2-4「階段でのお昼」
昼休み。人気のない階段でお弁当を食べながら、私は考えていた。
……今日になってから、やけに陰湿な嫌がらせを受けている気がする。
椅子に画鋲が撒かれてたし……ロッカーはゴミだらけにされてたし……鞄はゴミ箱に放り込まれてた。
……誰がやったのかは分からない。それに、やられる相手に心当たりがありすぎて絞り込めない……。
嫌がらせは……朱星に負けてから、ずっと受けてたけど……ここまで露骨で高頻度なのは……初めてだ。
「はぁ……」
今日何度目かも分からない溜め息が出る。
……どうして、こんな急にエスカレートしだしたんだろう……。
……私達がいじめてた子——
「あっ! やっぱりここにいた!! 菜乃羽ちゃ〜ん!!!」
そんな私に、トコトコと駆け寄ってくる人影があった。
「……朱星ちゃん……おはよ」
「うん!! おはよ〜っ!! 昨日は楽しかったね!! 私、楽しすぎて夜全然寝れなくて……今日、すごい寝坊しちゃった!」
「あはは……そうだね。私は流石に寝坊してないけど……」
まあ、確かに、楽しかった。
アニメの12話一気見。
……私は普段そこまでアニメ見ないし……あの、プリキティ?とかいうのは、内容が鬱すぎて苦手だったけど……それでも、かなり楽しめた。
大事そうな話を有耶無耶にしちゃったのが……唯一の心残りって感じ。
「それで……何か用?」
「お昼一緒に食べたいなーって思って!! ふふん! 今日はちゃーんとお弁当持ってきたよ?」
見ると、朱星の片手にはやけに可愛らしいデザインの弁当袋が。
「あぁ、そういう……いいけど、私もうほぼ食べ終わっちゃったよ……?」
「ヘーキヘーキ!! 何なら、わたしの分ちょっと分けてあげる!!」
「いや……それは流石に悪いし……」
……でも、正直ちょっと気になる……。
朱星のお弁当……手作りなのか、購買で買ったのか……どちらにしても、何が入ってるのか……気になる……。
「いいのいいの、気にしないで! この前のお礼だから!!」
「そう……?」
そう言いながら、ニコニコと隣に腰掛けてくる朱星。
そして、弁当袋から二段弁当を取り出し……
「っ……!?」
「ふふっ、どう? おいしそうでしょ?」
開かれた弁当の中には……大きなハンバーグ。弁当箱にギリギリ入るレベルの、大きなハンバーグだ。
そこまでならまだいいのだが……下の段は、一面バニラアイスで埋め尽くされている。
「え……あの……お昼ご飯……これが?」
「うん!! そうだよ〜!! わたしの大好きなものをいっぱい入れたんだ〜!!」
「そ、そっか……あー……素敵な、メニューだね……」
「えへへっ! でしょでしょ!!」
好きなものだけ入れてるんだ……それはまあ分かるけど、発想が脳筋すぎる……。
どう考えても栄養バランスとかイカれたことになってそうだけど……まあ、本人がいいなら……別にいい気がしてきた……うん……。
「菜乃羽ちゃんのお弁当もおいしそうだね〜!! 特にそのミニコロッケ!! 衣がすっごいサクふわっ!!」
「あはは……これ、実は冷凍のやつなんだけどね……」
「そうなの!? ……ってことは、スーパーとか行けばわたしも買える!?」
「そりゃ、まあ……」
「じゃ、明日はお昼それにしよーっと! 楽しみだな〜!!」
……なんでだろうか、ミニコロッケが弁当一面にずらりと並ぶ光景を思い浮かべてしまった。というか、実際そうなりそう……。
そんな風に思いながら苦笑いしていると、突然目の前に差し出される2つの弁当箱。
「菜乃羽ちゃん、どっち食べたい? あ、両方でもいいよ〜!」
「えっ…と……じゃあ、アイスの方を貰おうかな」
「おっけー!! はい、どうぞ〜!!」
手渡されたスプーンで軽くアイスを
口の中に冷たい感覚が広がっていく。……あ、でも、すごく甘い……いや、そんなもんじゃない……これ、信じられないほど——
「甘ったるっ……!?」
「ふっふっふっ……ハチミツとお砂糖をたっぷり混ぜた、わたし特製『マジカル★スイートアイス』!!! ……どう?」
「え……ま、まぁ……美味しいよ……美味しいけど……」
……にしても、甘すぎる……いや、甘いの好きだからいいんだけどさ……。
朱星……毎日こんなもんを食べてるのかな……。
いくら異能力者とはいえ、流石に太るのでは……?
「……」
「……?」
チラリと朱星のお腹の辺りを見る。……が、やはり、どこからどう見ても太ってない。
おびただしい量のカロリーはどこへ消えたんだろう……恐ろしい……。
……結局、私は三口ほど食べた辺りでやめにした。
朱星は「もっと食べていいよ〜」とか言ってきたけど……流石に、勘弁してほしい。
「おいしかったぁ〜! ……誰かと一緒に食べると何倍もおいしいね!!」
「ふふっ……そうだね」
……今なら、ちょっとだけ……その言葉が分かるかも……。
「……朱星ちゃん」
「ん? なにー?」
「……明日も、一緒に食べる?」
「…………」
朱星は、驚いたように目を丸くする。
「……何その顔」
「あはは……ごめん。菜乃羽ちゃんがそういうこと言うの……意外だなって……」
「…………たまにはそういう時もあるんだよ」
なんて失礼な……と、文句の一つでも言いたいところだったが……少し前までの自分を考えると……何も言い返せなかった。
「もちろん! 菜乃羽ちゃんがいいなら、毎日でも一緒に食べたい!!! なんかこういうの、友達って感じがするし!!!」
「…………」
瞬間、私は硬まってしまう。それは、昨日のことを思い返してしまったから。
「そ……そうかもね」
「でしょでしょ? ……あ、そうだ!! この後魔法少女活動に行くんだけど……菜乃羽ちゃん、来るっ?」
「あー……今日は、遠慮しとこうかな……また、今度にでも……」
「そう……? ……わかった!! じゃ、またね〜!!」
元気いっぱいに手を振りながら走り去る朱星。
私はそれに、見えなくなるまで手を振り返し続けた。
「……はぁ」
そして、完全に見えなくなったところで、軽くため息を吐く。
……友達、か……。
…………。
……別に、受け入れてもいいのかもしれない。
現に、昼食は一緒に摂ってるわけだし……何なら、明日も食べよって誘ったの、私だし……。
……でも……朱星の言う『友達』ってのに私が応えられるとは……思えない……。
……ほんと、どうしよう……どうしたらいいのかな……。
そう、思った時だった。
——かんっ
「っ……!?」
突然背後からした軽い金属っぽい音。
思わず振り返るも、そこに既に姿はなく……代わりに、離れていく足音だけが辺りに響いていた。
……なんだったんだ……というか、誰だったんだ、今の……?
……実害を与えてきたわけじゃないし……そんな気にすることでもない……そうは思うんだけど……。
でも、なんだか……すごい嫌な感覚が、私の中を駆け巡っていた。
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