ぼしたので、もう危険な存在は骨にまで追い込んだスペシャル・グレイド・ヴァンパイアだけのはずだったのだが……
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