第11話 追跡の開始
翌朝、藤堂樹は早くから喫茶店「風雅庵」に向かっていた。昨夜、美和と共に掴んだ手がかりが頭の中でぐるぐると回り、眠れぬ夜を過ごした。それでも彼の心には、新たな決意が芽生えていた。
店の扉を開けると、朝の光が店内に差し込み、温かな雰囲気が広がった。常連客たちがまだ来ていない静かな時間帯。樹はカウンターの中で準備をしながら、美和の到着を待っていた。
しばらくすると、扉のベルが鳴り、美和が店内に入ってきた。彼女は疲れた様子だったが、その目には強い意志が宿っていた。
「おはよう、樹。昨夜はほとんど眠れなかったわ。」美和はカウンターに腰を下ろし、微笑んだ。
「おはよう、美和。僕も同じだよ。でも、今日が勝負の日だ。」樹はコーヒーを淹れながら答えた。「まずはこれを飲んで、一息つこう。」
二人は静かにコーヒーを味わいながら、今日の計画を話し合った。樹は美和にサーバーから得た新たな情報を共有し、次のステップを確認した。
「昨夜の解析で、犯人が特定の時間帯にアクセスしていることがわかった。その時間に合わせて、僕たちも追跡を開始しよう。」樹は真剣な表情で言った。
美和はその情報に頷き、手元の資料を整理し始めた。「了解。私もその時間帯に合わせて、警察のサポートを手配するわ。」
その後、二人は喫茶店の一角に設置された仮のオフィスで準備を進めた。樹はノートパソコンを開き、サーバーへのアクセスを確認。美和は警察のデータベースと連携し、犯人の動きを監視するための準備を整えた。
「時間だ。」樹が時計を見ながら呟いた。
二人は同時に画面に目を向け、犯人がアクセスを開始する瞬間を待った。数分後、予想通りにサーバーへのアクセスが確認された。
「来た!」樹は素早く操作を開始し、犯人の動きを追跡し始めた。
美和も同時に動き出し、警察との連携を図りながら情報を共有した。「樹、ここに新しいアクセスパターンがあるわ。」
樹はその情報を元に、さらに解析を進めた。犯人の動きは巧妙で、いくつものセキュリティ層を突破する必要があった。しかし、彼の技術と美和のサポートがあれば不可能ではなかった。
「もう少しだ……」樹は集中力を高めながら操作を続けた。
しばらくして、樹の顔に安堵の表情が浮かんだ。「美和、成功だ。犯人の居場所を特定した。」
美和はその言葉に喜びの表情を浮かべた。「素晴らしいわ、樹。これで私たちは一歩前進した。早速、警察に報告して現場に向かいましょう。」
樹は頷き、すぐにデータを整理し始めた。彼の心には、過去を乗り越えるための新たな決意が強く芽生えていた。
「美和、一緒に行こう。僕たちの力で、この事件を解決しよう。」樹は静かに言った。
美和は彼の手を取り、力強く頷いた。「そうね、樹。一緒にやり遂げましょう。」
二人は準備を整え、店を出て現場へと向かった。朝の光が二人を包み込み、新たな希望と決意が彼らの心に満ちていた。
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