1-4「小さな死闘」
それから少しして、人工音声のアナウンスが流れ、私達は決闘場へと向かった。
そこをぱっと見た時、なんだか野球場みたいだなと、なんとなく思った。
観客席がグルリと、私達の立つグラウンドを囲っている。
そして、さらに上には夜間に使うと思われる照明設備……やっぱり、野球でもするのかと思ってしまう。
ただ、床は芝生なんかじゃなく、ただ砂を敷き詰めただけ。
……機能的にも、球場というより闘技場って言った方が良いんだろう……多分。
観客席には、ちらほらと人の姿が見える。合わせても、20人に届くか怪しいくらいだけど……。
なんとなく見覚えのある顔も数名いる。……うちのクラスの人間だ。
……
そんな風にここを観察していると……私達とちょうど反対側から歩いてくる姿があった。
桃髪おさげ……
凛々しい表情。真剣な眼差し。……そして、それを台無しにするような変な服装。
朱星は、フリルやリボンがこれでもかとあしらわれた……なんというか……魔法少女っぽい服?を着ていた。
コスプレ会場じゃないんだぞここは……。
そんな可愛らしい服とは対照的なのが、手に握られているもの。
魔法少女っぽい杖というのはこの前と同じ……なんだけど、先端の星の部分に、大量の棘がついていた。……見るからに痛そう。
ピリピリとした空気を放ちながらも、お互い一歩一歩距離を詰めていく。
距離およそ数メートル。そこまで近づいたところで、両者共に静止。そして有紗が、口を開いた。
「……タイマンでも私の勝ち確なのに……5対1……お前、本気で勝てると思ってんの?」
「……今日のわたしは、完全な魔法少女姿に変身してから来てる。つまり、勝利は確定したも同然! 正義が勝ち、邪悪は滅ぶ! 今日があなたの……いや、あなた達の悪事の最終話だよっ!!」
「……あはっ……その威勢、いつまで続くかなぁ?」
挑発的な笑みを浮かべながら、馬鹿にするように言う有紗。
……朱星は無言で睨み返すだけ。
カラスの声と、風の音だけが辺りに響く。
……そこに割り込むように、人工音声が響いた。
[全ての参加者を確認しました。決闘を開始します。両者宣誓を行ってください]
これは、AIの声だ。判定とか、進行とか、色々とやってくれるもの、らしい。
「……わたしの要求は、あの子……
「こっちの要求は……この場で地に頭を擦り付けて……ちゃーんと謝罪してもらうことかなぁ。……二度と生意気な口聞けないようにしたげるから、覚悟しなよ」
[…………宣誓を受理しました。本決闘は通常ルール、AI審判によって行われます。……10秒後に決闘を開始します]
AIの言葉に、有紗以外の全員が構える。
……有紗は、お膳立てが済むまで……つまり、ある程度弱らせるまでは、手を出してこない気なんだろう。朱星が弱ってから、好きなようにいたぶるつもり……なんだと思う。ほんと、悪趣味なやつ。
そうなると、有紗がその気になるまでは、私と他の取り巻き3人で相手することになる。
まあまあ厳しい戦いになりそうだけど……まあ、結局私の役割は変わらない。前衛として、後ろの連中に攻撃が向かないようにすればいいだけ。
それに、私らがピンチになっても、背後には有紗がいるわけだから……最悪どうにかなる。……すごい癪だけど。
……でも、朱星がボコられるのは……見てて気分の良いものじゃないだろうな。
……有紗が本格参戦してくる前に、終わらせられれば……まだ……マシになるかな……?
けど、私程度の実力じゃ……流石に……。
……こんなこと考えててもしょうがない。目の前のことだけを考えよう、うん。
そうして、戦闘が始まったらすぐに動けるようにと、朱星をじっと睨んでいると……
「…………」
……一瞬だけ、朱星と目が合った。
…………集中しなきゃ。有紗ならともかく、私程度の実力じゃ油断できないんだから。
[決闘開始!]
開始の合図と同時、私は動き出した。手には私の武器——青い傘を持ち、朱星に向かって斬りかかる!
——棒状のものであれば、何でも刀剣として扱える。それが、私の能力。
細かい原理はよく知らないけど……『
で、
同じエネルギーなのに、異能力者ごとに使える能力が違うのは、出力機構の差……つまりは、『冷蔵庫とテレビは、同じ電気を使っていても、まるで違う機能を持っている』ってのに近い……らしい。
……授業で聞いただけだから、正直うろ覚えだけど……。
……私の単調な攻撃など当然お見通しのようで、軽く跳んで避けられてしまう。
だが、着地する朱星に飛んでくる、無数の炎と鈴。
「っ……もうっ……!」
朱星は鬱陶しそうにしながら、杖でそれらを叩き落とした。そしてすぐさま地面を蹴り、駆け出す!
ターゲットは……鈴使いの子!
一直線に駆けていく朱星。その行く手を遮るように、突然毒霧が広がる。
慌てて止まろうとするも、もろに突っ込んでしまう朱星。それなりに毒霧を吸い込んだのか、動きが少しだけ鈍くなった。
そして、その機を逃さず飛んでくる、顔くらい大きい鈴。
相当な速度。これは、流石に避けきれない。もろに脇腹に直撃し、吹っ飛ばされる朱星。
そこを炎が容赦なく追撃! 吹っ飛ばされた先に、火柱が上がる。
相当な火力の炎。一瞬で、朱星の姿は見えなくなった。
……あの炎使いの子が普段使ってるのよりも、かなり強い。
多分、かなりの量の
とにかく高火力で早期決着を狙う。……確かに、再生能力持ち相手の戦法としては正しい。
取り巻き3人は、ホッとしたような様子だったり、軽く笑みを浮かべたり……完全に勝利を確信しているようだ。
……無理もない。だって、あのレベルの攻撃を喰らったら……仮に再生能力があっても、当分は動けない。
「……もう終わり? 大口叩いてたわりに、この程度か……つまんな……私がボコる分なくなったじゃん」
有紗でさえ、朱星への勝利を確信しているようだった。
……いや、まだだ。この程度で、朱星が戦闘不能になるわけない。
この前の不良との戦闘でも、平然としてたんだ……間違いなくまだピンピンして——
「『フラッシュ★ティンクル』ッ!!!」
瞬間、炎の中から弧を描いて飛んでくる何か。あれは……爆発物っぽい……いや、せ、閃光手榴弾!?
咄嗟の判断で目耳を塞いだ、次の瞬間。耳をつんざくような爆音が辺りに響いた。
き、禁止されてないからって……こんなものを持ち込んでるとは……それに、なんか必殺技っぽいの叫んでるし……ま、魔法少女気取りにも程があるでしょ……。
……とにかく、一歩遅かったらやばかった……というか、周りの連中は……?
直後、私の目に映ったのは、鈴使いの子に、朱星の杖がめり込む瞬間。
その子は、そのまま吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。……完全に、戦闘不能だ……。
「……まずは1人、だね」
そう言いながら、こちらを振り向く朱星。
皮膚は焼け爛れ、髪はチリチリになっていたが……それも、みるみる内に再生していく。
……この前見たのと同じだ……攻撃自体は効いてる……でも、それだけ。まるで意味がない。
有紗も、少し驚いたみたいだけど……すぐに気を取り直し、前に出てきた。
「……はは……イカれた再生能力、なのっちの言った通り…………お前のこと、少し見くびってたみたいだねぇ」
そう言いながら、有紗は懐からバタフライナイフを取り出し、構える。
「できれば、なのっち達が弱らせてから楽しみたかったんだけどなぁ…………でも、私以外じゃお前の相手は荷が重そうだね」
「……あなたでも勝てないよ。わたしは正義の魔法少女! あなたみたいな悪人には負けないからねっ!」
「ははっ……私の手でぶっ壊してあげるよ。その気色悪い妄想劇をねッ!」
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