第13話 犯人の供述

夕暮れの京都の空は、オレンジ色に染まっていた。喫茶店「風雅庵」では、藤堂樹と桜井美和が一日の仕事を終えた後、警察署へ向かう準備をしていた。犯人が捕まったことで、新たな情報が得られるはずだった。


「行こう、美和。犯人から話を聞ける時間だ。」樹は落ち着いた声で言ったが、その目には緊張と期待が入り混じっていた。


「そうね。彼が何を知っているのか、しっかり確認しないと。」美和も同じく緊張した表情で応えた。


二人は店を出て、警察署へと向かった。到着すると、警察の隊長が二人を迎え入れた。「藤堂さん、桜井さん、お疲れ様です。捕まえた犯人が話をしたがっています。今から彼の供述を聞いてもらえますか?」


樹と美和は頷き、警察署内の取調室へと案内された。取調室の中には、手錠をかけられた男が座っていた。彼の顔には疲労と恐怖が見え隠れしていた。


「さあ、話を聞かせてもらおうか。」美和が静かに問いかけた。


男は一瞬ためらったが、やがて重い口を開いた。「俺はただ、金のためにやっただけだ。誰かを傷つけるつもりはなかった……。」


樹は冷静に男の言葉を聞きながら、さらに質問を続けた。「君が使っていたサーバーとそのアクセス方法について、詳しく教えてくれ。」


男は少しずつ詳細を話し始めた。彼が利用していたネットワークや、サイバー攻撃の手口、その背後にいる可能性のある人物の名前など、重要な情報が次々と明らかになっていった。


「背後には誰かがいるんだろう?君がただの実行犯であることはわかっている。その人物について話してくれ。」樹は核心に迫る質問を投げかけた。


男は一瞬黙り込み、視線をそらしたが、やがて観念したように口を開いた。「俺に指示を出していたのは、『影の男』と呼ばれている人物だ。彼の正体は誰も知らない。俺も直接会ったことはないが、指示は全て彼からだった。」


「影の男……」美和はその言葉を反芻しながらメモを取った。「その人物について他に何か知っていることは?」


「彼は非常に用心深く、痕跡を残さない。連絡は全て暗号化されたメッセージで行われた。俺たちのような下っ端は、彼の計画の一部を実行するだけだ。」


樹はその情報を頭の中で整理し、次のステップを考え始めた。「ありがとう。その情報は非常に重要だ。今後の調査に大いに役立つだろう。」


美和も同意し、犯人に向かって感謝の意を示した。「協力してくれてありがとう。君の話が事件解決の手がかりになる。」


取調室を出ると、警察の隊長が二人に近づいた。「『影の男』という人物が背後にいるとなると、これはかなり大掛かりな事件かもしれない。引き続き、君たちの協力が必要だ。」


樹は頷きながら答えた。「もちろんです。僕たちもこの事件を解決するために全力を尽くします。」


美和も決意を新たに、「これからが本番ね、樹。影の男を突き止めて、この事件の全貌を明らかにしましょう。」


二人は警察署を後にし、新たな手がかりを元に調査を進めるために「風雅庵」へと戻った。夕暮れの京都の街並みが、彼らの決意と未来への希望を包み込んでいた。樹の心には、過去を乗り越え、新たな挑戦に立ち向かう力が満ち溢れていた。

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