ランチと――――彼女

 ゲームセンターで、アクションレーシングゲームやらガンシューティング、エアホッケー等、遊び尽くした俺と奈央なお


 大きく背伸びをしながら、俺は彼女と共にゲームセンターを後にした。


 ――12時35分。3F内にあるフードコートエリア。


 俺達は、某ファーストフード店のテナントに足を揃えて並んだ。メニューが載ったチラシを見て奈央は言う。


「私、テリチキバーガーのセット。かすみは?」


「ダブチのセットとバニラシェイク」


「なにそれズルい」


 ズルくない。奈央はぴしっと手を上げて口を開く。


「私もイチゴシェイク追加する」


「はいはい」


 俺達の順番が回ってきたタイミングで、各々注文を済ませる。


 トレーを手に俺達は空いたテーブルを探す。


 窓の景色を一望できる横並びの席へ腰を下ろした。


 包を開けてテリチキを頬張る幼馴染。


 俺も彼女に続いてダブチを頬張った。


「口元にケチャップ付いてるよ」


「まじか」


「んっ、拭きな」


 言って、奈央はトレーに置かれた紙ナプキンを手渡した。


「さんきゅ」


 ふと、奈央は流し目でくすっと笑みを浮かべながら、慈愛に満ちた表情と共に言う。


「なんか、子供みたい」


「……お前も口元にテリヤキソースが付いてるからな」


「へ?」


 慌てて奈央は紙ナプキンを手にして口元を拭う。

 口元を掌で隠し、仄かに頬を赤らめる奈央。眉をしかめてじっと此方を睨む。


「……霞のばか」


 名指しでばかって言われた。ひどい。


「ポテト食べる?」


「……食べる。……食べさせて」


 奈央はぷくっと小さく頬を膨らませ、不貞腐れた口調で言った。……はいはい。


「……喜んでお嬢様」


 苦笑交じりに、一際長いポテトを手に取り、奈央の口元へ運ぶと――彼女はポテトをぱくっと食べた。


「〜♪」


 はにかんだ笑みを浮かべる奈央を横目に、俺はアイスコーヒーが入ったストローに口をつけた。


 ――――――――――

 ――――――

 ――


 昼食後。後片付けを済ませて、フードコートを出た。隣でイチゴシェイクを口にする奈央。


「飲む?」


 不意に奈央は首を傾げて問うた。そんな物欲しそうな目で見てた俺?


「飲まない」


 俺は小さく頭を振って言葉を返す。


 彼女は、ふ~ん――と、にやにや口角を吊り上げて口を開く。


「ひょっとして、かわいい幼馴染との間接キス――なんて意識しちゃった?」


「全然」


 関節キスくらいで何を今更。


 二度頭を振った瞬間、即座に――――幼馴染から勢い良く足を踏まれた。いったい!


「なにすんじゃい!」


 抗議の目を向ける俺に、奈央は苛立ち交じりに不機嫌そうなじと目を向けつつ口を開く。


「速攻否定はむかつく。……しかも全然って」


(少しくらい意識してくれてもいいじゃん……)


 べっ! 小さく舌を出して、かつんかつん――と、足早に一人歩き出した。


 10年来の幼馴染であり、長い付き合いでもう慣れたと言っても過言ではない。けれど、


 ……俺の幼馴染めんどくさ!


 後髪をがりがり掻きながら、小さなため息を一つ吐く。

 重い足を上げて俺は奈央の後を追った。


 過去の経験を元に、俺という幼馴染ほど彼女の機嫌を直す術を知る者は居ない。


 その気になれば、幼馴染に許しを請うため、全力で全裸土下座ができる男だ。


 全裸になる必要性がどこにある? ふっ、甘いな。知ってるか、全裸になることで表裏のない誠意を表すことができるんだぜ? もちろん実行に移したことは一度もない。


 強いて言うなら、小学生の時に一度だけ、パンツ一枚で奈央に土下座したことならある。


 千尋ちひろには秘密だよ?


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話を一部修正しました。

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