第17話 影の男の供述
朝の光が差し込む警察署の取調室で、藤堂樹と桜井美和は、影の男の供述を聞く準備をしていた。影の男は拘束され、警察の厳重な監視の下で取調室に座っていた。彼の顔には疲労と諦めの色が浮かんでいたが、その目には未だ冷酷な光が宿っていた。
「さあ、全てを話してもらおうか。」美和が冷静な声で問いかけた。
影の男はしばらく黙っていたが、やがて重い口を開いた。「話すことなんて何もない。お前たちには理解できないだろう。」
樹はその言葉を受け流しながら、冷静に次の質問を投げかけた。「君が計画していたこと、そしてその目的について教えてほしい。全てを話すことで、罪を軽くする道もある。」
影の男は冷笑を浮かべた。「罪を軽くするだと?俺は自分の信念に従って行動しただけだ。金のためでも、名声のためでもない。」
美和はその言葉に反応し、問い詰めた。「信念?それは一体何のための信念なの?」
影の男はしばらく黙り込んだ後、ゆっくりと話し始めた。「俺はこの国の腐敗したシステムに嫌気が差している。金持ちだけが得をし、弱者が虐げられる社会……そんなものは許せない。俺の行動は、そのシステムを破壊し、新しい秩序を築くためのものだ。」
樹はその言葉に驚きを隠せなかった。「君は、システムを破壊することで何かが変わると思っているのか?」
影の男は鋭い目つきで樹を見つめた。「そうだ。破壊から再生が始まる。俺はそのために動いてきた。」
美和はさらに突っ込んで尋ねた。「その背後には誰がいるの?君は一人で動いているわけではないはず。」
影の男は一瞬ためらったが、やがて重い口を開いた。「確かに、俺一人の力ではここまで来れなかった。俺には仲間がいる。しかし、彼らの名前を明かすつもりはない。」
樹はその言葉に深く考え込んだ。影の男が語る信念と、その背後にいる仲間たちの存在。これが全ての鍵を握っていると感じた。
「君の仲間たちはどこにいる?その情報がなければ、君たちの計画は止められない。」樹は冷静に問いかけた。
影の男は静かに笑った。「俺たちの計画はもう始まっている。俺が捕まったからといって、止まることはない。」
美和はその言葉に驚きと不安を感じた。「どういうこと?何が始まっているの?」
影の男は一瞬の沈黙の後、重々しく言った。「俺たちの計画は、多くの場所で同時に進行している。これから起こることを、お前たちは止められない。」
その言葉に、樹と美和は緊張感を強く感じた。影の男が語る計画が何であるのか、そしてそれがどこで進行しているのかを突き止めなければならない。
「まだ話してもらうことがたくさんある。」樹は決意を込めて言った。「君たちの計画を止めるために、全てを聞かせてもらう。」
影の男は冷たい笑みを浮かべながら答えた。「聞きたければ、聞けばいいさ。ただし、お前たちが真実にたどり着けるとは限らない。」
その言葉に、樹と美和は新たな決意を胸に抱いた。影の男の供述を元に、さらなる真実を追求するための調査が始まろうとしていた。朝の光が差し込む取調室で、二人の心には新たな希望と決意が満ちていた。
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