第20話 魔女vs魔法少女時々戦隊ヒーロー

ウィ───ウィ───


多田くんは逃げ惑う人々とは逆の方向に走る。警報音は魔人の出現を告げていた。


(なんで僕は危険なところに飛び込んでいってしまうんだ。これじゃ巻き込まれるってよりも自ら飛び込んでいるようなものだよ)


観覧車の方向ではなにやら爆発が起きているようだ。轟音とともに煙が上がっている。一瞬立ち止まってしまう。自分が行ってもなにもできないのはわかっているが、一人で逃げるなんてできない。行ったところでただ命を落とす結果になるかもしれない。でも、女の子が先に戻ったのだ。彼女が言った「魔女」という言葉も気になっていた。魔法少女、魔人という言葉は聞いたことがあったが魔女という単語は本の中でしか目にしたことがなかった。


───厄災をもたらす、世界を終わらせる力を持ちうる存在


そんなことが書いてあった気がする。それが真実で黒川が言ったことが本当であるならいつもとは状況が違う。それでも、多田くんは一言ぼそりと言い走り出す。


「君だってそうするよね」


「なにをどうするって???」

「っツ?!」


驚きのあまりしりもちをつく形で倒れこむ多田くん。


「水連寺さん?! なんでここに・・・・・・」

「それはこっちのセリフよ。多田くんはどこに向かおうとしているの」

「それは黒川さんが観覧車に戻っていったから」

「観覧車の方向っていま爆発が起きている方向だよね。異常警報も鳴ってるし、敵が現れたってことだよね。危ないよ」


水連寺の目は行くなと言ってるかのように真っすぐ多田くんを見据える。


「危ないのはわかってる。でも、黒川さんも向かってるかもしれないんだ。無事なのか確認しないと。たぶん桜井さんたちのことを助けにいったと思う」

「やめたほうがいい。死ぬかもしれない。それに君が行ったところでなにもできない」

「それもわかってるよ! でも、女の子一人、危険な場所に行ってるのを知っているのに自分だけ逃げるなんてできない」

「・・・・・・ふーん。多田くんかっこいいところあるじゃない。私そういうの嫌いじゃないよ。守り切れるかわからないけど、ひなたとかみうとか見つけたら逃げるんだよ」

「えっ水連寺さんも行くの? っていうかなんでここに」

「まぁ私は大丈夫! 強いから! じゃあ行くよ!」


そう言って多田くんを立ち上がらせて二人は観覧車に向かった。


***


すでに観覧車といえるものは形を成していない。

車軸は折れ、廃墟のような様相になっている。僕ら以外にも人が乗っていたはずだが、その人たちはどうなったのだろうか。

そして炎が燃え盛る観覧車の近くでは魔法少女の二人とコスモレッド、コスモグリーンがいたのだった。

もう一人、宙に浮く真っ赤な目をした見たことのある女。

爆発した直後は気が動転して黒川が「魔女」といった存在を直視することはできなかった。息を切らしながら現場に到着し、初めて視認した顔は知っている顔のように見えた。


「あれって愛生ちゃん? どういうこと?」


水連寺も動揺を隠せない様子だ。それもそうだ知っている顔、ついさっきまで多田くんたちと一緒に遊園地を楽しんでいた紅林愛生と瓜二つの顔なのだ。ただ目は真っ赤に染まってい、魔人のような見た目をしている。多田くんが遭遇した魔人と違うところもある。いずれも牙のようなものがでていたが、宙に浮いている紅林愛生みたいな人物は目の特徴以外普通なのだ。


それに相対する格好で魔法少女とコスモレンジャーは臨戦態勢をとっている。

「魔女」とおぼしき紅林が手をあげる。するとそこから赤い電撃のようなもが放たれる。

魔法少女が守り、コスモレンジャーがコスモバスターで反撃するが魔女に届いている様子はない。


「多田くんはここで待ってて。見た感じひなたもみうもいないから戻ってくれたら嬉しい」

「いや、でもあれ・・・・・・」


多田くんは宙に浮いている女を指さす。


「やっぱりあれ愛生ちゃんだよね・・・・・・。多田くんは危なくないところで見てて、あの木の陰とか。守り切ってあげられる保証はないから」

「守るって水連寺さん戦いに行くの? 危ないよ無理だよ!」


「私、コスモブルーだから大丈夫」


バチンっ! と効果音がでそうなくらいのウインクも残して戦いの中に走っていく水連寺を多田くんはただ来なきゃよかったと思いながら見送ることしかできなかった。


───


「レッド、グリーン! 助けにきたよ」


「えっ瑠衣じゃない。なんでここに・・・・・・」

アマルティアが驚きの表情を見せるが、水連寺は首をかしげる。

「あら、魔法少女さん私と知り合いだったっけ?」

「えぇと私ね・・・・・・」

「今は事情説明してないで手伝ってアマルティア! 魔女の攻撃を防ぐの手一杯なの!」

「ごめん! でも私、防御系の魔法苦手だから・・・・・・」

「知ってるよ! でも今そんなこと言ってる状況じゃないよ!」


ひたすらに続く攻撃を二人で防ぐ。


その守られている中にいる二人が続いて水連寺に話かける。

「おいなんで瑠衣がここにいるんだ?! 瞬なにか言ったのか今日のこと」

「いや俺はなにも言ってない。正義が黙ってろって言うから、まぁクラスも違うしできるだけ話さないようにしてた」

「じゃあなんで・・・・・・」

「瞬は話しかけてこなくなったし、正義の言動はたどたどしいし怪しかったから、数日間後をつけていたのよ。で遊園地に行くことがわかったからついてきたってわけ。第18話の中に縦読みすると私がかくれているわ!」


「・・・・・・うぉい! まじだよ。隠れてたのか・・・・・・」

「正義! それよりもまずは魔人だ。事情が事情なので今回は魔法戦士と共同戦線ってことになってる」

「魔法少女! 小学生のときからやってるから少女のままなのよ。あぁもう改名したほうが・・・・・・」

「アマルティア! 私たちの裏事情は話さないで!」


しゅんとするアマルティア。


「あれは魔人ではなくて魔女よ。強すぎる敵、敵だけど敵じゃない。一緒に戦ってくれるのは非常に助かります。」

「魔法少女初めて間近でみた。そういえばひなたもみうもいなくて魔法少女が二人ってことは・・・・・・」

「それ以上言わないで。言葉っていうのは魔力があるの。名前を言われてしまうとその姿に戻ってしまう。だから名前はいわないで」

ヒマリアは威圧感のある笑顔をみせる。


水連寺は苦笑いを見せる。


「まぁなんとなく事情はわからないけどわかったわ。とりあえず・・・・・・」


ポケットからバッチのようなものを取り出し、天に掲げ叫ぶ水連寺。


「コスモパワー!変身!」


魔法少女と時々コスモレンジャーの戦いが始まった。

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